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民法2章3  不動産と動産

5 不動産と動産
 取引の客体となる有体物は、不動産と動産に分けられます。

 不動産とは、土地およびその定着物をいいます(民法八六条一項)。土地については説明するまでもないでしょう。問題は、土地の定着物の意味です。土地にくっついている物を指すわけですが、ただくっついていればいいというものでもありません。

「定着」というためには、継続的に一定の土地にくっつけて使用されることが、その物の取引上の性質と認められるものでなければなりません。たとえば、一時的に保管するために土地に仮植しただけの樹木は、「定着」とはいえないので、動産として扱われます。

 土地の定着物としては、石垣、樹木、建物等があげられますが、建物とそれ以外の定着物には重要な違いがあります。建物は、常に土地と離れた独立の不動産として扱われます。土地を売却しても、その上の建物まで自動的に権利が移転することはありません。

これに対し、石垣や樹木は原則として土地の一部として扱われ、土地が売却されれば、その上の石垣や樹木も一緒にくっついて権利が移転していきます。

なお、樹木については、立木法という法律によって、土地と独立して取引されることが認められる場合がありますが、現時点ではあまり気にする必要はないでしょう。
 次に、動産とは、不動産以外の物をいいます。これは、不動産の意味を正確に押さえておけば、簡単ですね。


6 物権と債権
 財産に関する権利は、大きく物権と債権に区別されます。物権とは、特定の物を直接支配することができる権利をいい、債権とは、特定の者に特定の行為を請求できる権利をいいます。

物権と債権にはさまざまな種類がありますが、さしあたってそれぞれの代表例を頭に描いてください。物権については所有権、債権については人にお金を貸した場合にそれを返せといえる貸金債権を考えるとよいでしょう。

 物権と債権の区別のポイントは、物権は「物」に対する権利であるのに対し、債権は「人」に対する権利という点にあります。この区別は、物権の「物」という文字から連想できるので、簡単でしょう。

 そして、さらに、こうした違いから、物権と債権は、それが特定の人だけに主張できるものかどうかという違いに結びつきます。

 たとえば、債権の場合、Aさんが一〇〇万円の貸金債権を有していたとしても、それを請求できる相手は借主(債務者)Bだけです。そこら辺を歩いている人をつかまえて、「私は一〇〇万円の債権を持っているから、一〇〇万円よこせ」と主張することはできませんね。

 これに対し、物権の場合は、権利主張できる相手方が特定の人に限られません。

たとえば、Aさんが土地の所有権を有している場合に、その土地を無断で通行しようとしている人が現れれば、それがだれであれ「私の所有する土地を勝手に通行するな」と主張することができます。


7 物権の種類
 物権には所有権のほか、いくつかの種類がありますが、それらは〓用益ようえき〓物権、担保物権、および占有権に分類されます。

 「用益」とは、使「用」収「益」を略した言葉です。すなわち、用益物権とは、目的物を使用し、一定の収益を得ることを目的とする物権をいいます。

法律上認められているのは、地上権(他人の土地を利用する権利)、〓地役ちえき〓権(隣地等を利用して自分の土地を便利にする権利)、〓永小作えいこさく〓権(他人の土地を借りて耕作する権利)、〓入会いりあい〓権(山野から共同で採草などをする権利)の四つです。

この四つの権利はすべて土地を利用する権利です。建物や動産を利用する用益物権は存在しません。


 これに対し、担保物権とは、債権を担保するために目的物の価値を把握する物権をいいます。

民法の条文で認められているのは、〓留置りゆうち〓権(他人の物を留置することによって債権の弁済を促す権利)、〓先取さきどり〓特権(法律が定める特殊な債権を担保するために一定の財産に対し自動的に生じる権利)、〓質しち〓権(質物を留置することにより債権の弁済を促すとともに弁済がない場合は質物をお金に換えて弁済を受ける権利)、抵当権(債権の弁済がない場合には目的物である不動産をお金に換えて弁済を受けることができる権利)の四つです。

 担保物権は、債権を担保するという目的を有する権利なので、必ず債権とセットで存在する権利である点に特徴があります。

 次に、占有権とは、物を事実上支配する権利をいいます。占有権は、物を支配しているという事実そのものから認められるので、仮にそれを根拠づける所有権などがなくても、存在することになります。したがって、他人の物を盗んだ泥棒も、その盗んだ物に対し占有権を有していることになります。

 泥棒に権利など認める必要はないと思うかもしれませんね。たしかに、泥棒を保護してやる必要はないでしょう。

しかし、ある財産を所持している人がいた場合に、真の所有者はだれかということや、どういう事情で所持しているかということなどは、目に見えません。現実問題として、その物を所持している人が所有者である可能性が高いことからしても、とりあえず物を所持しているという事実状態を保護すべきだと考えたのです。

 また、Aさんが自分のカメラをBさんに売却し、代金を受領したが、まだカメラを引き渡していないという事例を考えてみてください。この場合、法律的にはカメラの所有権はすでにBに移転していると考えられていますが、まだ引き渡していないので、占有権はAに残っています。

 ところが、もし占有権という権利が存在しなかったら、所有権がBに移転した時点で、Aの権利はゼロになります。そうすると、Aからカメラをだれかが奪おうとしても、Aの権利は侵害されていないことになります。これはまずいですね。やっぱり占有権はあったほうがよさそうです。

 なお、占有権が認められるためには、物を事実上支配している必要がありますが、これは実際に目的物を手に持っている状態だけを指すのではありません。手に触れていなくても、自分の部屋の中にある物などは、すべて事実上の支配が及んでいるといえます。外出中でもかまいません。

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