はじめて行政書士 民法2章10 「代理」2 植杉伸介
「はじめて行政書士 民法」
植杉伸介著
住宅新報社刊
定価1995円(本体1900円)
② 無権代理
代理行為が有効に行われ、代理の効果が本人に帰属するためには、代理人が代理権を有する必要があります。
ところが、現実の世の中では、代理権のない者が代理人として契約をしてしまうことがあります。これを無権代理といいます。このような行為が有効になったのでは、本人が困りますから、無権代理の効果は、本人に帰属しません(民法一一三条一項)。
しかし、無権代理の効果を有効に本人に帰属させたい場合もあります。たとえば、本人から代理権を与えられていないが、本人のためだと思って、いわばお節介で勝手に代理行為を行ったような場合です。
そこで、本人は、無権代理行為を追認することができ、追認したときは、契約の時にさかのぼって有効な代理行為となります(民法一一三条二項)。
無権代理によって被害を受ける可能性があるのは、本人と相手方です。まず、無権代理は原則として無効だが、追認することもできるというかたちで、本人の保護は十分図られています。
しかし、本人の保護だけでは不公平です。相手方の保護についても考えてあげるべきです。相手方の立場も考えるという発想は、法律の世界において非常に重要です。常に登場人物それぞれの立場で考えるように心がけておきましょう。
さて、それでは無権代理の相手方の保護について、ひととおり見ておきましょう。
●催告権
追認するかどうかは本人の自由なので、相手方は非常に不安定な立場に立たされます。そこで、本人側の態度決定を迫る手段として、相手方に催告権が認められています。
相手方は、本人に対して、追認するかどうかの確答を求めることができ、催告に対して、一定期間内に確答がないときは、追認を拒絶したものとみなされます(民法一一四条)。
●取消権
無権代理について善意の相手方は、本人が追認する前に先手を打って、無権代理行為を取り消すことができます(民法一一五条)。本人からの追認の余地をなくして、無効に確定させてしまうわけです。これではっきり決着がつくことになるので、相手方の立場が不安定でなくなります。
③ 無権代理人への責任追及
無権代理についてもっとも責任があるのは、無権代理人です。そこで、無権代理について善意無過失の相手方から無権代理人に対して、責任追及をすることができます。具体的には、無権代理人に対して、契約の履行、または損害賠償の請求をすることができます(民法一一七条)。
④表見(ひようけん)代理
表見代理とは、無権代理であっても、表面上、正当な代理権があるように見える場合に、有効な代理行為として扱う制度をいいます。
これは相手方を保護するための制度ですので、表見代理が成立するには、保護に値するだけの相手方の事情が必要です。具体的には、無権代理であることについて、相手方が善意無過失でなければなりません。
また、表見代理が成立すると、本人に不利益が生じます。それゆえ、表見代理の成立には、本人側に一定の責任があることも必要です。
たとえば、本当は代理権を与えていないのに、本人が委任状を発行しているような場合です。本人は、委任状を発行したことによって、相手方が代理権の存在を信じる原因をつくり出したという責任があります。
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