記述式徹底攻略 民法その2 氷見敏明
問題2
19歳のAは,法定代理人Bの同意を得ないで自己所有の建物をCに売却した。
1年経過したが,取消しの意思表示も追認の意思表示もなされていない。
Cは,契約当時Aが未成年者であり,売買契約が,いつ取り消されるかもしれない不安定な状態にあることを知った。
そこで,有効になるか無効になるかのどちらでもよいから,この問題に白黒をつけたい。Cは,誰にどのような行為をすればよいかを40字程度で記述しなさい。
解説
翔子:制限行為能力者と取引をした相手方を保護する制度には,どんなものがあるか挙げてみて。
奈々:催告権,制限行為能力者の詐術,法定追認,取消権の期間の制限があるわね。
翔子:そうね。この問題は,制限行為能力者と取引をした相手方の催告権の問題ね。
奈々:未成年者が,法定代理人の同意を得ないで契約を締結した場合には,その契約は無効なんでしょう?
翔子:それは,誤解よ。未成年者が法定代理人の同意を得ないで契約をしても有効なのよ。
奈々:えっ本当?
翔子:そうよ,有効なのよ。ただし,取り消すことができるのよ。取り消せば初めから無効だったと扱われるのよ。
奈々:そうか。未成年者が単独でした契約は取り消すことができる。「取り消すことができる」とは,取消しをするか否かは自由だってことだものね。
翔子:そうよ。そもそも,単独でした契約が直ちに無効であれば,取り消す必要ないじゃない。取消しっていうのは,有効な行為を無効にするための意思表示だから,取り消す前は有効だということよ。
奈々:納得,納得。未成年者が法定代理人の同意を得ないで建物の売買契約をしても有効だから,未成年者から建物を買った買主は,建物を使ってもよい。ところが,後から取り消されると無効になってしまうので,建物を返さなければならないことになってしまう。そうなると未成年者と取引をした相手は,とても立場が不安定ということになるわよね。
翔子:そうそう,そこで相手方に有効でも,無効でもいいから,はっきり明確にしてくれと催促する権利を与えてもいいじゃない。
奈々:なるほど,だから相手方に,催告権を与えたんだね。すなわち,1か月以上の期間(熟慮期間)を定めて,取り消すことができる行為を追認するか,取り消すかを確答(明確な返事)するように,催告することができるという権利を与えたのね。
翔子:制限行為能力者の相手方は,その制限行為能力者が行為能力者となった後,その者に対し,1か月以上の期間を定めて,その期間内にその取り消すことができる行為を追認するかどうかを確答すべき旨の催告をすることができるわ。この場合において,その者がその期間内に確答を発しないときは,その行為を追認したものとみなされるのよ(20条1項)。
奈々:取り消したものとみなされるのではなく,追認したものとみなされるので,注意が必要ね。
翔子:そうなのよ。具体的にいうと,未成年者が成年者になった場合,その成年者に1か月以上の期間を定めて催告をし,確答がなければ追認したものと扱われるのよ。
奈々:また,成年被後見人・被保佐人・被補助人が行為能力者になった場合にも,これらの行為能力者に1か月以上の期間を定めて催告をし,確答がなければ追認したものと扱われることになるというわけね。
翔子:そういうこと。ちなみに,未成年者が,法定代理人である親の同意を得ないで契約をした場合で,その未成年者が成年者になってから,親に催告しても何の効果も発生しないの。なぜなら,未成年者が成年者になった時点において親は法定代理人たる地位を失うからよ。保護者じゃなくなるのね。
奈々:なるほど。成年者になった場合には,成年者に催告しなければいけないってことね。
翔子:そういうこと。制限行為能力者の相手方が,制限行為能力者が行為能力者とならない間に,その法定代理人,保佐人または補助人に対し,その権限内の行為について,1か月以上の期間を定めて催告をした場合において,これらの者が,その期間内に確答を発しないときも,追認したものとみなされるのね(20条2項)。
奈々:簡単にいうと,制限行為能力者の保護者に対し,1か月以上の期間を定めて催告し,その期間内に確答がなければ,追認したものとみなされるってことね。
翔子:そういうこと。ややこしいことをいうと,被保佐人または被補助人の相手方は,被保佐人または被補助人に対しては,1か月以上の期間内にその保佐人または補助人の追認を得るべき旨の催告をすることができるのね。
この場合において,その被保佐人または被補助人がその期間内にその追認を得た旨の通知を発しないときは,その行為を取り消したものとみなされるのよ(20条4項)。
奈々:うーむ。こりゃ,間違えそうだね。この場合は,追認したものとみなされるのではなく,取り消したものとみなされるので,注意が必要だわ。
翔子:なお,未成年者または成年被後見人に対し,1か月以上の期間内にその法定代理人または成年後見人の追認を得るべき旨の催告をすることができるという制度は設けられていないわ。このような催告をしても,その未成年者または成年被後見人がその期間内にその追認を得た旨の通知を発しないときでも,何の効果も発生しないの。
なぜかというと,そもそも未成年者または成年被後見人には意思表示の受領能力が認められないからなの(98条の2)。
解答例
Cが,Aに対し,1か月以上の期間を定めて追認するか否かを確答すべき旨を催告すればよい。(43字)
類似問題
被保佐人Aは,保佐人Bの同意を得ないで自己所有の土地をCに売却した。
取消しの意思表示も追認の意思表示もなされていない場合において,Cは,売買契約が,いつ取り消されるか分からない不安定な状態にあることを知った。
そこで,有効になるか無効になるかのどちらでもよいから,この問題に白黒をつけたい。Cは,誰にどのような行為をすればよいかを40字程度で記述しなさい。
解答例
Cが,Bに対し,1か月以上の期間を定めて追認するか否かを確答すべき旨を催告すればよい。(43字)

