国家試験改正法講座 「会社法」 氷見敏明
(住宅新報社専任講師)
氷見敏明
はじめに
平成17年に会社法が制定され,平成18年5月1日から施行されています。
行政書士試験では,平成18年度試験においては,改正前の商法から出題され,19年度試験では,新しい会社法から4問出題されました。
それでは,会社法を見ていきましょう。
1 会社の種類
会社とは,株式会社,合名会社,合資会社または合同会社をいいます(会社法2条1号)。改正前は,旧商法により設立される株式会社,合名会社および合資会社,有限会社法により設立される有限会社の4つのタイプがありました。
会社法施行により,有限会社法が廃止され,有限会社を新たに設立することは,もうできませんが,すでに設立されている有限会社は,定款変更や登記申請等の特段の手続をせずに,会社法施行後は会社法上の株式会社として存続します。
このような会社法施行前に設立された有限会社は,特例有限会社と呼ばれ,有限会社の文字を商号中に用い,会社法施行後も,有限会社法のルールの実質が維持されるよう配慮されています。
なお,特例有限会社は,いつでも,定款を変更して株式会社に商号変更し登記すれば,特例から離れることができます。
2 定款記載事項
(1) 最低資本金制度の廃止
従来,株式会社設立の要件として,資本金が最低1,000万円必要でした。すなわち,旧商法168条の4によれば,「資本の額は1,000万円を下ることを得ず」と定められていました。
しかし,設立時に資本金1,000万円を要するのは,起業する者にとって,非常に負担が重く,障害となっていました。
そこで,旧商法168条の4を削除し,株式会社設立時の最低資本金制度を廃止しました。これにより,資本金が1円でも会社を設立することができるようになりました。
なお,資本金の額にかかわらず,株式会社の純資産額が300万円を下回る場合には,株式会社の債権者を保護するため株主に剰余金の配当はできないという規定が設けられました(会社法458条)。
旧商法では,「会社の設立に際して発行する株式の総数」を定款に記載することになっていましたが,これを記載する必要はなくなり,その代わりに「設立に際して出資される財産の価額又はその最低額」を記載し,または記録しなければならないことになりました(27条)。
旧商法では,「会社の設立に際して発行する株式の総数」に設立時の株式の発行価額を乗ずることによって設立時の財産的規模が分かるようになっていました。
これに対し,会社法27条は,株式数ではなく,直接金額で表示し,かつ,確定した金額ではなく,最低額を示せばよいこととし,この最低額についての制限もないので1円でも設立が可能となるのです。
(2) 発起人に対する株式の割当て
会社設立時に発行する,発起人に割り当てる株式の数を「設立時の定款」か「発起人全員の同意」で定めることができます(32条)。旧商法には,このような規定はありませんでした。
(3) 発行可能株式総数
会社の根本規則である定款は,改正前も改正後も,公証人の認証を受けなければその効力を生じません(旧商法167条,会社法30条1項)。最初の定款を「原始定款」ともいいますが,要するに,公証人の認証を受ける対象となる定款のことです。
改正前は,原始定款には,「会社が発行する株式の総数」を記載または記録しなければなりませんでした(旧商法166条1項3号)。
しかし,会社法は,原始定款には,会社が発行する株式の総数を定める必要はないものとしました。
ただし,会社法37条1項は「発起人は,株式会社が発行することができる株式の総数(以下「発行可能株式総数」という)を定款で定めていない場合には,株式会社の成立の時までに,その全員の同意によって,定款を変更して発行可能株式総数の定めを設けなければならない」としました。
また,会社法37条2項は「発起人は,発行可能株式総数を定款で定めている場合には,株式会社の成立の時までに,その全員の同意によって,発行可能株式総数についての定款の変更をすることができる」と定めました。
すなわち,会社法により発起人が定款作成後であっても,株式の割当てに関する事項を決定できるようになった(32条)ことにあわせて,定款作成後でも発行可能株式総数を変更できるようにしたのです。
公証人の認証を受けた定款は,株式会社の成立前は,原則として,これを変更することができませんが,会社法37条1項・2項の場合には,定款を変更することができます。
ちなみに,株式会社は,その本店の所在地において設立の登記をすることによって成立します(49条)。
(4) 公告の方法
旧商法166条1項9号によれば「会社が公告を為す方法」を原始定款に記載または記録しなければなりませんでした。
会社法は,会社が公告する方法について,定款で記載または記録するかしないかを自由に決められるようにしました(27条,939条1項)。
会社が定款で公告の方法を記載または記録しないときは,官報に掲載する方法をとらなければなりません(939条4項)。
3 現物出資
現物出資とは,不動産,有価証券,特許権,著作権等のように金銭以外の財産で出資することをいいます。
なお,旧商法168条2項で設立時の現物出資は,発起人に限って行うことができると明文で定めていました。会社法には,明文の規定はありませんが,同じように設立時の現物出資は発起人に限って行うことができると解釈されています。
定款に現物出資についての記載または記録があるときは,当該事項を調査させるため,裁判所に対し,検査役の選任の申立てをしなければなりません(33条1項,旧商法173条1項)。
しかし,これには,例外があり,この点につき改正がありました。
旧商法173条2項1号によれば,現物出資財産について定款に定めた価格の総額が,資本の5分の1を超えず,かつ,500万円を超えない場合は,検査役の調査は不要でしたが,この部分につき以下のように内容が変わりました。
すなわち,会社法33条10項1号によれば,現物出資財産等について定款に記載され,または記録された価額の総額が500万円を超えない場合は,検査役の調査は不要となりました。「資本の5分の1を超えず」という資本との割合の要件は不要になりました。
旧商法173条2項2号によれば,現物出資財産が,取引所の相場のある有価証券の場合において,定款に定めた価格がその相場を超えない場合には,検査役の調査は不要でしたが,以下のように内容が変わりました。
会社法33条10項2号によれば,現物出資財産等のうち,市場価格のある有価証券について定款に記載され,または記録された価額が当該有価証券の市場価格として法務省令で定める方法により算定されるものを超えない場合は,検査役の調査は不要となりました。
取引所の相場でなくても,その有価証券に市場価格があるのであれば,現物出資されたものが適正な価格かを検証することができるからです。
4 事後設立
事後設立とは,会社成立前から存在する財産で,事業のために継続して使用するものを成立後2年以内に純資産額の20%超にあたる対価で取得することをいい,株主総会の特別決議が必要です(467条1項5号,309条2項11号)。
ただし,財産の対価として交付する財産の帳簿価格の合計額の当該株式会社の純資産額として法務省令で定める方法により算定される額に対する割合が5分の1(20%)を超えない場合なら,株主総会の特別決議は不要です(467条1項5号)。
改正前は,この事後設立をするには,株主総会の特別決議と裁判所選任の検査役の調査が必要でしたが,検査役の調査を必要とするのは,手続が煩雑であるとの批判があり,裁判所選任の検査役の調査を不要としました。
5 設立無効の訴え
(1) 提訴権者の限定
設立無効判決が確定すると,その判決は対世的効力(対世効)を有します(838条)。すなわち,当事者だけでなく第三者にも効力が及びます。
また,判決は,将来に向かって効力を有し,遡及しません(839条)。以上述べた,対世効と遡及効阻止については,改正前と特に変わりはありません。
設立してしまった会社を後から無効にすると,取引上の影響が大きいので,できるだけ無効を主張できる機会を少なくしなければなりません。このような観点から主張できる期間,主張できる者,主張の方法を制限しています。この点につき改正がありました。
株式会社の設立手続において重大な瑕疵がある場合,設立無効の訴えを提起できます。旧商法428条によれば,設立無効の訴えは,会社成立の日より2年内に訴えをもってのみ,主張することができ,この訴は株主,取締役または監査役に限りこれを提起することができました。
この点につき会社法は,株式会社が多様な種類を認めることになったので,それに合わせて,設立無効の訴えを提起できる者を以下のように定めました(828条2項1号)。
① 監査役設置会社は,株主,取締役,監査役,清算人
② 委員会設置会社は,株主,取締役,執行役,清算人
③ 監査役設置会社にも委員会設置会社にも該当しない会社は,株主,取締役,清算人
(2) 担保提供命令
株主または設立時株主が設立無効の訴えを提起した場合,被告会社の申立てにより,裁判所は,訴えを提起した株主または設立時株主に対し,相当の担保を立てるべきことを命ずることができるようになりました(836条1項)。
これは濫訴を防止するためです。ただし,その株主が取締役,監査役,執行役もしくは清算人であるとき,またはその設立時株主が設立時取締役もしくは設立時監査役であるときは,担保は必要ではありません。
6 株式の譲渡制限
(1) 一部の種類の株式譲渡制限
大規模な株式会社は,株主の個性は問題とならず,株式会社が発行する株式は原則として自由に譲渡できます。
しかし,同族会社のように株主の個性が問題となる場合,株式会社の支配を外部の者に奪われないように,定款で株式譲渡につき株式会社の承認を必要とする旨を定めることができます。
会社法により,定款で定めれば一部の種類の株式の譲渡につき株式会社の承認を必要だとすることができるようになりました(108条1項4号)。
株式会社は,内容の異なる2種類以上の株式を発行する場合,譲渡制限のある株式と譲渡制限のない株式とを同時に存在させることができるようになりました(新設規定)。旧商法では,このような規定はありませんでした。
(2) 株主間の譲渡制限
廃止された有限会社法19条によれば,社員以外の者に持分を譲渡する場合には,社員総会の承認が必要でしたが,社員に譲渡する場合には,自由にすることができました。
しかし,改正により従来の有限会社は,株式会社として規制されることになるので,株式譲渡制限会社の社員間の譲渡についても,株式会社同様,会社の承認を必要としました。
そして,譲渡制限株式の株主は,その有する譲渡制限株式を他人(その譲渡制限株式を発行した株式会社を除く)に譲り渡そうとするときは,その株式会社に対し,その他人が当該譲渡制限株式を取得することについて承認をするか否かの決定をすることを請求することができるとしました(136条)。
この承認は,取締役会設置会社では,取締役会で決議し,取締役会設置会社でない場合には,株主総会で決議します(139条1項)。ただし,定款に別段の定めをすることができます。
たとえば,会社にとって好ましくない者が株主になるのを防止するためですから,そうでない条件を備えた者であれば,代表取締役の承認で足りるとか,または承認不要とすることができます。
(3) 指定買取人による買取り
会社法140条4項により,譲渡制限株式の譲渡の承認がない場合,株式会社は,対象株式の全部または一部を買い取る者を指定することができるようになりました。
この指定を受けた者を指定買取人といいます。このような指定買取人の制度は,改正前にはありませんでした。
この指定は,株主総会(取締役会設置会社にあっては,取締役会)の決議によらなければなりませんが,定款で,あらかじめ指定買取人を定めておくこともできます(140条5項)。
7 株式無償割当て
株式会社は,株式無償割当てをすることができます。株式無償割当てとは,株式会社が株主に対し新たに払込みをさせないで,その株式会社の株式の割当てをすることをいいます(185条)。株式無償割当ては,会社法で新しく設けられた概念です。
実質的には,株式の分割による株主への利益配当のような役割を果たします。
会社の利益は,その一部を株主に配当することができます。配当の仕方は,現金かまたは株式で行われます。株式による配当は,配当可能利益の資本組入れと株式の分割という方法により行われます。
たとえば,株式分割は,普通株式1株に対し,普通株式1株を割り当てるというように行われ,この場合,株式分割により普通株式の1株主は,2株主になります。
この株式分割については,たとえば,普通株式1株に対して優先株式1株を割り当てることができるかというように普通株式に対して種類株式を割り当てることができるかという解釈上の争いがありました。
そこで,会社法によって,株式の無償割当てをする際に,普通株主に対して種類株式を無償割当てすることが認められました(186条)。
株式無償割当てに関する事項(株式無償割当ての効力発生日等)の決定は,株主総会の決議によらなければなりませんが,取締役会設置会社にあっては,取締役会の決議で行われます。ただし,定款に別段の定めがある場合は,それに従います(186条3項)。
株式の無償割当てを受けた株主は,株式無償割当ての効力発生日に,割り当てられた株式の株主となります(187条1項)。
株式会社は,株式無償割当てが効力を生じた日の後,遅滞なく,株主,種類株式発行会社にあっては種類株主およびその登録株式質権者に対し,その株主が割当てを受けた株式の数,種類株式数を通知しなければなりません(187条2項)。
8 取得条項付株式
(1) 取得条項付株式
取得条項付株式とは,株式会社がその発行する全部または一部の株式の内容として,その株式会社が一定の事由が生じたことを条件として,その株式を取得することができる旨の定めを設けている場合における,その株式をいいます(2条19号)。取得条項付株式は,会社法によって新設されたものです。
これとよく似た用語として取得請求権付株式があります。
取得請求権付株式とは,株式会社がその発行する全部または一部の株式の内容として,株主がその株式会社に対して,その株式の取得を請求することができる旨の定めを設けている場合における,その株式をいいます(2条18号)。
違いを述べると,取得条項付株式は,会社が株主から取得する株式であり,取得請求権付株式は,株主が株式会社に対して株式を取得するよう請求できる株式です。
株式会社が,発行する株式全部を取得条項付株式にするには,定款でその旨を定めなければなりません(107条2項)。
取得条項付株式にするための定款には,以下の内容等を定めておかなければなりません。
① 一定の事由が生じた日に当該株式会社がその株式を取得する旨およびその事由
② その株式会社が別に定める日が到来することをもって①の一定の事由とするときは,その旨
③ 一定の事由が生じた日に取得条項付株式の一部を取得することとするときは,その旨および取得する株式の一部の決定の方法
④ 取得条項付株式1株を取得するのと引換えにその株主に対して,その株式会社の社債(新株予約権付社債についてのものを除く)を交付するときは,その社債の種類および種類ごとの各社債の金額の合計額またはその算定方法等
(2) 取得条項付株式の取得日の決定
会社が(1)②の「その株式会社が別に定める日が到来することをもって①の一定の事由」が発生したとする旨の定めがある場合には,株式会社は,その日を株主総会(取締役会設置会社にあっては,取締役会)の決議によって定めなければなりません。
ただし,定款に別段の定めがある場合は,それに従います(168条1項)。
(3) 取得する株式の決定等
株式会社は,一定の事由が生じた日に取得条項付株式の一部を取得することとする旨の定めがある場合において,取得条項付株式を取得しようとするときは,その取得する取得条項付株式を決定しなければなりません(169条1項)。
この取得する取得条項付株式は,非取締役会設置会社の場合には,株主総会の決議によって定め,取締役会設置会社にあっては,取締役会の決議によって定めなければなりません。ただし,定款に別段の定めがある場合は,それに従います(169条2項)。
株式会社が取得する取得条項付株式を決定したときは,取得条項付株式の株主およびその登録株式質権者に対し,直ちに,当該取得条項付株式を取得する旨を通知しなければなりません(169条3項)。
この通知は,公告をもってこれに代えることができます(169条4項)。
9 自由な機関設計
(1) すべての株式会社に必要な機関
会社は法人なので,自然人(人間)のように,意思を決定する脳や活動する身体を持っていません。
そのため,一定の自然人または組織体のする意思決定や一定の自然人の行為を会社の意思または行為とすることが必要となります。このような自然人や組織体を会社の機関といいます。
会社法が成立する前,株式会社の機関には,株主総会,取締役会,監査役等がありました。
株式会社には,株式を上場している大規模な会社から,家族で経営する個人商店のような小規模な会社まであります。そこで,会社法により,実体に合わせて各株式会社は,定款で自由に機関設計をすることができるようにしました。
なお,規模の大小を問わず,すべての株式会社には,株主総会と取締役は必要です。
株式会社は,会社に出資する株主と会社を経営する取締役とが分離している企業形態です。したがって,少なくとも株式会社といえるためには,株主総会と取締役が必要となるのです。
株主総会・取締役以外の取締役会,監査役,監査役会,会計参与,会計監査人,三委員会などについては,各株式会社ごとに自由に設置できるようになりました(326条2項)。
(2) 取締役会設置会社
改正前は,株式会社には,取締役会の存在が必ず必要でした。
会社法の成立により,有限会社も株式会社として会社法により規制されるので,比較的小規模な会社の実体に合わせて組織を設計できるようにしました。
小規模な株式会社では,取締役会を設けるほど人がいないことも考えられるので,取締役会を設けなくても,取締役の設置だけで足りるようにしました。
会社法によれば,①公開会社,②監査役会設置会社,③委員会設置会社のどれかに該当する株式会社には,必ず取締役会を置かなければなりません(327条1項)。
なお,取締役会を置く株式会社または会社法の規定により取締役会を置かなければならない株式会社を取締役会設置会社といいます(2条7号)。
取締役会設置会社には,監査役を置く必要があります。ただし,その会社が委員会設置会社か公開会社でない会計参与設置会社であれば,監査役を設置する必要はありません(327条2項)。
会計監査人設置会社には,監査役を置かなければなりません(327条3項)。会計監査人設置会社とは,会計監査人を置く株式会社または会社法の規定により会計監査人を置かなければならない株式会社をいいます(2条11号)。
ただし,委員会設置会社であれば,監査役を置くことはできませんが,会計監査人の設置は義務付けられています(327条4項・5項)。委員会設置会社とは,指名委員会,監査委員会および報酬委員会を置く株式会社をいいます(2条12号)。
公開会社,監査役会設置会社および委員会設置会社のどれにも該当しない株式会社は,取締役会の設置は義務付けられていません。この取締役会を設置しない株式会社の取締役は,定款に別段の定めがある場合を除き,株式会社の業務を執行し(348条1項),株式会社の代表権を有することになります(349条1項)。
取締役が2人以上ある場合には,株式会社の業務は,定款に別段の定めがある場合を除き,取締役の過半数で決定します(348条2項)。
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季刊「不動産受験新報」
2008年夏号(5月31日発売)
宅建・行政書士5か月短期攻略号
特集1 宅建5か月短期攻略法
宅建5か月合格法
ウィークポイント超速整理
日本一早い宅建税制改正の解説
特集2 行政書士5か月短期攻略法
行政書士5か月合格法
記述式徹底攻略
一般教養最新用語と予想問題
特集3マン管・管理主任者
建築・設備Q&A(24頁)
特集4 土地家屋調査士記述式予想問題と解説
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