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「行政書士」 記述式徹底攻略行政法その3 氷見敏明

不動産受験新報 2008年 夏号

問題3

 行政上の義務の不履行がある場合,義務を履行させる手段としての「行政罰」とは何か。その意義と種類を40字程度で記述しなさい。

解説


綾香:行政上の義務を履行しない場合,これを放置していたのでは,行政上の義務を実現することができないわよね。


奈緒:そうですね。そこで,行政上の制裁を加え,その威嚇効果によって行政上の義務を間接的に実現させるんですよね。


綾香:そう。行政上の制裁で,最も一般的な制裁は行政罰といえるわね。行政罰とは,行政上の義務違反者に対する制裁として科せられる罰をいうのよ。


奈緒:罰というと,殺人,泥棒,人を傷害したというように著しい道徳違反者に対する制裁というイメージがありますね。

綾香:行政罰は,著しく道徳に反する罪とは関係がありません。行政罰とは,たとえば「30日以内に届出をしなければならない」との義務に違反して課される罰で,行政上の目的から義務を課すだけです。

奈緒:なるほど,行政罰は,刑法上の犯罪のように著しく道徳に反するというものではありませんね。

綾香:届出義務を課したのは,行政を行うために必要だったからです。

その届出が行われないときは,スムーズに行政を行うことが困難となってきます。

だからこそ,罰則を科してまで,守ってもらおうということにしたのです。ところで,行政罰は2つに分類できるわよね。知ってる?

奈緒:ええ,知ってますよ。行政刑罰と秩序罰ですね。

綾香:行政刑罰って何?

奈緒:行政刑罰は,行政上の義務違反に対して科すもので,刑法に定められている,懲役,禁錮,罰金,拘留または科料を科す刑罰をいいます。

綾香:行政刑罰にも刑法の総則規定が適用されるので,裁判所は刑事訴訟法の規定に従って科刑します。ところで,行政刑罰は,刑事罰とは法律上若干異なった扱いがなされます。何か分かるかしら?

奈緒:行政刑罰は,違反行為者だけでなく,その使用者や事業主にも科刑されることがあります(両罰規定)。

綾香:秩序罰とは,過料のことね。行政上の義務違反ではあるが,軽微な形式的違反行為に対して科される制裁ね。届出,登録,通知などの手続を怠る場合に,科される過料です。

奈緒:過料も刑法上の罰である刑罰ですか?

綾香:過料は科料と違い,刑罰ではありません。

ですから,刑法総則の適用はありません。過料を科すには,刑事訴訟の手続に従う必要はありません。

過料も科料も読み方は,「かりょう」というので,紛らわしいよね。だから過料は「あやまちりょう」,科料は「とがりょう」と呼ぶことがあるのよ。そして,両方とも金銭を払う義務を課せられる点でも同じよね。

奈緒:法令に基づく過料を科すには,非訟事件手続法の定めによって裁判所がこれを科します。

綾香:過料を科すか否かの事件は,裁判所が職権で開始され,その審理も職権で進められるのよ。

奈緒:過料を科すか否かの事件は,手続は非公開であり,一定の方式があるわけではないんですね。


解答例

 行政上の義務違反者に対する制裁で,罰金・科料等を科する行政刑罰と過料を科す秩序罰がある。(44字)