国家試験改正法講座「改正民法」 氷見敏明
(住宅新報社専任講師)
氷見敏明
◇はじめに
行政書士試験法改正対策講座の最初として,平成17年に施行された改正民法の内容が出題されていないので,今回はこの点について解説します。
1 保証契約の締結
以下の①と②が改正部分です。
①446条2項 保証契約は,書面でしなければ,その効力を生じない。
②446条3項 保証契約がその内容を記録した電磁的記録(電子的方式,磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって,電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。)によってされたときは,その保証契約は,書面によってされたものとみなして,前項の規定を適用する。
保証契約は,債権者と保証人になろうとする者との間で締結されます。実際には,主たる債務者から依頼されて保証人になることが多いでしょうが,民法上は,主たる債務者の依頼がなくても,債権者と保証人になろうとする者との契約だけで成立します。
改正前は,保証契約の締結は,口約束だけですることができました。すなわち,諾成契約でした。しかし,保証人は,情にかられて断りきれずに,あいまいなまま口約束で保証人になることがあり,問題となっていました。そこで,保証契約は,書面でしなければ効力を生じないとしました(民法446条2項)。
また,昨今の文書は,手書きされることが少なくなりパソコンで作成されることが多くなってきました。また,手紙のやりとりも電子メールで送受信されることが多くなった現状に鑑み,電磁的記録によって保証契約が締結された場合も,書面によって保証契約がなされたものとみなして保証契約の効力が生じることになりました(446条3項)。
2 貸金等根保証契約の新設
(1) 貸金等根保証契約の保証人の責任等
民法第465条の2から第465条の5まで貸金等根保証契約の規定を新たに設けました(改正前
は貸金等根保証契約の条文はありませんでした)。
通常の保証契約は,特定の債務を保証します。何年何月何日の売買代金500万円であるとか,何年何月何日の借金額1,000万円というように,具体的に特定された債務を保証します。
他方,根保証契約とは,一定の範囲に属する不特定の債務を保証します。
主たる債務が消滅すれば,保証債務も消滅します。これを保証債務の付従性といいます。そこで,A銀行から個人商店主Bが500万円の借金をし,Cが保証人になったとしましょう。そして,2カ月後に借金の支払を終えた場合,Cの保証債務は付従性により消滅します。
その後,BがA銀行から300万円借りた場合,Cは再度,Aとの間で保証契約を締結しなければなりません。
このように継続的に借金,返済を繰り返す場合,そのたびに保証契約を締結しなければならず,手間がかかり面倒です(保証契約書には,印紙税もかかります)。
そこで,何度も何度も保証契約を締結するのは面倒なので,何年何月何日に残っている債務を最高何円まで保証するという根保証契約を認めたのです。
このように元本の確定すべき日を元本確定期日といいます。そして,保証する最高額のことを極度額といいます。根保証契約を締結すると,元本確定期日までの間に借金額がゼロになっても保証契約は消滅せず,保証契約を再度,締結する必要がないので便利です。
では,新設条文を見てみましょう。
(貸金等根保証契約の保証人の責任等)
465条の2第1項 一定の範囲に属する不特定の債務を主たる債務とする保証契約(以下「根保証契約」という。)であってその債務の範囲に金銭の貸渡し又は手形の割引を受けることによって負担する債務(以下「貸金等債務」という。)が含まれるもの(保証人が法人であるものを除く。以下「貸金等根保証契約」という。)の保証人は,主たる債務の元本,主たる債務に関する利息,違約金,損害賠償その他その債務に従たるすべてのもの及びその保証債務について約定された違約金又は損害賠償の額について,その全部に係る極度額を限度として,その履行をする責任を負う。
465条の2第2項 貸金等根保証契約は,前項に規定する極度額を定めなければ,その効力を生じない。
465条の2第3項 第446条第2項及び第3項の規定は,貸金等根保証契約における第1項に規定する極度額の定めについて準用する。
以下,465条の2の注意点を述べます。
①民法が認めた貸金等根保証契約は,主たる債務の範囲に金銭の貸渡しまたは手形の割引を受けることによって負担する債務(「貸金等債務」という)が含まれていなければなりません。また,保証人は,法人ではなく,個人でなければなりません。
②極度額を定めない場合には,貸金等根保証契約は無効となります。
③貸金等根保証契約は,書面で締結しなければなりません。また,電磁的記録によっても貸金等根保証契約を締結することができます。
(2) 貸金等根保証契約の元本確定期日
元本確定期日は,契約締結日から5年以内の範囲(②)で定めなければなりません。

5年
①契約締結日 ② ③
③のように5年経過した日を定めたら,元本確定期日は効力を生じません(無効)。この場合は,元本確定期日は定めがないものとみなされます。
元本確定期日の定めがないときは(元本確定期日の定めが無効の場合も含む),その元本確定期日は,その貸金等根保証契約の締結の日から3年を経過する日となります。

3年
①契約締結日 ②元本確定期日となる
465条の3第1項 貸金等根保証契約において主たる債務の元本の確定すべき期日(以下「元本確定期日」という。)の定めがある場合において,その元本確定期日がその貸金等根保証契約の締結の日から5年を経過する日より後の日と定められているときは,その元本確定期日の定めは,その効力を生じない。
465条の3第2項 貸金等根保証契約において元本確定期日の定めがない場合(前項の規定により元本確定期日の定めがその効力を生じない場合を含む。)には,その元本確定期日は,その貸金等根保証契約の締結の日から3年を経過する日とする。
465条の3第3項 貸金等根保証契約における元本確定期日の変更をする場合において,変更後の元本確定期日がその変更をした日から5年を経過する日より後の日となるときは,その元本確定期日の変更は,その効力を生じない。ただし,元本確定期日の前2箇月以内に元本確定期日の変更をする場合において,変更後の元本確定期日が変更前の元本確定期日から5年以内の日となるときは,この限りでない。
465条の3第4項 第446条第2項及び第3項の規定は,貸金等根保証契約における元本確定期日の定め及びその変更(その貸金等根保証契約の締結の日から3年以内の日を元本確定期日とする旨の定め及び元本確定期日より前の日を変更後の元本確定期日とする変更を除く。)について準用する。
(3) 貸金等根保証契約の元本の確定事由
主たる債務の元本が確定する事由には3種類ありますので,見ておきましょう。
465条の4 次に掲げる場合には,貸金等根保証契約における主たる債務の元本は,確定する。
1号 債権者が,主たる債務者又は保証人の財産について,金銭の支払を目的とする債権についての強制執行又は担保権の実行を申し立てたとき。ただし,強制執行又は担保権の実行の手続の開始があったときに限る。
2号 主たる債務者又は保証人が破産手続開始の決定を受けたとき。
3号 主たる債務者又は保証人が死亡したとき。
次に,改正点を含む予想問題を解いて,最後の仕上げをしましょう。
◇予想問題
〔問題1〕 保証債務に関する次の記述のうち,民法の規定によれば正しいものはどれか。
1 保証契約は,書面でなくても締結することができるが,連帯保証契約は,書面でなければ締結することができない。
2 保証契約は,電磁的記録によってすることができるが,連帯保証契約は,電磁的記録ではすることができない。
3 貸金等根保証契約の保証人は,主たる債務の元本,主たる債務に関する利息,違約金,損害賠償その他その債務に従たるすべてのもの及びその保証債務について約定された違約金又は損害賠償の額について,その全部に係る極度額を限度として,その履行をする責任を負う。
4 手形の割引を受けることによって負担する債務が,主たる債務に含まれているときは,貸金等根保証契約に該当しない。
5 貸金等根保証契約は,保証人が責任を負う極度額を定めなければ,その効力を生じないが,契約締結日から3年以内の範囲で元本確定期日を定めた場合には極度額の定めがなくても有効である。
〔解説〕
1 誤り。保証契約は,書面でしなければ無効である。通常の保証契約であろうと,連帯保証契約であろうと書面でしなければならない(民法446条2項)。
2 誤り。保証契約は,電磁的記録ですることができる。電磁的記録でした場合にも,書面で保証契約を締結したものとみなされる(446条3項)。連帯保証契約の場合も,同様である。
3 正しく正解。貸金等根保証契約の保証人は,主たる債務の元本,主たる債務に関する利息,違約金,損害賠償その他その債務に従たるすべてのものおよびその保証債務について約定された違約金または損害賠償の額について,その全部に係る極度額を限度として,その履行をする責任を負う(465条の2第1項)。
4 誤り。貸金等根保証契約は,一定の範囲に属する不特定の債務を主たる債務とする保証契約であって,その債務の範囲に金銭の貸渡しまたは手形の割引を受けることによって負担する債務が含まれるもので,保証人が法人であるものを除くものをいう(465条の2第1項)。
主たる債務が,手形の割引を受けることによって負担する債務である場合も,貸金等根保証契約となるので誤りである。
5 誤り。貸金等根保証契約は,元本確定期日を定めるか否かを問わず,保証人が責任を負う極度額を定めなければ,その効力を生じない(465条の2第2項)。
〔問題2〕 貸金等根保証契約に関する次の記述のうち,民法の規定によれば正しいものはどれか。
1 元本確定期日を貸金等根保証契約締結の日から6年後と定めた場合,元本確定期日は,その貸金等根保証契約締結の日から5年を経過する日となる。
2 貸金等根保証契約において元本確定期日の定めがない場合には,その元本確定期日は,その貸金等根保証契約の締結の日から5年を経過する日とする。
3 主たる債務者が破産手続開始の決定を受けたときでも,貸金等根保証契約の元本は確定しない。
4 貸金等根保証契約の主たる債務者が死亡したときは,貸金等根保証契約の元本が確定するが,保証人が死亡したときは,貸金等根保証契約の元本は確定しない。
5 債権者が,保証人の財産について,金銭の支払を目的とする債権についての強制執行を申し立てたときは(強制執行の手続の開始があったものとする),貸金等根保証契約の元本が確定する。
〔解説〕
1 誤り。貸金等根保証契約において元本確定期日の定めがある場合において,その元本確定期日がその貸金等根保証契約の締結の日から5年を経過する日より後の日と定められているときは,その元本確定期日の定めはその効力を生じない。この場合には,元本確定期日は,その貸金等根保証契約の締結の日から3年を経過する日となる(465条の3第1項・2項)。
2 誤り。貸金等根保証契約において元本確定期日の定めがない場合(前項の規定により元本確定期日の定めがその効力を生じない場合を含む)には,その元本確定期日は,その貸金等根保証契約の締結の日から3年を経過する日となる(465条の3第2項)。
3 誤り。主たる債務者または保証人が破産手続開始の決定を受けたときは,貸金等根保証契約の元本が確定する(465条の4第2号)。
4 誤り。主たる債務者または保証人が死亡したときは,貸金等根保証契約の元本が確定する(465条の4第3号)。
5 正しく正解。債権者が,主たる債務者または保証人の財産について,金銭の支払を目的とする債権についての強制執行または担保権の実行を申し立てたときは,貸金等根保証契約の元本が確定する。ただし,強制執行または担保権の実行の手続の開始があったときに限る。

