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記述式徹底攻略 民法その3 氷見敏明

 問題3

 Aは甲土地の所有者である。Aは,多重債務者であり,強制執行を免れるため,Bと通謀し,自己所有の甲土地をBに仮装売却し,移転登記もした。その後Bは,仮装売買の事情を知らないCに売却し,さらにCは事情を知っているDに売却したが,Dは移転登記を取得していない。

 この場合,判例の見解によれば,Aは,虚偽表示を理由に契約の無効を主張し,Dから甲土地を取り返すことができるか?

 40字程度で理由を示しながら記述しなさい。

 解説

翔子:これは,意思表示からの出題で,絶対的構成と相対的構成という論争点で,もちろん判例の見解である,絶対的構成を理解し,覚えなければならないわね。

奈々:難しそう。

翔子:ううん,簡単よ。相手方と通じてした虚偽の意思表示を虚偽表示といい,無効だったわよね。では,虚偽表示の無効を第三者に対抗できる? できない?

奈々:虚偽表示の無効は,善意の第三者には対抗できないけど,悪意の第三者には対抗できるわ。

翔子:そのとおりね。この結論は,Cに登記があるか否かは関係ないの。また,Cに過失があるか否かも関係がないのよ。

奈々:問題文にあるように,A所有の甲土地がBに売却され,その売買契約が虚偽表示であり,Bが善意のCに転売した場合(図1),Cに登記があろうがなかろうが,善意でさえあれば,保護される。この場合,Cに過失があっても,善意でさえあれば保護される(判例)ということね。

【図1】

翔子:そうね。さらに問題となるのは,図2にあるように,第三者Cからさらに譲り受けた者がいる場合なの。


【図2】

奈々:転得者が現れた場合ね。

翔子:そうよ。CもDもAからみて第三者なのね。学問的には,Dのことを第四者とはいわないのよ。第三者とは,自分と取引をしている相手以外の者をいうの。

 図2で説明すると,AにとってBは取引相手よね。Aは,Cとは取引をしていないから,AからみてCは第三者ね。また,AはDと取引をしていないから,DもAからみて第三者ということになるわね。

奈々:Dのことを転得者ともいうわね。

翔子:そうそう。次に,民法の条文は,虚偽表示の無効は,善意の第三者には対抗できないと定めているから,悪意の第三者には対抗できるということになるよね。これを単純に,図2に当てはめると,Aは,虚偽表示の無効を悪意の第三者Dに対抗できるという結論になるよね。これを相対的構成というの。

奈々:しかし,判例は,相対的構成という見解を採用していないわよね。

翔子:そのとおりよ。判例によれば,いったん善意の第三者(Cのこと)が出現すると,その後の譲受人Dが悪意でも保護されるとしたの。Dに登記がなくてもいいのよ。

奈々:その考え方を絶対的構成というんでしょ。

翔子:そうよ。判例の見解は,絶対的構成を支持しているのよ。理由は,相対的構成によれば,法律関係はいつまでたっても安定しないからなの。法律関係の不確定な状態がいつまでも続き,派生的に賃借権や抵当権の設定を受けた者との関係が複雑になるだけだからなの。

 また,相対的構成によれば,悪意の譲受人Dが,善意のCに担保責任(561条)を追及することができるため,善意者を保護しようとした趣旨にも反するからなのよ。

奈々:最後の部分が何をいってるか分からないわ?

翔子:善意者のCは保護すべきよね。ところが,悪意のDが所有権を取得できないとすると,Cは他人Aの土地を悪意のDに売ったということになるわよね。

 つまり,他人物売買をしたということよ。そうすると,他人物売買によって,買主が権利を取得できなかったら,買主は解除できるでしょ(561条)。

 DはCとの売買契約を解除して,Cに対し代金の返還を請求することができるでしょ。すなわち,善意のCが損するということよ。

奈々:そういうことだったのか。
 善意の第三者が出現すれば,その後の譲受人は悪意でも保護されるので,Aは,取り返せない。(43字)


 類似問題
 Aは乙土地の所有者である。Aは,Bにだまされて,自己所有の乙土地をBに売却した後に,Bは,善意のCに売却した。さらにCは悪意のDに売却したが,Dは移転登記を取得していない。

 この場合,判例の見解によれば,Aは,詐欺を理由に契約を取り消し,Dから乙土地を取り返すことができるか? 40字程度で理由を示しながら記述しなさい。

 解答例

 善意の第三者が出現すれば,その後の譲受人は悪意でも保護されるので,Aは,取り返せない。(43字)