国家試験改正法講座 地方自治法 氷見敏明
(住宅新報社専任講師)
氷見敏明
はじめに
「地方自治法の一部を改正する法律」(平成18年法律第53号)が,平成19年4月1日から施行されました。
改正のポイントは,地方の自主性・自律性の拡大を図るための措置,議会制度の充実,中核市の見直し等です。
ただし,中核市の見直し等については,平成18年6月7日から施行されています。
地方の自主性・自律性の拡大を図るための措置におけるクレジットカードでの公金の納入,行政財産を貸し付けたり,私権を設定することができる場合の拡大,信託できる財産の拡大,長または議会の全国的連合会組織に対する情報提供制度の創設に関しては,平成18年11月24日から施行されています。
問題番号 科 目 項 目
問題21 条例
問題22 条例の制定改廃請求
問題23 行政法 議会
問題24 地方公共団体の契約
問題25 住民監査請求・住民訴訟
平成19年度の行政書士試験で,地方自治法から5問出題されていますので,改正内容を十分に把握しておく必要があります。
1 地方の自主性・自律性の拡大を図るための措置
(1) 副知事・助役制度の見直し
①市町村の助役に代えて,市町村に副市町村長を置くことになりました(地方自治法161条1項)。
②副知事および副市町村長の定数は条例で定めるものとされました(162条2項)。
③副市町村長は,普通地方公共団体の長が議会の同意を得てこれを選任します(162条)。
④副市町村長の任期は,4年です。ただし,普通地方公共団体の長は,任期中においてもこれを解職することができます(163条)。
⑤副知事および副市町村長は,普通地方公共団体の長を補佐し,「普通地方公共団体の長の命を受け政策及び企画をつかさどり」,その補助機関である職員の担任する事務を監督し,別に定めるところにより,普通地方公共団体の長の職務を代理します(167条1項)。
改正前の副知事および助役には,「普通地方公共団体の長の命を受け政策及び企画をつかさどり」の部分の規定はありませんでした。
⑥副知事および副市町村長は,普通地方公共団体の長の権限に属する事務の一部について委任を受け,その事務を執行します(167条2項)。
改正前の副知事および助役には,このような規定はありませんでした。
(2) 出納長および収入役制度の廃止
①出納長および収入役を廃止し,普通地方公共団体に会計管理者1人を置くことになりました(168条1項)。
改正前は,都道府県には出納長,市町村には収入役1人を置くことになっていました。
②会計管理者は,普通地方公共団体の長の補助機関である職員のうちから,普通地方公共団体の長が命じます(168条2項)。
③法律またはこれに基づく政令に特別の定めがあるものを除くほか,会計管理者は,当該普通地方公共団体の会計事務をつかさどります(170条1項)。
(3) 吏員制度の廃止
普通地方公共団体の「吏員」と「その他の職員」の区分,「事務吏員」および「技術吏員」の区分を廃止し,一律に「職員」とするものとされました。
改正前の法において,普通地方公共団体の職員は「吏員」と「その他の職員」について区分を設けていました。
この区分は,明治憲法下において行われていた官公吏と雇傭人の区分に由来し,公務の中の責任の重い職務を担当する者とそうでない者があり,前者については主として「吏員」が,後者については主として「その他の職員」が,それぞれ担当するものとして区分を設けていました。
実際には,長の補助職員のうち一定の事務や技術をつかさどる者を「吏員」といい,雇員・傭人等が「その他の職員」とされていました。
しかし,「吏員」と「その他の職員」の区分については,採用方法や勤務条件等において地方公務員制度上は区別されておらず,「事務」と「技術」の区分については,地方公共団体の事務の多様化,複雑化により,明確に区分できない状況にあり,区分そのものが形骸化しているという状況でした。
以上のような状況に鑑み,「吏員」と「その他の職員」の区分,「事務吏員」と「技術吏員」の区分を廃止し,一律に「職員」とするよう改正しました。
(4) 監査委員制度の見直し
普通地方公共団体に監査委員が置かれますが(195条1項),改正ポイントは,識見を有する者から選任する監査委員については,条例でその数を増加することができるものとしたという点です。
【改正法】195条2項 監査委員の定数は,都道府県及び政令で定める市にあっては4人とし,その他の市及び町村にあっては2人とする。
ただし,条例でその定数を増加することができる。196条1項 監査委員は,普通地方公共団体の長が,議会の同意を得て,人格が高潔で,普通地方公共団体の財務管理,事業の経営管理その他行政運営に関し優れた識見を有する者(以下「識見を有する者」)及び議員のうちから,これを選任する。
この場合において,議員のうちから選任する監査委員の数は,都道府県及び前条第2項の政令で定める市にあっては2人又は1人,その他の市及び町村にあっては1人とするものとする。
2項 識見を有する者のうちから選任される監査委員の数が2人以上である普通地方公共団体にあっては,少なくともその数から1を減じた人数以上は,当該普通地方公共団体の職員で政令で定めるものでなかった者でなければならない。
【改正前の法】195条2項 監査委員の定数は,都道府県及び政令で定める市にあっては4人とし,その他の市にあっては条例の定めるところにより3人又は2人とし,町村にあっては2人とする。
196条1項 監査委員は,普通地方公共団体の長が,議会の同意を得て,人格が高潔で,普通地方公共団体の財務管理,事業の経営管理その他行政運営に関し優れた識見を有する者(以下「識見を有する者」)及び議員のうちから,これを選任する。
この場合において,議員のうちから選任する監査委員の数は,監査委員の定数が4人のときは2人又は1人,3人以内のときは1人とするものとする。
2項 識見を有する者のうちから選任される監査委員の数が,3人である普通地方公共団体にあっては,少なくともその2人以上は,2人である普通地方公共団体にあっては少なくともその1人以上は,当該普通地方公共団体の職員で政令で定めるものでなかった者でなければならない。
(5) 財務に関する制度の見直し
改正前の地方自治法では,公金の納入は,証紙等で行い,クレジットカードでの納入は認められていませんでしたが,これを可能にする改正が行われました。
自動車税,住民税,固定資産税,水道料金や施設使用料などについて,カードによる支払が可能となりました。
【改正によって追加された条文】
231条の2第6項
普通地方公共団体は,納入義務者が,歳入の納付に関する事務を適切かつ確実に遂行することができる者として政令で定める者のうち当該普通地方公共団体の長が指定をした者(以下「指定代理納付者」という。)が交付し又は付与する政令で定める証票その他の物又は番号,記号その他の符号を提示し又は通知して,当該指定代理納付者に当該納入義務者の歳入を納付させることを申し出た場合には,これを承認することができる。
この場合において,当該普通地方公共団体は,当該歳入の納期限にかかわらず,その指定する日までに,当該歳入を当該指定代理納付者に納付させることができる。
第7項 前項の場合において,当該指定代理納付者が同項の指定する日までに当該歳入を納付したときは,同項の承認があった時に当該歳入の納付がされたものとみなす。
(6) 長または議会の全国的連合会組織(地方六団体)に対する情報提供制度の創設
地方六団体(全国知事会,全国都道府県議会議長会,全国市長会,全国市議会議長会,全国町村会,全国町村議会議長会)は,地方自治に影響を及ぼす法律または政令その他の事項に関し,総務大臣を経由して内閣に対し意見を申し出,または国会に意見書を提出することができます。
今回の改正では,内閣への意見の申出がスムーズに行えるように,以下のような内容を追加しました。
各大臣は,その担任する事務に関し地方公共団体に対し新たに事務または負担を義務付けると認められる施策の立案をしようとする場合には,連合組織が,内閣に対して意見を申し出ることができるよう,当該連合組織に当該施策の内容となるべき事項を知らせるために適切な措置を講ずるものとしました(263条の3第5項)。
2 議会制度の充実
(1) 専門的知見の活用
政策立案機能の強化を目的として,普通地方公共団体の議会は,議案の審査または当該普通地方公共団体の事務に関する調査のために必要な専門的事項に係る調査を学識経験を有する者等にさせることができるものとしました(100条の2)。
(2) 臨時会の招集請求権
議長は,議会運営委員会の議決を経て,当該普通地方公共団体の長に対し,会議に付議すべき事件を示して臨時会の招集を請求することができるものとし,この場合,当該普通地方公共団体の長は,請求のあった日から20日以内に臨時会を招集しなければならないものとしました(101条2項・4項)。
なお,議員定数の4分の1以上の者から臨時会の招集の請求があった場合についても当該地方公共団体の長は,請求のあった日から20日以内に臨時会を招集しなければならないものとしました(101条3項・4項)。
(3) 委員会制度の見直し
①常任委員
普通地方公共団体の議会は,条例で常任委員会を置くことができますが(109条1項),議員は,少なくとも1の常任委員となるものとし,常任委員は,会期の始めに議会において選任し,条例に特別の定めがある場合を除くほか,議員の任期中在任します(109条2項)。
改正前は,議員は,それぞれ1個の常任委員となるものとし,常任委員は,会期の始めに議会において選任し,条例に特別の定めがある場合を除くほか,議員の任期中在任すると規定されていました。
改正前の「それぞれ1個の常任委員となる」とは,必ず1個の常任委員になるということと,2個以上の常任委員を兼ねることができないという2つの意味を有していました。ところが,改正により,「少なくとも1つの常任委員になる」としたのです。
少なくとも1つですから,2つ兼任してもよいということになります。
②閉会中の委員の選任
法改正により,閉会中においては,議長が,条例で定めるところにより,常任委員,議会運営委員,特別委員を選任することができるようになりました(109条3項,109条の2第3項,110条3項)。
③委員会の議案提出権
常任委員会,議会運営委員会,特別委員会は,議会の議決すべき事件のうち,その部門に属する当該普通地方公共団体の事務に関するものにつき,議会に議案を提出することができるようになりました。ただし,予算については,この限りではありません(109条7項,109条の2第5項,110条5項)。
(4) 専決処分の要件の明確化
普通地方公共団体の長は,議会の議決すべき事件について特に緊急を要するため議会を招集する時間的余裕がないことが明らかであると認めるときは,議会の議決すべき事件を処分することができるようになりました(179条1項)。
(5) 中核市制度の見直し
中核市の指定要件のうちの面積に関する要件が廃止されました。人口が30万以上であることという要件は変わりません。
改正前に中核市が備えなければならない要件とは,人口が30万以上の市でなければならず,その市の人口が50万未満の場合にあっては,面積要件が100平方キロメートル以上とされていました。
(6) 電磁的記録による会議録
改正前は,会議録は,書面で作成しなければなりませんでしたが,電磁的記録で作成することが可能となりました。
議長は,事務局長または書記長に書面または電磁的記録(電子的方式,磁気的方式,その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって,電子計算機による情報処理の用に供されるものをいいます)により会議録を作成させ,並びに会議の次第および出席議員の氏名を記載させ,または記録させなければなりません。
会議録が電磁的記録をもって作成されているときは,議長および議会において定めた2人以上の議員が当該電磁的記録に総務省令で定める署名に代わる措置をとらなければなりません。

