合格するテキスト選び 「行政書士」 匂坂和彦
合格するためのテキスト選び
(住宅新報社講師) 匂坂和彦
こんにちは。今日はテキストの選び方について紹介したいと思います。
資格試験で使用する書籍は,大きく分類すると4つに分けることができると思います。
①基本書(テキスト)
②過去問題集
③予想問題集
④六法
このうち予想問題集は,使用する人としない人に分かれますが,最近の傾向に対応するためにはぜひ,使用していただきたいと思います。
基本書とは
基本書とは,試験に合格するための必要な知識が一通り詰まっている書籍。これを読めば全体像が見えてきます。
大手の予備校には,独自のものが用意されているはずなので,予備校に通っている方は授業で使用している基本書をメーンに勉強すればいいと思います。
しかし,独学で勉強している方は,市販の書籍を購入する必要があります。市販のもので,支持されているものおよび私がお勧めするものを紹介します。
○マンガはじめて行政書士シリーズ(住宅新報社)
住宅新報社のテキストの特徴は,分かりやすく,読みやすく書かれているところです。
「マンガはじめて行政書士シリーズ」は,初学者用に作られていて,法律って何,というような入門書として読むことをお勧めします。
『マンガ民法』は植杉先生が書いていて,もともとは司法書士試験用のテキストだそうです。初学者にも,読みやすく,中・上級者にも歯ごたえがある内容になっています。
『マンガ行政法』は,『不動産受験新報』の連載が原作になっています。『不動産受験新報』を読んで,興味をもった方は,ぜひ購入してみてください。遡って読むことができます。「マンガシリーズ」は,タイトルどおり,本当にマンガが入っています。
○楽学行政書士法令編(住宅新報社)
○楽学行政書士一般知識編(住宅新報社)
『楽学行政書士』は,行政書士試験を初めて受ける方のための図解基本書になっています。
分かりやすい記述と,「楽学」という名のとおり,理解を助けてくれるイラストで楽しく学ぶことができます。
法令編には法令関係の全科目が収録されています。内容ですが,すごいなと思ったのは,平成19年度試験で最難問であった,問題45の正当防衛。
この問題は,刑法上の正当防衛と緊急避難を勉強したことのある方でないと,正解するのは難しかったのですが,民法上の正当防衛・緊急避難と刑法上の正当防衛・緊急避難の比較が19年度版に掲載されており,「楽学」を使って勉強された方は,もしかしたら問題45は正解できたかもしれません。
「楽学」はタイトルは簡単そうですが,かなり細かいところまで解説がされています。
○わかる行政書士基本書(住宅新報社)
『わかる行政書士』は行政書士試験用の総合テキストです(3,360円・税込み)。試験で出題される全分野(法令と一般知識)を1冊にまとめた本格テキストになっています。
分かりやすい記述による詳細な解説で,受験経験者はもちろん,法律の勉強は初めてという人にも最適の内容です。植杉先生と高橋先生が書いていて,とても充実した内容になっています。
このテキストは楽学と違い,イラストこそ挿入されていませんが,字の大きさや色使いなど,読んでいて目が疲れないレイアウトになっています。あまりカラフルだと,内容が充実していても目が疲れてしまうんですね。
基本書は,各出版社からいろいろなものが出版されていますが,「わかる」がこの辺のことを考慮しているのか,基本書の中では一番読みやすかったです。
行政書士試験(科目別テキスト) 法学書院
うかるぞ行政書士 週刊住宅新聞社
行政書士合格パスポート 東京法経学院
(1) 会社法だけは特にテキストを購入する
ここまで,総合的な基本書(テキスト)の紹介をしてきましたが,出題科目の中で会社法だけは,別にもう1冊購入して深く勉強したほうがいいようです。これは予備校に通っている方も同様に当てはまることです。
『不動産受験新報』の読者の方には,予備校に通っている方も多いと思いますが,19年度試験で会社法が初登場することになっていたため,予備校で会社法はどこまで勉強できるのだろうか,ということが注目されていました。どの程度のレベルの出題がされるか不透明でしたから。
個人的には,問題40以外は昨年度の旧商法よりも簡単な問題であったと思いました。5問中4問は取れるかなと。
ただ,予備校的には,難しい出題だったという意見が多く,理由を問い合わせたところ,委員会制度や特別取締役制度などテキストには書いてあるものの,授業がそこまで追いつかなかったとのことでした。
予備校では,民法と行政法に膨大な時間を割くため,会社法はある程度で切り上げざるを得ず,会社法は,出題科目の中でも,特に自分で積極的に勉強を要する科目といえるでしょう。
答練では常に4~5問正解できたけど,本試験では2~3問くらいしか正解できなかったという方も多かったようです。
会社法は,今や憲法と並ぶ主要科目の1つです。授業のみに頼らず,できれば別に専門的なテキストを購入して,ご自身で勉強したほうがよいと思います。
よく,会社法のテキストはどれがいいですかと聞かれるのですが,司法試験用ですが,伊藤塾著,弘文堂の『会社法』(3,800円+税)をお勧めしています。
読むと,みなさんがいままで経験してこなかったような膨大な量だと思いますが,5問全部正解するには十分なテキストだと思います。
私は,会社法はこのテキストを勧めていますが,もう少し薄いテキストでも分かりやすければ問題ないと思います。
もう少し簡単に書かれているものがいい,という方は,司法書士試験用のテキストですが,住宅新報社の『マンガはじめて司法書士会社法』を読んでみてください。
会社法のテキストは,行政書士試験用では,現時点では,残念ながら,お勧めできるものが見当たりません。
(2) 分からないところは専門書を読む 勉強していて,基本書を読むだけでは,多少なりとも,どうしても分からないところがでてくると思います。そういうときは,少し深く,その法令について専門書を読むことをお勧めします。分からないままだと,結構いやなものです。
どうしても解決したいときもあるはずです。それでいいと思います。そうして解決していくうちに実力も上がるでしょう。
憲法(芦部憲法) 岩波書店
逐条解説 行政手続法 ぎょうせい
条文から学ぶ行政救済法 有斐閣
判例ハンドブック 日本評論社
口語六法 自由国民社
個人情報保護法の解説 ぎょうせい
口語六法は,民法については分野別で出版されており,憲法・会社法も出版されています。各条文ごとに細かい解説がされていますので,六法ではなく,参考書として挙げました。
過去問題集について
行政書士試験が難しくなったからといって,過去問をやる意味がなくなったわけではありません。
19年度試験では一般知識は過去問で解ける問題も数問あり,過去問をやっておくべきだったと思われた方も多いと思います。
各出版社から過去問は出版されていますが,
過去問を選ぶ基準をいくつか挙げておきます。
①「分野別」であること
②解説が手抜きではないこと
③問題が左ページから始まっていること
④問題が5年分以上あること
過去問には「分野別」と「年度別」がありますが,これは「分野別」をお勧めします。
「分野別」は,どこに何が書いてあるか探しやすく,勉強もとてもしやすいです。その日に勉強したところまで,問題演習をしたときに,「分野別」であれば容易にできます。
これに対して「年度別」は,自分の現時点の力を計るのには役に立ちます。普段の勉強には「分野別」を使うことをお勧めします。
解説がしっかり書いてあることは最低条件です。「○ 正しい」「× 何条」で終わっているものは避けたほうがよさそうです。
過去問は,手にとって見開きにしたときに,問題が左ページから始まるものがいいと思います。
というのも,問題が右ページから始まっていると,よほど厚い紙質でない限り,問題を解いている最中に,次ページの解答が透けて見えてしまうのです。
問題が左ページから始まっていると,右ページの解説は紙等で隠せばいいので,このようなことが起こらなくていいのです。
ただし,巻末にまとめて解答があるものであれば,この問題は生じ得ないです。
分量ですが,少なくとも5年分以上はほしいかなと思います。あまり少ないと本試験に望むためのデータとしては心細いので,それくらいはほしいです。
行政書士過去問セレクト 法学書院
行政書士過去問マスターDX(3分冊) 東京法経学院
これに対して,「年度別」過去問題集では,現在の自分のレベルがどれくらいなのか計るメリットがあります。合格するためには,あと何点取ればいいのか,具体的な数字として計ることができます。
その場合は,住宅新報社の『わかる行政書士再現問題集』にチャレンジしてみてください。
収録問題が3年分になっているので,現在の自分の力が数字で計れる丁度いい分量だと思います。
「年度別」であれば,逆に少ない分量のほうがいいと思います。
お勧めの予想問題集
行政書士試験専用の予想問題集としては,住宅新報社の『わかる行政書士予想問題集』をお勧めします。
法令編・一般知識編・直前予想模試があります。
山口智一先生が書いている本ですが,とても本試験問題に近く,良問ぞろいの問題集です。
住宅新報社の問題集は解説もしっかりしていて,なぜ間違えたか,それを読み,理解することにより,力もつくと思います。
なぜ間違えたか? その理由が分からないと,法律の勉強をするうえではどうしようもありませんので,解説がしっかりしたものを選ぶべきです。
過去問もそうですが,予想問題集としては「○ 正しい」「× 何条」で終わっているものは,できれば避けるべきで,その点では住宅新報社の「わかる行政書士シリーズ」は,各肢の正誤の根拠を分かりやすく書いています。
科目別の問題集としては,行政書士試験用の予想問題集ではないのですが,民法と行政法の問題集として,国家Ⅱ種・地方上級公務員試験の過去問を勧めています。
東京アカデミー著,七賢出版の『出たDATA問』がとても行政書士試験の学習用としてはよいと思います。
問題の量は多いのですが,この科目が特に弱いという方は,ぜひ使用してみてください。
公務員試験の過去問なので行政書士試験にもかなり近いと思います。一通りやれば,民法と行政法はかなり得点力が上がると思います。
地方自治法については,学陽書房の『地方自治法101問』がいいと思います。法改正後のものが出版されており,地方自治法で全問正解を狙う方にはお勧めです。資格予備校などを訪問すると,行政書士講座の先生は,大体この『地方自治法101問』は持っているようです。
六法はどんなものがいい?
40字記述の問題が出題されるようになり,条文の大切さというものが,皆さん身に染みたのではないでしょうか。今の時代,六法は受験に欠かせないものになりつつあります。
最近は口語化されたものが多く,新しい受験生には親切な作りになっています。六法にもいろいろなものがあります。おすすめできるものとして,
『判例六法』 (有斐閣)
『行政書士受験六法』 (東京法令出版)
『司法試験択一六法民法』 (LEC)
があります。
私は,勉強している関係上,判例が載っているものがいいので,ここ数年は有斐閣の『判例六法』を使っていました。
『判例六法』には2種類あって,『判例六法プロフェッショナル』と『判例六法』があります。受験用には『判例六法』で十分だと思います。判例がたくさん載っており,内容的には,判例六法は申し分ないです。
行政書士試験に特化した六法としては『行政書士受験六法』(東京法令出版)があります。この六法は,字がとても大きく見やすいのが特徴です。
判例・過去問も挿入されています。書店で,いろいろ並べて比較してみたのですが,行政書士受験に適している六法で一番字が大きいのは『行政書士受験六法』(東京法令出版)だと思います。
判例は,『判例六法』のほうが多いですが,字は『行政書士受験六法』のほうが大きいです。私も視力が両目とも0.1に満たないので,できれば目に優しい読みやすい六法というものを求めています。
『判例六法』は2色刷りで,『行政書士受験六法』は字の大きさで,視力の弱さを補ってくれるので,ありがたいです。
『司法試験択一六法民法』(LEC)は司法試験用の六法なのですが,司法試験の過去問が挿入されていて,内容的には難しいのですが,違う視点から考えた問題もあり,読んでいると新しい発見があります。民法の勉強のときに特に使用するとよいと思います。憲法・会社法編もあります。
1月末の合格発表のあと,いろいろな方から結果報告をいただきました。
感想を読んでいて,19年度試験の記述式は,部分点が大変つきにくかったという印象を受けました。
つまり,あいまいな表現では得点できない。択一のみで170点近く得点できた方でも,厳しい結果を受けた方が何人かいました。ぜひ,六法を活用して正確な条文知識を身につけ,記述式は40点以上を目指しましょう。
40字記述対策は『季刊不動産受験新報』で
『月刊不動産受験新報』が今月で終了し,5月31日発売号(夏号)から季刊誌になります。
少しだけ,先行して内容を教えていただきましたが,行政書士の特集だけでも,これまで以上に充実した内容になります。
一般知識対策や記述式対策など,いままで月をまたいで読んでいたのが,まとめて何十ページも読めるようになります。『季刊不動産受験新報』は,機能的にはとても優れています。
『不動産受験新報』の掲載問題を勉強すれば,択一の知識にもなると思いますし,これまで『不動産受験新報』で出題した予想問題でも,今後出題されそうな問題はたくさんあります。
2007年3月号以降のバックナンバーをもう一度読んでみるのもいいかもしれません。というのも,予想問題というのは,本試験で出題される可能性があるものを掲載するのであり,過去の予想問題でも,重要性というのは過去も現在も変わらないのです。
まだ,40字記述が始まって2年しか経っていないので,最新のトレンドというのは特にありません。
一般知識対策を含め,『季刊不動産受験新報』に期待してください。
最後に~
20年度試験はチャンスかも
幸いなことに,行政書士試験については目立った法改正はありません。
本当はあるのですが,それも微々たるもの。今年の法改正は本試験には,ほとんど影響がありません。民法法人もおそらく来年度からの適用なので,まだ旧法の民法法人を勉強していいようです。
気づいたのですが,特にこれという法改正がない,穏やかな年度というのは,本当に久しぶりなのです。今まで毎年何かしら改正,改正できたので,受験生にとって近年は大変厳しい内容だったに違いありません。
会社法のときは地球がひっくり返ったかのような改正でしたから。私も,勉強していて,今年ほど楽だと思える年は近年ありません。もちろん,今後の行政書士試験の難易度自体は上がる可能性が高いのですが,しっかり落ち着いて勉強できる年度というのは,本当に久しぶりなのです。
ぜひ,ここは頑張って勉強していただき,読者の皆さんが合格されますことを心からお祈りしています。

