「行政書士」 記述式徹底攻略民法その6 氷見敏明
行政書士
5か月短期攻略法
記述式徹底攻略民法
住宅新報社専任講師 氷見敏明
問題6
Aの所有する甲土地は,他の所有者の土地に囲まれて,公道に直接出ることができない。
Aは,甲土地を囲んでいる土地の所有者と特別の契約をすることなく,公道に出るために,甲土地を囲んでいる他人の土地を通行することができるが,その場合どのような条件を満たした部分を選ばなければならないかを40字程度で記述しなさい。
解説
奈々:不動産は,読んで字のごとく,動かざる財産だし,特に土地は,互いに隣接しあうでしょ。土地の所有者が自分以外の者には絶対に使用させないとなると隣人同士の円満な共同生活はできなくなるわよね。
翔子:そうなの。だから,隣接する土地同士の利害を相互に調整する必要があり,そのために不動産を利用する権利は制限を受けざるを得ないわけね。
奈々:そこで,民法は相隣関係の規定を設けたのね。
翔子:そういうこと。相隣関係の規定に基づいて認められている権利は,地役権と異なり,契約に基づいて生じるものではなく,法律上当然に認められているものなの。
奈々:相隣関係における「公道に至るための他の土地の通行権」の話を聞きたいわ。
翔子:他人の土地に囲まれて公衆が自由に通行できる公道に通じない土地を袋地というの。
奈々:準袋地っていうのもあるんでしょ?
翔子:そうなの。池沼,河川,水路もしくは海を通らなければ公道に至ることができない土地,または崖があって土地と公道とに著しい高低差がある土地は準袋地というの。
奈々:準袋地も容易に公道に出ることができないのだから,実質的には袋地と同じよね。
翔子:そうね。だから準袋地は,袋地と同じ扱いを受けるのよ。
奈々:なるほど,袋地に認められる権利や義務は,準袋地にも同じように認められるってことね。
翔子:そうなの。たとえば,袋地または準袋地の所有者は,公道に至るため,その土地を囲んでいる他の土地を通行することができるのよ(210条)。
奈々:それを「公道に至るための他の土地の通行権」というのね。
翔子:そのとおり。袋地所有者が所有権取得の登記(対抗要件)をしていなくても,通行権を主張できるかが昔争われたことがあるの。
奈々:登記っていうのは,不動産取引の安全のための公示制度でしょ。だったら,隣地通行権は,相隣接する不動産相互間の利用の調整を目的とするものだから,所有権取得の登記がなくても,主張できるとすべきじゃないの?
翔子:奈々,す,すごいわね。リーガルマインドがあるのね。最高裁判所は昭和47年に奈々と同じことを判決で示したのよ。つまり,袋地の所有権を取得した者は,所有権取得の登記を備えていなくても通行権を主張できると判断したのよ。
奈々:特に,他の土地の所有者と契約をしなくても認められる権利だから,どこでも通行してよいというわけじゃないでしょ?
翔子:もちろん。通行の場所および方法は,通行権を有する者のために必要であり,かつ,他の土地の
ために損害が最も少ないものを選ばなければならないのよ(211条1項)。
奈々:通路を開設しちゃ,まずいの?
翔子:そんなことないわよ。通行権者は,必要があるときは,通路を開設することができるわ(211条2項)。もちろん,費用は通行権者が出さなければならないのよ。
奈々:通行権を有する者は,お金を払わなくてもいいの?
翔子:通行権者は,その通行する他の土地の損害に対して償金を支払わなければならない。
奈々:その償金は,毎月支払わなければならないの?
翔子:1年ごとに,償金を支払うことができるのよ。ただし,通路の開設のために生じた損害は,一時に支払わなければならないのよ。
奈々:もし通行権者が償金の支払を怠った場合には,通行権は消滅するの?
翔子:損害賠償責任は負うけど,通行権は消滅しないのよ。
奈々:分割または一部譲渡によって公道に通じない土地が生じたときは,どうなるの?
翔子:その場合には,袋地となった土地の所有者は,公道に至るため,他の分割者の所有地のみを通行することができるのよ。この場合は,償金を支払う必要はない。
奈々:図8の乙土地がAとBの共有地であった場合,乙土地を分割してAの土地が袋地になったときは,図9のBの土地のみを通行できるということね。Aは丙土地を通行する権利はないということね。
【図8】
甲土地 公
丁 乙土地
土 丙土地 道
地
公 道
【図9】
丁 甲土地 公
土 A B
地 丙土地 道
公 道
翔子:そのとおりよ。正解で~す。
解答例
通行権を有する者のために必要であり,かつ,他の土地のために損害が最も少ないもの。
(40字)
類似問題
Bは1筆の乙土地を所有していたが,その後,乙土地を一部Aに譲渡したことによって公道に通じない土地が生じた。
袋地の所有者となったAは,所有権取得の登記を受けていない場合,公道に至るため,Bの土地を通行することができるか? また,この場合,償金を支払う必要があるか?
解答例
登記がなくても,Bの所有地のみを通行することができる。償金を支払う必要はない。
(39字)

