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国家試験記述式対策 「行政手続法」 小川多聞

国家試験記述式対策

(住宅新報社講師) 小川多聞

【19年度の記述式問題】
 行政手続法に関しては,平成19年問題44において,「申請に対する処分」に関する第7条から出題されました。かなり細かい条文からの出題であり,その点で難しかったものと思われます。
 行政法に関する問題は,一朝一夕にはいかない問題が多いわけですから,なんとか得点できる実力を身に付けたいものです。
【行政法の学習法についての提案】
 行政法関連の問題は,民法関連(商法を含む)に負けず問題数も多いわけですから,しっかりと腰を据えた学習が要求されます。
 その際に,次のような全体像をもって学習することがよいのではないでしょうか。

①行政法総論(本年度の出題問題8~10,問題42)……あまり点にならないので,他の受験者に負けない程度にお茶を濁す。

②行政手続法(問題11~13および問題26,問題44)……行政に関する事前手続を定めた法律として,事後救済を定めた「行政不服審査法」「行政事件訴訟法」としっかり区別し,みっちり学習する。

③行政不服審査法(問題14~16)……同じくしっかりと学習する。裁判所に対する救済請求である「行政事件訴訟法」としっかり区別する。

④行政事件訴訟法(問題17~19,問題43)……得点源にするまでは時間がかかるので,他の受験者に負けない程度にお茶を濁す。

⑤地方自治法(問題21~25)……条文は大部であるが,出題されるところは決まっている。過去問を中心として,しっかり学習しておこう。
 ようするに,あまり点にならない「行政法総論」「行政事件訴訟法」は軽く流して,他の法律をしっかり学習しようということです(メリハリをつけた学習)。


【本題】
 今回は,行政手続法がその適用を除外される場合の問題です。出題の可能性も十分ありますので,なぜそうなるのかを考えながら学習していきましょう。
 なお,適用除外の問題に関しては,平成19年の問題13で,択一問題として出題されています。


問題
 行政手続法は,地方公共団体の機関のする一定の行為に関しては,一部規定の適用が排除される(行政手続法3条等)。

 すなわち,「地方公共団体の機関のする行政指導,地方公共団体の機関に対する届出(第2条第7号の通知の根拠となる規定が条例又は規則に置かれているものに限る。)並びに地方公共団体の機関が命令等を定める行為については,第2章『申請に対する処分』,第3章『不利益処分』,第4章『行政指導』,第5章『届出』,第6章『意見公募手続等』の規定は,適用しない」とされている。

 上記文章には,もう1つ行政手続法が適用されない行為が抜けているが,それは誰の行うどのような行為か40字程度で記述せよ。


解説

 行政手続法第3条と第4条には,行政手続法の規定が適用されない場合が定められています。本問はそのうち,第3条に関する問題です。

 行政手続法は,次のような適用除外を認めています(行政手続法3条)。

1 本来の行政権の行使とは,やや異質な手続

 行政手続法第3条第1項は,次のような行為について,第2章から第4章までの規定(「申請に対する処分」「不利益処分」「行政指導」)を適用しないとしています。

① 国会の両院若しくは一院又は議会の議決によってされる処分(3条1項1号)

② 裁判所若しくは裁判官の裁判により,又は裁判の執行としてされる処分(3条1項2号)

③ 国会の両院若しくは一院若しくは議会の議決を経て,又はこれらの同意若しくは承認を得た上でされるべきものとされている処分(3条1項3号)

④ 検査官会議で決すべきものとされている処分及び会計検査の際にされる行政指導(3条1項4号)
 これらの機関(国会等)は特殊な機関であり,特にその独立性が確保されるべきことから,行政手続法の規定の適用を除外しているものです。

⑤ 刑事事件に関する法令に基づいて検察官,検察事務官又は司法警察職員がする処分及び行政指導(3条1項5号)

⑥ 国税又は地方税の犯則事件に関する法令(他の法令において準用する場合を含む。)に基づいて国税庁長官,国税局長,税務署長,収税官吏,税関長,税関職員又は徴税吏員(他の法令の規定に基づいてこれらの職員の職務を行う者を含む。)がする処分及び行政指導並びに金融商品取引の犯則事件に関する法令に基づいて証券取引等監視委員会,その職員(当該法令においてその職員とみなされる者を含む。),財務局長又は財務支局長がする処分及び行政指導(3条1項6号)

 ⑤および⑥の手続は,行政手続というよりも,刑事手続に近いものであり,行政手続法の適用になじまないことから,適用除外としているものです。


2 特別の規律で律せられる関係が認められるもの

 処分主体と,その名あて人との関係が特殊な場合に適用除外とされることがあります。

⑦ 学校,講習所,訓練所又は研修所において,教育,講習,訓練又は研修の目的を達成するために,学生,生徒,児童若しくは幼児若しくはこれらの保護者,講習生,訓練生又は研修生に対してされる処分及び行政指導(3条1項7号)

⑧ 刑務所,少年刑務所,拘置所,留置施設,海上保安留置施設,少年院,少年鑑別所又は婦人補導院において,収容の目的を達成するためにされる処分及び行政指導(3条1項8号)

⑨ 公務員(国家公務員及び地方公務員をいう。以下同じ。)又は公務員であった者に対してその職務又は身分に関してされる処分及び行政指導(3条1項9号)

 これらの場合は,個人の意思や特別の目的から,特別の規律関係があり,その自主性を尊重するため,行政手続法の適用を除外したものです。

⑩ 外国人の出入国,難民の認定又は帰化に関する処分及び行政指導(3条1項10号)
 これらの問題は,国家主権の問題であり,行政手続法をそのまま適用することはふさわしくないと考えられたものです。


3 処分の性質上,行政手続の適用になじまない手続

⑪ 専ら人の学識技能に関する試験又は検定の結果についての処分(3条1項11号)
 学識技能に関する試験や検定は,客観的評価になじみにくいので,専門家の評価に委ねようというものです。

⑫ 相反する利害を有する者の間の利害の調整を目的として法令の規定に基づいてされる裁定その他の処分(その双方を名あて人とするものに限る。)及び行政指導(3条1項12号)

 これは,三面構造に伴う特殊性があり,行政機関と処分・行政指導の名あて人との二面構造を基本的前提とした行政手続法の規定を,そのまま適用することは適当でないとされたものです。

 この適用除外は,損失補償に関し,重要な意味を持ちます。たとえば,河川法は,「損失の補償で関係河川使用者に係るものについては,水利使用の許可を受けた者と関係河川使用者とが協議しなければならない。この規定による協議が成立しない場合においては,当事者は,政令で定めるところにより,河川管理者の裁定を求めることができる」と定め,行政庁が,第三者として裁定を行うこととなっています。
 このような裁定等に関しては,行政手続法第2章から4章までの規定は適用がありません。

⑬ 公衆衛生,環境保全,防疫,保安その他の公益にかかわる事象が発生し又は発生する可能性のある現場において警察官若しくは海上保安官又はこれらの公益を確保するために行使すべき権限を法律上直接に与えられたその他の職員によってされる処分及び行政指導(3条1項13号)

 これは,現場で職員が臨機応変に対応する必要があるため,かかる特殊性に配慮した手続を個別法において定めるほうが適切であると考えたものです。

⑭ 報告又は物件の提出を命ずる処分その他その職務の遂行上必要な情報の収集を直接の目的としてされる処分及び行政指導(3条1項14号)

 このような行為は,行政調査としての性格を持つものであり,行政庁の意思決定の準備的行為であることから,通常の処分,行政指導とは異なる特色があり,個別の法律に手続的規制を委ねることにしたものです。

⑮ 審査請求,異議申立てその他の不服申立てに対する行政庁の裁決,決定その他の処分(3条1項15号)
 このような行為は事後手続であり,行政不服審査法に手続が規定されています。

⑯ 前号に規定する処分の手続又は第3章に規定する聴聞若しくは弁明の機会の付与の手続その他の意見陳述のための手続において法令に基づいてされる処分及び行政指導(3条1項16号)

 これらの手続は,最終処分に至る手続過程における中間的処分および行政指導であり,これについてまで手続的規制をかけることは,手続をいたずらに煩瑣にし,その遅延を招来するおそれがあるからです。


4 命令等の性質上,意見公募手続等の規定の適用になじまない行為

 第3条第2項で,以下の6つを挙げています。

① 法律の施行期日について定める政令(3条2項1号)
 法律の施行期日は,通常,法律で期限を定め,その範囲内で内閣に与えられたときの裁量を行使させるにすぎず,意見公募手続等をとる必要性が小さいからです。

② 恩赦に関する命令(3条2項2号)
 政府の高度の政策的判断に基づくものであり,国民の意見を聴くのになじまないものとされました。

③ 命令又は規則を定める行為が処分に該当する場合における当該命令又は規則(3条2項3号)
 このような処分性を持つ命令または規則は,一般の命令または規則と性格を異にするという前提にたって,第6章の適用除外としたものとされています。

④ 法律の規定に基づき施設,区間,地域その他これらに類するものを指定する命令又は規則(3条2項4号)
 同じく通常の命令または規則と性質を異にする面があり,その事前手続は,計画策定手続とも密接に関連するため,それと併せて検討することが望ましいので,第6章の適用除外とされました。

⑤ 公務員の給与,勤務時間その他の勤務条件について定める命令等(3条2項5号)
 これらは,基本的には労使の交渉の結果を反映して定められるものであり,一般からの意見公募にはなじまないものと考えられたものです。

⑥ 審査基準,処分基準又は行政指導指針であって,法令の規定により若しくは慣行として,又は命令等を定める機関の判断により公にされるもの以外のもの(3条2項6号)

 審査基準,処分基準,行政指導指針は,すべてが公にされるとは限らず,合理的理由があって公にされないものについては,意見公募手続等をとることにも支障があるので,第6章の規定の適用が排除されたものです。


5 地方公共団体が行う手続

 行政手続法第3条第3項は,以下のように規定しています。
 第1項各号及び2項各号に掲げるもののほか,

①地方公共団体の機関がする処分(その根拠となる規定が条例又は規則に置かれているものに限る。)

②地方公共団体の機関がする行政指導

③地方公共団体の機関に対する届出(前条第7号の通知の根拠となる規定が条例又は規則に置かれているものに限る。)

④地方公共団体の機関が命令等を定める行為については,次章から第6章までの規定は,適用しない。


 ①まず,地方公共団体の機関がする処分(その根拠となる規定が条例又は規則に置かれているものに限る。)が適用除外となっています。
 これが,本問の問うている事項です。

 これを逆に言うと,地方公共団体の機関がする処分であっても,それが「法律に基づく処分」であれば,行政手続法が適用されることになります。「法律に基づく処分」の場合は,それだけ国が関心を持つ事項なので,行政手続法が適用されるのです。
 その処分の根拠となる規定が,条例または規則に基づく場合は,地方自治を尊重し,国の法律である行政手続法は遠慮しようと考えたものですね。法律に基づく処分であれば,自治事務・法定受託事務を問わず行政手続法が適用されます。

 ②地方公共団体の機関がする行政指導については,すべて適用除外となっています。
 法律に基づく処分との関連で行われる行政指導であっても適用除外となっていることに注意しましょう。
 地方自治を尊重しようということと,行政指導が法律に基づく処分との関連で行われているのかそうでないのかを区別することが困難なので,一律に適用除外とされたものです。

 ③地方公共団体の機関に対する届出(前条第7号の通知の根拠となる規定が条例又は規則に置かれているものに限る。)
 前条7号は,届出の定義であり「届出とは,行政庁に対し一定の事項の通知をする行為(申請に該当するものを除く。)であって,法令により直接に当該通知が義務付けられているもの(自己の期待する一定の法律上の効果を発生させるためには当該通知をすべきこととされているものを含む。)をいう」と規定されています。
 したがって,法律により通知が義務付けられている場合には,行政手続法の適用があるが,条例または規則に根拠規定がある場合は,適用が排除されることになります。地方自治の尊重と,国の関心事との調和ということで,「処分」の場合と同じ考え方ですね。

 ④地方公共団体の機関が命令等を定める行為にも適用がありません。
「処分」や「届出」と同様に,法律に根拠を有する場合には行政手続法を適用しようという考え方もありますが,すべての命令等を定める行為について,適用を除外しています。
 命令等を定める手続には,民主主義の要素があり,民主主義的参加の色彩が濃い手続には,地方自治尊重の要請が大きいと考えられたものです。


6 第4条による適用除外

 行政手続法第4条は,「固有の資格」においてすべき処分等に関し,以下のように定め,行政手続法の適用除外を認めています。
 
第4条 (国の機関等に対する処分等の適用除外)

1 国の機関又は地方公共団体若しくはその機関に対する処分(これらの機関又は団体がその固有の資格において当該処分の名あて人となるものに限る。)及び行政指導並びにこれらの機関又は団体がする届出(これらの機関又は団体がその固有の資格においてすべきこととされているものに限る。)については,この法律の規定は,適用しない。


2 次の各号のいずれかに該当する法人に対する処分であって,当該法人の監督に関する法律の特別の規定に基づいてされるもの(当該法人の解散を命じ,若しくは設立に関する認可を取り消す処分又は当該法人の役員若しくは当該法人の業務に従事する者の解任を命ずる処分を除く。)については,次章(「申請に対する処分」)及び第3章(「不利益処分」)の規定は,適用しない。

① 法律により直接に設立された法人又は特別の法律により特別の設立行為をもって設立された法人

② 特別の法律により設立され,かつ,その設立に関し行政庁の認可を要する法人のうち,その行う業務が国又は地方公共団体の行政運営と密接な関連を有するものとして政令で定める法人


3 行政庁が法律の規定に基づく試験,検査,検定,登録その他の行政上の事務について当該法律に基づきその全部又は一部を行わせる者を指定した場合において,その指定を受けた者(その者が法人である場合にあっては,その役員)又は職員その他の者が当該事務に従事することに関し公務に従事する職員とみなされるときは,その指定を受けた者に対し当該法律に基づいて当該事務に関し監督上される処分(当該指定を取り消す処分,その指定を受けた者が法人である場合におけるその役員の解任を命ずる処分又はその指定を受けた者の当該事務に従事する者の解任を命ずる処分を除く。)については,次章及び第3章の規定は,適用しない。


4 次に掲げる命令等を定める行為については,第6章の規定は,適用しない。

① 国又は地方公共団体の機関の設置,所掌事務の範囲その他の組織について定める命令等

② 皇統譜について定める命令等

③ 公務員の礼式,服制,研修,教育訓練,表彰及び報償並びに公務員の間における競争試験について定める命令等

④ 国又は地方公共団体の予算,決算及び会計について定める命令等(入札の参加者の資格,入札保証金その他の国又は地方公共団体の契約の相手方又は相手方になろうとする者に係る事項を定める命令等を除く。)並びに国又は地方公共団体の財産及び物品の管理について定める命令等(国又は地方公共団体が財産及び物品を貸し付け,交換し,売り払い,譲与し,信託し,若しくは出資の目的とし,又はこれらに私権を設定することについて定める命令等であって,これらの行為の相手方又は相手方になろうとする者に係る事項を定めるものを除く。)

⑤ 会計検査について定める命令等

⑥ 国の機関相互間の関係について定める命令等並びに地方自治法に規定する国と普通地方公共団体との関係及び普通地方公共団体相互間の関係その他の国と地方公共団体との関係及び地方公共団体相互間の関係について定める命令等(第1項の規定によりこの法律の規定を適用しないこととされる処分に係る命令等を含む。)

⑦ 第2項各号に規定する法人の役員及び職員,業務の範囲,財務及び会計その他の組織,運営及び管理について定める命令等(これらの法人に対する処分であって,これらの法人の解散を命じ,若しくは設立に関する認可を取り消す処分又はこれらの法人の役員若しくはこれらの法人の業務に従事する者の解任を命ずる処分に係る命令等を除く。)


 行政手続法第4条に関しては,出題可能性が低いでしょうから,第3条を中心に学習しておきましょう。

解答例
 
 地方公共団体の機関がする処分で,その根拠となる規定が条例又は規則に置かれているもの。(以上42字)


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