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「行政書士」 記述式徹底攻略行政法その2 氷見敏明

不動産受験新報 2008年 夏号


問題2

 地方公共団体の公権力の行使にあたる公務員Aが,一般人Bに対し,その職務を行うにあたり,違法に損害を加えたことにより,当該地方公共団体は,国家賠償法1条の責任を負った。

 この場合,当該地方公共団体は,どのような要件を満たしていれば,Aに対し求償することができるかを40字程度で記述しなさい。



解説

奈緒:綾香先輩,国家賠償法とは,端的にいってどういう法律ですか? 試験によく出るんですよね。

綾香:そうよ。国家賠償法とは,国または公共団体の損害賠償責任に関する法律ね。日本国憲法では,国および公共団体の賠償責任としての規定があるのを知ってる?

奈緒:はい。日本国憲法17条によれば「何人も,公務員の不法行為により,損害を受けたときは,法律の定めるところにより,国又は公共団体に,その賠償を求めることができる」と定めています。

綾香:では,国家公務員法や地方公務員法上の公務員の職務遂行が不法行為に該当する場合,国や公共団体に損害賠償請求する場合には,すべて国家賠償法1条が適用される?

奈緒:いえ,何でもかんでも国家賠償法1条が適用されるわけではありません。民法709条や715条の
使用者責任が適用されることもあります。


【参考】
民法709条「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は,これによって生じた損害を賠償する責任を負う」

民法715条1項「ある事業のために他人を使用する者は,被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし,使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき,又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは,この限りでない」


綾香:国家賠償法が適用される場合と民法が適用される場合の区別の基準は何?


奈緒:公務員の職務遂行行為が,「公権力の行使」に該当するか否かで決まります。「公権力の行使」として行われる場合には,国家賠償法1条,そうでない場合には民法が適用されます。


綾香:そのとおりね。国家賠償法1条1項によれば,「国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が,その職務を行うについて,故意又は過失によつて違法に他人に損害を加えたときは,国又は公共団体が,これを賠償する責に任ずる」と定めているわね。


奈緒:国家賠償法1条の適用対象となる行政作用には,どういうものがあるんですか?


綾香:それに答える前に,これに関連するけど,行政作用を3つに分類してみてくれない?


奈緒:行政作用は,「権力的活動」「非権力的活動」「私経済的活動」に分類できます。


綾香:国家賠償法1条の適用対象となる行政作用に関する「狭義説」とは何ですか?


奈緒:法令に基づいて国民に命令したり強制したりする「権力的活動」についてのみ適用があるという説ですが,近時の判例は,「権力的活動」だけではなく,「非権力的活動」についても国家賠償法1条を適用するようになっています。


綾香:そのとおりよ。それじゃ,純粋な「私経済的活動」も含めて,すべての行政作用に国家賠償法1条の適用があると判例は考えているのかな?


奈緒:そこまでは認めていないようです。


綾香:そのとおりよ。「国又は公共団体」の「公共団体」には,どんなものがある?


奈緒:普通地方公共団体である都道府県・市町村があります。また,地方自治法上の「特別地方公共団体」である特別区,地方公共団体の組合,財産区,地方開発事業団が含まれます。


綾香:国家賠償法1条1項の「職務を行うについて」は厳格に解釈して,職務と無関係であれば,国または公共団体は責任を負わないのかな?


奈緒:違います。外形標準説を採用しています。すなわち,公務員の主観的意図とは無関係に,客観的にみて,行為の外形が職務執行行為と認められれば足りるとしています(最判昭31・11・30)。したがって,職務と無関係な不法行為であっても,客観的に職務執行の外形が認められれば責任を負います。


綾香:ただし,警察官でない者が制服制帽を着用して,公務執行中の警察官のように装って他人を殺傷しても,責任を負わないことに注意が必要ね。公務員であることが前提よ。


奈緒:国または公共団体が損害賠償したときに,後から,加害行為をした公務員に求償できるんですか?


綾香:できるわよ。求償するための要件としては,公務員に故意または重大な過失があったということが必要ね(国家賠償法1条2項)。公務員が単なる過失で不法行為をしたときは,求償されないことになっているのね。なぜ,故意または過失があったときという要件にしなかったのかしらね?


奈緒:それは,単なる過失の場合にも求償されると,公務員がびくびくしながら公務を執行することになり,公務の停滞を招くおそれがあるからだと思います。


綾香:そのとおりね。すばらしいわよ。

解答例

 Aに故意又は重大な過失があったときは,地方公共団体は,Aに対し求償権を有する。
(39字)


類似問題

 非番の警察官であるAが,制服制帽を着用し,Bの所持品を取り調べ,Bを本署へ連行しようとしたところ,Bが騒いだので,同僚の警察官から盗んだ拳銃を発砲し射殺した。

この場合,Bの遺族に対し,国又は公共団体が国家賠償法1条1項の責任を負う理由を,40字程度で記述しなさい。


 
解答例

 客観的に見て職務行為の外形を備えているので,「職務を行うについて」に該当するから。(41字)