民法2章5 契約の成立他
11 契約の成立
契約はどのようにして成立するのでしょうか。この問題は、民法の基礎知識のなかでも特に重要な知識です。
契約は、当事者間の意思表示の合致によって成立します。これをさらに分解すると、一方からの申込みと相手方の承諾という二つの意思表示が一致することによって、契約が成立することになります。
たとえば、Aさんが自分の土地を売ろうと思って、Bさんに対し「この土地を二〇〇〇万円で買いませんか」と話をもちかけ、これに対してBさんが「わかりました。その土地を二〇〇〇万円で買いましょう」と返事をすれば、土地の売買契約が成立するのです。
最初に話をもちかけた意思表示が「申込み」で、それに対する返事が「承諾」です。したがって、売主・買主どちらの意思表示が「申込み」になるかは、契約によって異なります。
前の例とは逆に、買主Bさんのほうから先に「その土地を二〇〇〇万円で売ってくれませんか」と話をもちかければ、Bさんの意思表示が「申込み」になり、これに対するAさんの「わかりました。二〇〇〇万円で売りましょう」という返事が「承諾」になります。
.契約が成立するためには、申込みと承諾の意思表示が合致しなければなりません。したがって、Aさんからの「この土地を二〇〇〇万円で買いませんか」という申込みに対し、Bさんが「一八〇〇万円なら買いましょう」という返事をした場合、値段の点で意思表示の合致がないので、契約は成立しません。
もっとも、Bさんの返事は、最初のAさんからの申込みを断ったうえで、新たに買受けの申込みをしたと考えることができます。それゆえ、さらにAさんが「わかりました。一八〇〇万円で売りましょう」と承諾すれば、申込みと承諾の意思表示が合致したことになるので、代金一八〇〇万円とする売買契約が成立します。
申込みと承諾の意思表示の合致によって契約が成立するという図式は、売買契約に限らず、すべての契約に当てはまります。
たとえば、一方的に片方だけが得をする贈与契約でも、この仕組みは変わりません。なんとなく贈与する側が「これをあげる」といいさえすれば、贈与契約が成立するようなイメージがあるかもしれませんね。しかし、それは贈与を受ける相手方は得するだけなので、承諾するのが普通であり、売買などに比べて贈与の承諾の意思表示の実質的重要性が低いからそう思うだけなのです。
贈与も契約である以上、申込みと承諾の意思表示が合致しない限り成立しません。たとえば、AさんがBさんに、「私の腕時計をあなたにただであげよう」と話をもちかけ、Bさんが「はい、ぜひ、その腕時計をください」と返事をしないと、贈与契約は成立しないのです。
なお、申込み・承諾の意思表示は、必ずしも言葉を発する方法によって行われるとは限りません。たとえば、駅の売店で新聞を一部抜き取って一〇〇円玉を差し出したら、新聞の売買契約について申込みの意思表示をしたことになり、店員がその一〇〇円玉を受け取れば、承諾の意思表示をしたことになります。
12 契約書の作成
たとえば、ボールペン一本を購入するのにいちいち契約書を作成することはありませんが、不動産売買など高額な契約をする場合は、一般的に契約書を作成します。
契約書を作成するケースでは、契約書を作成したとき、あるいは契約書に名前を書いてハンコを押したときに契約が成立すると考えている人が多いようです。「まだ契約書にハンコを押してないから大丈夫だ」などという発言を聞いたことがありませんか。
しかし、法律的には、右の発言は間違っています。前述のとおり、当事者の意思表示が合致すれば契約は成立します。契約書を作成していなくても、口約束さえあれば、立派に契約は成立しているのです。たとえ、土地を一億円で売買する契約でも、法律的には口約束だけで契約が成立します。
それでは、なんのために契約書を作成しているかというと、契約したという証拠を残すためです。口約束だけだと、「あのとき太郎さんは土地を売るといった」と主張しても、相手方が「そんな覚えはない」といってとぼけると、なかなか証明できません(衆人環視の中で契約した場合などは、意思表示の存在を証言してくれる証人がたくさんいるので、証明できますが)。そこで、互いの意思表示があったことを証明するための資料として、契約書を作成しておくのです。
契約書に押すハンコは、証拠としての信用度をアップさせるためのものです。本人のハンコが押してあれば、偽造などではない本物の契約書である可能性が高くなるからです。
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