はじめて行政書士 民法2章10 「代理」1 植杉伸介
「はじめて行政書士 民法」
植杉伸介著
住宅新報社刊
定価1995円(本体1900円)
19 代 理
① 代理の仕組み
自分の契約は自分で行うのが原則です。しかし、すべての契約を自分で行わなければならないとすると、たくさんの取引をして商売を広げようとしても、人間の身体は一つだけなので、限界があります。
また、未成年者や成年被後見人のように、自分一人では契約できない人もいます。そこで、本人に代わって契約などをしてくれる存在として、代理人というものが必要となってくるのです。
●代理の種類
代理には二種類あります。本人が自分の意思で代理を頼む場合を「任意代理」といい、未成年者・成年被後見人の保護者のように、代理人を置くことが法律で決められている場合を「法定代理」といいます。
●代理行為と代理の効果
代理行為は、代理人が行います。契約の意思表示をするのは代理人ですし、契約書を作成してハンコを押す場合も、本人の印鑑ではなく、代理人のものを押します。
しかし、契約の効果は、直接本人に帰属します(民法九九条)。いったん代理人に帰属するということはありません。本人が代理を頼まず、自分で契約した場合と同じ結果なのです。
●顕名(けんめい)
代理人が代理行為をするときには、「Aの代理人B」というように、本人の名前を明らかにすること(これを法律用語で「顕名」といいます)が必要です。代理の効果は本人に直接帰属するので、本人のための代理行為であることを相手方にわかるようにするためです。
●代理人の能力
任意代理の場合、だれでも代理人にすることができます。あえて未成年者や成年被後見人などの制限行為能力者を代理人とすることも可能です(民法一〇二条)。これは、制限行為能力者制度と代理制度の基本的な理解から導かれる結論です。
代理行為の効果は直接本人に帰属するので、制限行為能力者が代理行為を行っても、代理人である制限行為能力者は不利益を受けることはありません。損をするのは本人です。制限行為能力者の保護という目的に反することはないのです。
そして、本人が、あえて制限行為能力者を代理人にすることを否定する必要はありません。したがって、完全に有効な代理行為となり、制限行為能力を理由とする取消しはできないことになります。
●自己契約・双方代理の禁止
正当な代理人であっても、自己契約と双方代理と呼ばれる行為をすることは禁じられています(民法一〇八条)。自己契約とは、代理人が契約の相手方になってしまうことをいいます。また、双方代理とは、代理人が相手方の代理人も兼ねることです。
代理人は、本人の利益のために行動すべき存在です。ところが、自己契約や双方代理を行うと、本人の利益と衝突してしまうおそれがあります。そこで、本人の利益が害されないように、自己契約・双方代理を禁止したのです。
しかし、本人の利益のために禁止したのですから、本人が同意したのなら、これを認めてもよいことになります。また、単なる債務の履行のように、行為の内容からして、本人に不利益が生じるおそれがないものも禁止する必要はないでしょう。
たとえば、すでに売買契約が締結されており、その履行として所有権移転登記をする場合などです。
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