記述式徹底攻略 民法その1 氷見敏明
5か月短期攻略法
記述式徹底攻略民法
住宅新報社専任講師
氷見敏明
問題1
被保佐人Aは,保佐人の同意を得ないで,ビルの所有者Bとの間で,存続期間を4年とする建物賃貸借契約を締結した。
契約締結の際に賃料を6か月分前払したが,この賃貸借契約を取りやめにし,前払賃料を取り戻したい。
これは可能か? 可能であれば,理由を示して,その方法を40字程度で記述しなさい。
可能でなければ,その理由を40字程度で記述しなさい。
解説
翔子:制限行為能力者のタイプを挙げてみて。
奈々:えっと,未成年者,成年被後見人,被保佐人,被補助人ね。
翔子:被保佐人が,重要な法律行為をする場合には,保佐人の同意が必要よね。
奈々:ええ,知ってるわよ。たとえば,被保佐人が不動産の売買契約を締結する場合には,保佐人の同意が必要(民法13条1項3号)。保佐人の同意が必要なのに同意を得ないで契約をした場合には,後から取り消すことができる(13条4項)。
翔子:被保佐人が行う法律行為で,保佐人の同意が必要なものには,多数あるけど,特にヒッカケ問題が出るのは賃貸借契約ね。
奈々:そうそう,よく間違ったわよ。短期賃貸借(602条)の存続期間を超える賃貸借の問題でしょ。
翔子:そうね。樹木の栽植または伐採を目的とする山林の賃貸借の場合には,何年を超える場合に保佐人の同意が必要だったか覚えてる?
奈々:10年ね。存続期間10年を超える山林の賃貸借であれば,保佐人の同意が必要だったかな。
翔子:そのとおりよ。10年を1日でも超える山林の賃貸借をする場合には,保佐人の同意が必要なの。10年以内の山林の賃貸借の場合には同意はいらないのよ。
奈々:10年以内ということは,10年ちょっきりの場合は同意は不要ってことね。
翔子:そう,同意なくしてできるから,同意がないことを理由に取り消すことはできないのよ。
奈々:その微妙なところを覚えるのが試験のコツ・ツボなのね~。
翔子:骨壷じゃないよ~。それじゃ,質問ね。駐車場として土地を賃借する場合,保佐人の同意を得ないで存続期間を5年と定めた場合には,保佐人の同意がないことを理由に取り消すことができる?
奈々:できる !
翔子:取り消すことはできないのよ。引っかかったわね。5年以内の場合には,保佐人の同意はいらないの。山林以外の土地の賃貸借で5年を超える場合には,保佐人の同意が必要だけど,5年以内であれば保佐人の同意は不要だから,取り消すことはできないのよ。
奈々:あっ,そうか。これからは「超える」という文字には敏感になるわ。
翔子:それから,建物賃貸借で存続期間を3年とする場合には,保佐人の同意はいらない。
奈々:3年を超える建物賃貸借の場合には,保佐人の同意が必要となるのね。
翔子:そのとおりよ。最後に,動産の賃貸借で6か月を超える場合には,保佐人の同意が必要になるのね。
奈々:そこで,10年,5年,3年,6か月の数字を覚えるための語呂合わせが出てくるのね。
翔子:東郷三郎(とうごうさぶろう)と覚えましょう。
10 5 3 6
東 郷 三 郎
他に,保佐人の同意が必要な行為は以下のとおりね。
①元本を領収し,または利用すること
②借財または保証をすること
③不動産その他重要な財産に関する売買契約
④訴訟行為をすること
⑤贈与,和解または仲裁合意をすること
⑥相続の承認もしくは放棄または遺産の分割をすること
⑦贈与の申込みを拒絶し,遺贈を放棄し,負担付贈与の申込みを承諾し,または負担付遺贈を承認すること
⑧新築,改築,増築または大修繕をすること
解答例
3年を超える建物賃貸借を締結するには,保佐人の同意が必要。同意がない場合には取り消せる。(44字)
類似問題
被保佐人Aは,保佐人の同意を得ないで,車を月々5万円で7か月間賃借する契約を締結した。
契約を締結する際に,賃料4か月分(20万円)を前払した。
この場合,Aは,契約を取り消して,20万円を取り戻すことができるか?
可能であれば,その理由を示して,その方法を40字程度で記述しなさい。
可能でなければ,その理由を40字程度で記述しなさい。
解答例
6か月を超える動産賃貸借を締結するには,保佐人の同意が必要。同意がない場合には取り消せる。(45字)

