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「行政書士」 記述式徹底攻略民法その7 氷見敏明

問題7

 Aは,銀行から1,000万円借りて,銀行のために,A所有の甲建物に抵当権を設定し抵当権設定登記もした。


その後,地震により建物にひび割れが生じ修理をすることにし,B工務店に依頼した。Bは,Aに対する修理費用を,抵当権に優先して回収したいと考えている。


この場合の,Bの権利を何といい,この権利の効力を保存するには,どのような条件を具備すればよいかを40字程度で記述しなさい。


解説

奈々:担保物権とは,簡単にいうなら,お金を回収するための物に対する権利よね。

翔子:そうね。担保物権には,留置権,先取特権,質権,抵当権があるわね。

奈々:留置権と先取特権は,留置権設定契約,先取特権設定契約をしなくても法律上当然に発生する権利よね。


翔子:そうね。だから,留置権と先取特権は法定担保物権というの。


奈々:他の質権と抵当権は,質権設定契約,抵当権設定契約を締結しないといけないから,約定担保物権というわよね。


翔子:うん。ところで,先取特権を大きく3つに分類するとどうなる?


奈々:先取特権には,一般先取特権,動産先取特権および不動産先取特権があるわね(306条,311条,325条)。


翔子:そうね。一般先取特権は債務者の総財産に対して発生するわね。総財産ということは不動産も動産も全部対象になるわよね。


奈々:動産先取特権は,債務者の特定の動産に対して生じるし,不動産先取特権は債務者の特定の不動産に対して発生する。


翔子:そして,不動産先取特権には3つのタイプがあったわよね。


奈々:3つとは,不動産保存の先取特権,不動産工事の先取特権,不動産売買の先取特権ということね。

翔子:ところで,登記は早くした者が勝つという大原則があったよね。でもね,これには重大な例外があるのよ。


奈々:そうそう,勉強したわ。抵当権の登記の後に,不動産保存の先取特権の登記または不動産工事の先取特権の登記をした場合であっても,不動産保存の先取特権または不動産工事の先取特権が優先するのよね(339条)。


翔子:不動産保存の先取特権は,不動産の保存のために要した費用または不動産に関する権利の保存,承認もしくは実行のために要した費用に関し,その不動産について存在する(326条)。


奈々:不動産の保存の先取特権の効力を保存するためには,保存行為が完了した後直ちに登記をしなければならないわね(337条)。翔子,具体的な例を出して説明してみて。


翔子:いいわよ。たとえば,建物の所有者が,雨漏りするので,屋根の修理を工務店に依頼したとしましょう。

この場合,修理行為が完了した後直ちに不動産保存の先取特権を登記すれば,建物の所有者が弁済期に修理費用を払わなかった場合に,工務店は,その修理をした建物を競売し,その競売代金から優先的に支払を受けることができるのね。


奈々:不動産保存の先取特権は,担保物権だから優先的に弁済を受ける権利があるわけね。


翔子:さらに,修理をした建物に不動産保存の先取特権の登記をする前から抵当権の登記があったとしても,不動産保存の先取特権者が,抵当権者に優先して弁済を受けることができるという点が強力よね。


奈々:そうね。登記は早く登記した者が優先するのに不合理じゃないの?


翔子:そうともいえないかも。というのは,ぼろぼろの家の担保価値は低いけど,修理すれば担保価値は高くなるわ。その恩恵を抵当権者も受けるからね。


奈々:なるほどね。不動産工事の先取特権は,工事の設計,施工または監理をする者が,債務者の不動産に関してした工事の費用に関し,その不動産について存在する(327条1項)。


翔子:不動産工事の先取特権の効力を保存するためには,工事を始める前にその費用の予算額を登記しなければならない。この場合において,工事の費用が予算額を超えるときは,先取特権は,その超過額については存在しないのよ(338条1項)。


奈々:不動産保存の先取特権は,修理をした後に登記したけど,不動産工事の先取特権は事前に登記が必要なのね。めんどうね。


翔子:たとえば,建物の所有者が,増築工事を工務店に依頼したとしよう。

工務店は,工事を始める前に,その工事費用の予算額を登記しておけば,依頼者が,弁済期になっても工事代金を払わないときは,不動産工事の先取特権に基づいて,その工事をした建物を競売し,その競売代金から優先的に支払ってもらうことができるのよ。


  なお,不動産工事の先取特権は,工事によって生じた不動産の価格の増加が現存する場合に限り,その増価額についてのみ存在する(327条2項)。


奈々:なるほど。現存する増価額に対してのみ先取特権を行使できるのだから,抵当権に優先しても抵当権者に不利益を与えないわけね。


翔子:不動産売買の先取特権は,不動産の代価およびその利息に関し,その不動産について存在する(328条)。

  不動産売買の先取特権の効力を保存するためには,売買契約と同時に,不動産の代価またはその利息の弁済がされていない旨を登記しなければならないのよ(340条)。


奈々:具体的にいうと,たとえば,Aが甲土地をBに売却し,その契約の際に不動産売買の先取特権の登記をすれば,その代金や利息に関して,Aは,Bの甲土地について,不動産売買の先取特権を有することになる。

Bが弁済期に代金等を払わなければ,甲土地を競売し,その競売代金から優先的に支払ってもらうことができるというわけね。

解答例

 不動産保存の先取特権といい,その効力を保存するには,工事後にその費用の予算額を登記する。(44字)

類似問題

 Aは,B信用金庫から借金をし,A所有の甲建物に抵当権を設定し,抵当権設定登記もした。Aの子供が大きくなってきたので,増築工事をすることにし,C工務店に依頼した。


Cは,Aに対する工事費用を,抵当権に優先して回収したいと考えている。この場合の,Cの権利を何といい,この権利の効力を保存するには,どのような条件を具備すればよいかを40字程度で記述しなさい。


解答例

 不動産工事の先取特権といい,その効力を保存するには,工事前にその費用の予算額を登記する。(44字)