住宅新報社・季刊「不動産受験新報」2010年冬号
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問題21 以下の記述のうち,地方自治法に規定されている内容として,誤っているものはどれか。

1 地方自治法に定める「自治事務」とは,地方公共団体が処理する事務のうち,法定受託事務以外のものをいう。

2 地方公共団体は,その事務を処理するに当たっては,住民の福祉の増進に努めるとともに,最少の経費で最大の効果を挙げるようにしなければならない。

3 地方公共団体は,常にその組織及び運営の合理化に努めるとともに,他の地方公共団体に協力を求めてその規模の適正化を図らなければならない。

4 市町村が当該都道府県の条例に違反して事務を処理した場合には,その市町村の行為は無効とされる。

5 市町村は,その事務を処理するに当たり,当該都道府県知事の認可を得て,総合的かつ計画的な行政の運営を図るための基本構想を定めなければならない。

 

問題20 権限の不行使と国家賠償責任に関する次の記述のうち,最高裁判所の判例に照らし,誤っているものはどれか。

1 宅地建物取引業法に基づき免許を更新された業者が不正行為により個々の取引関係者に対して被害を負わせたとしても,当該免許制度は業者の人格・資質等を一般的に保証するものとはにわかに解しがたく,免許権者が更新を拒否しなかったことは,被害を受けた者との関係において直ちに国家賠償法1条1項の適用上違法となるものではない。

2 医薬品の副作用による被害が発生した場合であっても,監督権者が当該被害の発生を防止するために監督権限を行使しなかった不作為は,不作為当時の医学的・薬学的知見の下で当該医薬品の有用性が否定されるまでに至っていない場合には,被害を受けた者との関係において国家賠償法1条1項の適用上違法となるものではない。

3 国または公共団体の公務員による規制権限の不行使は,その権限を定めた法令の趣旨,目的や,その権限の性質等に照らし,具体的事情の下において,その不行使が許容される限度を逸脱して著しく合理性を欠くと認められるときは,その不行使により被害を受けた者との関係において国家賠償法1条1項の適用上違法となる。

4 鉱山労働者を保護するための省令が後に科学的知見に適合しない不十分な内容となったとしても,制定当時の科学的知見に従った適切なものである場合には,省令を改正しないことが,被害を受けた者との関係において国家賠償法1条1項の適用上違法となるものではない。

5 犯罪被害者が公訴の提起によって受ける利益は,公益上の見地に立って行われる公訴の提起によって反射的にもたらされる事実上の利益にすぎず,法律上保護された利益ではないので,検察官の不起訴処分は,犯罪被害者との関係で国家賠償法1条1項の適用上違法となるものではない。

問題19 国家賠償法2条にいう公の営造物に関する次の記述のうち,妥当なものはどれか。

1 公の営造物とは,国や公共団体が所有するすべての物的施設をいうわけではなく,公の用に供しているものに限られる。

2 公の営造物の設置又は管理の瑕疵とは,公の営造物が通常有すべき安全性を欠いていることをいうが,賠償責任が成立するのは,当該安全性の欠如について過失があった場合に限られる。

3 河川・海浜等の自然公物は公の営造物に当たらないが,これに付随する堤防や防波堤は人工公物であり公の営造物に当たるので,賠償責任が成立するのは,堤防等に起因する損害の場合に限られる。

4 公の営造物の管理者と費用負担者とが異なる場合,被害者に対して損害賠償責任を負うのは,費用負担者に限られる。

5 公の営造物の設置または管理に起因する損害について賠償を請求することができるのは,その利用者に限られる。

問題18 行政事件訴訟法の定める当事者訴訟に関する次の記述のうち,正しいものはどれか。

1 当事者間の法律関係を確認しまたは形成する処分に関する訴訟で法令の規定によりその法律関係の当事者の一方を被告とするものは,当事者訴訟である。

2 地方自治法の定める住民訴訟のうち,当該執行機関または職員に対する怠る事実の違法確認請求は,当事者訴訟である。

3 国または公共団体の機関相互間における権限の存否に関する紛争についての訴訟は,公法上の法律関係に関するものであるから,当事者訴訟である。

4 行政庁が一定の処分をすべきであるにかかわらずこれがされないとき,行政庁がその処分をすべき旨を命ずることを求める訴訟は,当事者訴訟である。

5 公職選挙法に定める選挙無効訴訟は,国民の選挙権に関する訴訟であるから,当事者訴訟である。

問題17 行政事件訴訟法に定められた仮の救済制度に関する次の記述のうち,正しいものはどれか。

1 行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為については,行政事件訴訟法の定める執行停止,仮の義務付けおよび仮の差止めのほか,民事保全法に規定する仮処分を行うことができる。

2 仮の義務付けおよび仮の差止めは,それぞれ義務付け訴訟ないし差止め訴訟を提起しなければ申し立てることができないが,執行停止については,取消訴訟または無効等確認訴訟を提起しなくても,単独でこれを申し立てることができる。

3 申請に対する拒否処分に対して執行停止を申し立て,それが認められた場合,当該申請が認められたのと同じ状態をもたらすことになるので,その限りにおいて当該処分について仮の義務付けが認められたのと変わりがない。

4 執行停止は,本案について理由がないとみえるときはすることができないのに対して,仮の義務付けおよび仮の差止めは,本案について理由があるとみえるときでなければすることができない。

5 処分の執行停止は,当該処分の相手方のほか,一定の第三者も申し立てることができるが,処分の仮の義務付けおよび仮の差止めは,当該処分の相手方に限り申し立てることができる。

 

問題16 行政事件訴訟法に関する次のア~オの記述のうち,正しいものはいくつあるか。


ア 国の行政庁がした処分に関する取消訴訟の被告は,国である。


イ 国の行政庁が行うべき処分に関する不作為の違法確認訴訟の被告は,当該行政庁である。

ウ 国の行政庁が行うべき処分に関する義務付け訴訟の被告は,当該行政庁である。

エ 国の行政庁が行おうとしている処分に関する差止め訴訟の被告は,当該行政庁である。

オ 国又は地方公共団体に所属しない行政庁がした処分に関する取消訴訟の被告は,当該行政庁である。

1 一つ  2 二つ  3 三つ     4 四つ  5 五つ


 

問題15 次の記述のうち,行政不服審査法に関する問題点として,次の解説文中の空欄Aに挿入すべきでないものはどれか。

 1962(昭和37)年制定の現行行政不服審査法は,それ以前の訴願法と比べれば,権利救済制度として大きく改善されたが,現在では,Aという問題点も指摘されている。また,1993(平成5)年の行政手続法の制定や2004(平成16)年の行政事件訴訟法改正などとの関係で,見直しが必要だと考えられるようになった。このため,行政不服審査法の抜本的な改正が検討されることとなったのである。

1 行政不服審査法によらない不服申立ての仕組みが多数あるため,一般国民にとってわかりづらく,利用しづらい制度になっている

2 取消訴訟を提起するためには不服申立てに対する裁決または決定を経ることが原則とされているため,権利救済の途が狭められている

3 審理にかなり時間を要しているのが実態であるため,簡易迅速という特色が生かされていない

4 行政権の自己審査であるため,審理手続の運用において公平さに欠けるところが多い

5 不服申立て期間が短いため,権利救済の機会が狭められている

 

問題14 処分についての審査請求に対する裁決に関する次の記述のうち,妥当なものはどれか。


1 裁決には理由を附すこととされているが,これが附されていなくとも,裁決が違法となることはない。

2 裁決においては,違法を理由として処分を取消すことはできるが,不当を理由として取消すことはできない。

3 裁決は,書面ですることが原則であるが,緊急を要する場合は,口頭ですることも許される。

4 裁決に対して不服がある場合でも,これに対して行政事件訴訟法による取消訴訟を提起することはできない。

5 裁決においては,処分を変更することが許される場合でも,これを審査請求人の不利益に変更することはできない。

問題13 次の手続のうち,私人間紛争の裁定的性格を有する行政審判に該当するものの組合せはどれか。

ア 海技士等に対する懲戒処分を行うための海難審判所における審判・裁決の手続

イ 不当労働行為に係る救済命令のための労働委員会における審問・命令の手続

ウ 免許取消しのために実施される電波監理審議会における意見聴取手続

エ 特許無効審判が請求された場合に行われる特許庁における審判・審決の手続

オ 暴力主義的破壊活動を行う団体に対する規制処分のための公安審査委員会における審査手続

1 ア・イ  2 イ・ウ  3 イ・エ    4 ウ・エ  5 エ・オ

 

問題12 行政手続法1条が定める同法の目的に関する次の記述のうち,正しいものはどれか。

1 行政手続法は,政府の諸活動について国民に説明する責務が全うされるようにすることを主な目的とする。

2 行政手続法は,行政運営における公正の確保と透明性の向上を図り,もって国民の権利利益の保護に資することを目的とする。

3 行政手続法は,簡易迅速な手続による国民の権利利益の救済を図るとともに,行政の適正な運営を確保することを目的とする。

4 行政手続法は,国民の的確な理解と批判の下にある公正で民主的な行政の推進に資することを目的とする。

5 行政手続法は,国の行政事務の能率的な遂行のために必要な組織を整えることによって,公務の民主的かつ能率的な運営を保障することを目的とする。

 

問題11 行政手続法が定める不利益処分に関する次の記述のうち,正しいものはどれか。

1 弁明の機会の付与における弁明は,行政庁が書面ですることを認めたときを除き,指定された日時及び場所において,口頭で行うものとされている。

2 許認可等を取り消す不利益処分をしようとするときは,聴聞を行わなければならないとされているが,ここにいう許認可等を取り消す不利益処分には,行政法学上の取消しと撤回の双方が含まれる。

3 行政指導に従わない場合に行われる当該事実の公表は,行政手続法上,不利益処分とされ,それを行う場合は,弁明の機会の付与を行わなければならないと規定されている。

4 聴聞において,当事者が利害関係者の参加を求めたにもかかわらず,行政庁がこれを不許可とした場合には,行政不服審査法に基づく不服申立てをすることができる。

5 申請に対して拒否処分を行う場合は,行政手続法上,不利益処分に該当するので,弁明の機会の付与を行わなければならない。

 

問題10 行政強制に関する次の記述のうち,正しいものはどれか。

1 法律の委任による条例に基づき行政庁により命ぜられた行為については,行政代執行法は適用されない。

2 義務の不履行があった場合,直接に義務者の身体や財産に実力を加えることを即時強制という。

3 執行罰は,制裁的な要素を有するため,同一の義務違反に対して複数回にわたり処することはできない。

4 強制徴収手続は,租税債務の不履行のみならず,法律の定めがある場合には,その他の金銭債権の徴収についても実施される。

5 行政上の即時強制については,行政代執行法にその手続等に関する通則的な規定が置かれている。

 

問題9 行政機関に関する次の記述のうち,正しいものはいくつあるか。

ア 行政庁とは,行政主体の意思を決定し,これを外部に表示する権限を有する行政機関をいう。

イ 国家行政組織法には行政庁は独任制でなければならないとの規定があり,わが国には合議制の行政庁は存在しない。

ウ 上級行政庁は下級行政庁に対して監視権や取消権などの指揮監督権を有するが,訓令権については認められていない。

エ 行政庁がその権限の一部を他の行政機関に委任した場合であっても,権限の所在自体は,委任した行政庁から受任機関には移らない。

オ 法定の事実の発生に基づいて,法律上当然に行政機関の間に代理関係の生ずる場合を,授権代理という。

1 一つ  2 二つ  3 三つ
4 四つ  5 五つ

 

問題8 行政計画に関する次の記述のうち,妥当なものはどれか。
1 土地利用を制限する用途地域などの都市計画の決定についても,侵害留保説によれば法律の根拠が必要である。

2 広範な計画裁量については裁判所による十分な統制を期待することができないため,計画の策定は,行政手続法に基づく意見公募手続の対象となっている。

3 計画策定権者に広範な裁量が認められるのが行政計画の特徴であるので,裁判所による計画裁量の統制は,重大な事実誤認の有無の審査に限られる。

4 都市計画法上の土地利用制限は,当然に受忍すべきとはいえない特別の犠牲であるから,損失補償が一般的に認められている。

5 多数の利害関係者に不利益をもたらしうる拘束的な計画については,行政事件訴訟法において,それを争うための特別の訴訟類型が法定されている。

 

問題7 衆議院と参議院の議決に一致がみられない状況において,クローズアップされてくるのが両院協議会の存在である。日本国憲法の定めによると,両院協議会を必ずしも開かなくてもよいとされている場合は,次のうちどれか。

1 衆議院が先議した予算について参議院が異なった議決を行った場合
2 内閣総理大臣の指名について衆参両院が異なった議決を行った場合
3 衆議院で可決された法律案を参議院が否決した場合
4 衆議院が承認した条約を参議院が承認しない場合
5 参議院が承認した条約を衆議院が承認しない場合

問題6 次の文章は,ある最高裁判所判決の一節である。この文章の趣旨と適合しないものはどれか。

〔憲法23〕条の学問の自由は,学問的研究の自由とその研究結果の発表の自由とを含むものであって,同条が学問の自由はこれを保障すると規定したのは,一面において,広くすべての国民に対してそれらの自由を保障するとともに,他面において,大学が学術の中心として深く真理を探究することを本質とすることにかんがみて,特に大学におけるそれらの自由を保障することを趣旨としたものである。

教育ないし教授の自由は,学問の自由と密接な関係を有するけれども,必ずしもこれに含まれるものではない。

しかし,大学については,憲法の右の趣旨と,これに沿って学校教育法52条*が「大学は,学術の中心として,広く知識を授けるとともに,深く専門の学芸を教授研究」することを目的とするとしていることとに基づいて,大学において教授その他の研究者がその専門の研究の結果を教授する自由は,これを保障されると解するのを相当とする。

すなわち,教授その他の研究者は,その研究の結果を大学の講義または演習において教授する自由を保障されるのである。そして,以上の自由は,すべて公共の福祉による制限を免れるものではないが,大学における自由は,右のような大学の本質に基づいて,一般の場合よりもある程度で広く認められると解される。
(最大判昭和38年5月22日刑集17巻4号370頁以下)

1 大学における学生の集会は,大学の公認した学内団体であるとか,大学の許可した学内集会であるとかいうことのみによって,特別な自由と自治を享有するものではない。

2 大学の自治は,とくに大学の教授その他の研究者の人事に関して認められ,大学の自主的判断に基づいて教授その他の研究者が選任される。

3 遺伝子技術や医療技術など最新の科学技術に関わる研究の法的規制は,それが大学で行われる研究に関わるものであっても,一定の要件の下で許されうる。

4 学問の自由は,広くすべての国民に対して保障されるものであるため,研究費の配分に当たって大学の研究者を優遇することは許されない。

5 大学の自治は,その施設と学生の管理についてもある程度で保障され,大学に自主的な秩序維持の権能が認められている。

(注)*当時。現在の同法83条。

問題5 精神的自由権に関する次の記述のうち,判例の趣旨に照らし,正しいものはどれか。

1 憲法19条の「思想及び良心の自由」は,「信教の自由」(20条1項)の保障対象を宗教以外の世俗的な世界観・人生観等にまで拡大したものであるため,信教の自由の場合と同様に,固有の組織と教義体系を持つ思想・世界観のみが保護される。

2 憲法19条の「思想及び良心の自由」は,国民がいかなる思想を抱いているかについて国家権力が開示を強制することを禁止するものであるため,謝罪広告の強制は,それが事態の真相を告白し陳謝の意を表するに止まる程度であっても許されない。

3 憲法20条1項の「信教の自由」は,公認された宗教に属さない宗教的少数派であった人たちにも,多数派と同等の法的保護を与えるために導入されたものであるため,すべての宗教に平等に適用される法律は違憲となることはない。

4 憲法20条3項は,国が宗教教育のように自ら特定宗教を宣伝する活動を行うことを禁止する趣旨であるため,宗教団体の行う宗教上の祭祀に際して国が公金を支出することが同項に違反することはない。

5 憲法20条3項は,国と宗教とのかかわり合いが,その目的と効果に照らして相当な限度を超えた場合にこれを禁止する趣旨であるため,国公立学校で真摯な宗教的理由から体育実技を履修できない学生に対して代替措置を認めることを一切禁じるものではない。

問題4 次の手紙の文中に示された疑問をうけて,これまで類似の規制について最高裁判所が示した判断を説明するア~オの記述のうち,妥当なものの組合せはどれか。

 前略 大変ご無沙汰しております。
お取り込み中申し訳ありませんが,私の進路選択について,折り入って貴兄にご相談したいことができました。演劇三昧だった学生生活を切り上げて,行政書士をめざして勉強を始めたのですが,最近,自らの職業選択が抱える不条理に,少々悩んでおります。

行政書士になりたい私が,試験に合格しなければ行政書士になれない,というのは,職業選択の自由という,私のかけがえのない人権の侵害にはあたらないのでしょうか。他方で,もし行政書士になれたとしても,行政書士法1条の2で行政書士の独占業務とされている書類の作成に関する限り,他社の営業の自由を排除しているわけですから,私は,かけがえのない人権であるはずの,他人の職業選択の自由を侵害して生きることになるのでしょうか......。

拝復 お悩みのご様子ですね。行政書士業を一定の資格要件を具備する者に限定する以上,それ以外の者の開業は禁止されるのですから,あなたのご疑問にはあたっているところもあります。問題はそうした制限を正当化できるかどうかで,この点は意見が分かれます。ご参考までに,最高裁判所がこれまでに示した判断についてだけ申しますと,

ア 医薬品の供給を資格制にすることについては,重要な公共の福祉のために必要かつ合理的な措置ではないとして,違憲判決が出ていますよ。

イ 小売市場の開設経営を都道府県知事の許可にかからしめる法律については,中小企業保護を理由として,合憲判決が出ていましたよね。

ウ 司法書士の業務独占については,登記制度が社会生活上の利益に重大な影響を及ぼすものであることなどを指摘して,合憲判決が出ています。

エ 公衆浴場を開業する場合の適正配置規制については,健全で安定した浴場経営による国民の保健福祉の維持を理由として,合憲とされていますね。

オ 酒販免許制については,職業活動の内容や態様を規制する点で,許可制よりも厳しい規制であるため,適用違憲の判決が下された例があります。

1 ア・イ・ウ  2 ア・イ・エ  3 イ・ウ・エ  4 イ・ウ・オ  5 ウ・エ・オ

一般知識等

 本年度の一般知識は,昨年度に比べおのおのの問題の難易度はやさしかったといえる。ただし,社会系が従来の6問から7問と1問増え,逆に個人情報保護・情報通信が5問から4問と1問減ったのが,大きな特徴であった。

 もっとも,この出題数の変化が今年だけなのか,今後も続くのかは慎重に見極める必要があるが,社会系に重点が置かれたと考えるよりも,従来の「政治・経済・社会」という枠組みではなく,一般知識が「行政書士業務との関連」であるという基本的な視点で捉え直すことのほうが,より重要と考えられる。

 一般知識の14問の出題の内訳を整理すると,「政治・3問」「経済・1問」「社会・3問」の計7問。「個人情報保護・情報通信」は「個人情報保護・1問」「情報通信・3問」の計4問。「文章理解」は例年どおり3問の出題であった。社会系の7問,個人情報保護・情報通信が4問といった出題数の変化は,おのおのの問題が昨年よりもやさしかった反面,より幅広い知識が問われたといえる。

 したがって,本年度の一般知識では,例年のような難問はなく,問題48(行政改革),問題49(教育制度),問題59(要旨把握)以外の11問は十分正解できた問題であったといえる。一般知識の足切り点に,どれだけ上乗せできたかが法令との合計での最終的な合否に関係してくるといえるのではないだろうか。

 本年度の傾向としては,出題科目の増減よりも,教育制度や生活保護,インターネット利用時の青少年との関連など,現在の社会全体の流れや問題点といった時事的な要素と,行政書士業務との関連を意識していれば十分対応できる内容であった。そうした意味では,文章理解の「アスペルガー」や「土木」についての内容も,示唆に富んだ文章であったと考えることもできるのではないだろうか。

地方自治法等

 「行政組織法」の分野からの出題は,地方自治法から4問,国家公務員法から1問,国家行政組織法および内閣府設置法から1問の計6問であった。

 地方自治法については,地方自治の諸原則等に係る地方自治法の条文内容,監査制度,一部事務組合および住民監査請求に関する問題が出題されたが,いずれも,条文知識さえあれば容易に正解を導くことのできる問題であったと思われる。

 また,国家公務員法や内閣府設置法など,従来の出題範囲とは異なる法律からの出題もあったが,いずれも,細部にわたる条文知識や応用力が問われるものではなく,行政組織法に関する基礎的な知識と社会常識の範囲内で十分に正答が可能なものであったと思われる。

 いずれにせよ,今年度の「行政組織法」の分野からの出題は,難易度が低く設定されており,とりこぼすことのないようにしておきたい分野であるといえる。


民 法

 民法の択一問題の出題数は9問であり(問題27から問題35まで),そのうちの7問(問題28から問題33までと,問題35)は,選択肢の組合せ問題である。また,判例からの出題が非常に多く,読むのが嫌になるような長文の問題(問題28)や,最高裁判所の判決文の一節をテーマにした問題(問題33)もあった。

 そして,比較的短い文章の問題であっても,内容的に細かい点を出題しているために,難解な問題となっているものもあった。たとえば,根抵当権に関する出題(問題29)や,連帯債務の免除に関する出題(問題31)である。

 また,民法全体の体系的理解が必要な複合問題が多いのも,特徴の1つである。たとえば,問題27では,代理に関する出題の中で,親権者と子の利益相反行為についても出題している。
 問題30は,催告をテーマにして,さまざまな分野から出題しており,問題32も,費用の償還をテーマにして,さまざまな分野から出題している。

 不法行為に関する出題(問題34)においても,さまざまな種類の不法行為について出題している。
 全体的には,事例分析力や体系的理解力を必要とする難問が多いといえるであろう。

☆全体講評

 問題の形式や科目ごとの出題数について大きな変化はなかった。ただし,現行の試験形式になった平成18年度以降,地方自治法の択一式問題の出題数はずっと5問であったが,今年度は4問に減少するという変化は見られた。

 問題の難易度については,全体的に見ると昨年度とあまり変わらないように思われる。筆者の主観的な判断ではあるが,昨年と比べてBランク(やや難しいレベル)の問題数が増えているが,その代わりDランク(最もやさしいレベル)の問題数も増えており,全体的な難易度のバランスはとれているからである。

 

☆基礎法学

 問題1は,各種の法規の概念や相互の関係等に関する問題であるが,記述内容自体難しくなかったし,正誤の判断がついた記述を手がかりに選択肢を絞り込んでいけば,容易に解答できたはずである。
 問題2は,いわゆる「法テラス」の業務について,かなり細かい点まで知っていなければ解答できない問題であり,相当な難問である。本問は,落としてもよい問題であろう。

5 不法行為
 不法行為に関しては,使用者責任の問題を解いてみましょう。
問題5
 ある事業のために他人を使用する者は,被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし,使用者があることを証明したときは,その責任を免れる。どのようなことを証明したときか。40字程度で記述しなさい。


 解説
(1)使用者責任とは
 たとえば,タクシー会社A交通の運転手Bの過失により歩行者Cを負傷させたとしましょう。Cは,Bに対して不法行為(民法709条)に基づく損害賠償請求をすることができますが,Bが無資力だったときは,事実上,損害賠償請求は空振りに終わります。しかし,それでは被害者Cの救済が図れません。

 そこで,タクシー会社に損害を賠償してもらおうというのが,「使用者責任」です。タクシー会社は,被用者Bの行為により利益を得ているので,Bの行為による損失もタクシー会社A交通に償ってもらうのが公平だという「報償責任」の考え方です。

(2)使用者責任の要件
ア 使用関係の存在
 使用者責任は「ある事業のために他人を使用する者」でなければなりませんので,使用者・被用者間に雇用関係が必要といえます。しかし判例は,事実上の指揮監督関係があれば足り,雇用関係は不可欠の要素ではないとしています。暴力団に関する判例で,次のようなものもあります。

 「階層的に構成されている暴力団が,その威力をその暴力団員に利用させることなどを実質上の目的とし,下部組織の構成員に対しても同暴力団の威力を利用して資金獲得活動をすることを容認していたなど判示の事情の下では,同暴力団の最上位の組長と下部組織の構成員との間に同暴力団の威力を利用しての資金獲得活動に係る事業について民法715条1項所定の使用者と被用者の関係が成立している」(最判平16.11.12)。

イ 「事業の執行につき」とは
 使用者責任は,「事業の執行につき」被用者が不法行為をした場合でなければなりません。判例は「事業の執行につき」を広くとらえ「『事業の執行につき』というのは,必ずしも被用者がその担当する業務を適正に執行する場合だけを指すのではなく,広く被用者の行為の外形を捉えて客観的に観察したとき,使用者の事業の態様,規模等からしてそれが被用者の職務行為の範囲内に属するものと認められる場合で足りるものと解すべきである」(最判昭39.2.4)としています(外形理論)。

4 保証債務
 次に,債権法の分野から保証に関する出題です。

問題4
BがAに対して負担する債務についてCが保証人となった。Aは,Bに対して再三弁済の請求をしたが,Bは言を左右にして弁済をしてくれない。そこで,Aは保証人Cに対して,債務の弁済を請求してきた。Cは,債務者Bの財産につき執行するよう抗弁したいが,それはどのような要件のもとに可能か。40字程度で記述しなさい。

 解説
(1)保証債務の性質
 保証人は,主たる債務者がその債務を履行しないときに,その履行をする責任を負う(民法446条1項)。
 保証債務は人的担保とされ,主たる債務の弁済を担保する機能をもつものです。そこで,保証債務は,以下のような性質があります。

ア 付従性
 保証債務は,主たる債務が成立しなければ成立せず,主たる債務が消滅すれば保証債務も消滅し,その内容は主たる債務より重くなることはありません。

イ 随伴性
 主たる債務の債権者が変更するとき(債権譲渡),保証債務は主たる債務とともに移転します。

ウ 補充性
 保証債務は,主たる債務が履行されないときにはじめて履行しなければならなくなります。

(2)保証債務の補充性
 保証債務の補充性から,次の2つの抗弁権が認められます。

(ア)催告の抗弁権
 債権者が保証人に債務の履行を請求したときは,保証人は,まず主たる債務者に催告をすべき旨を請求することができる。ただし,主たる債務者が破産手続開始の決定を受けたとき,又はその行方が知れないときは,この限りでない(452条)。
 ただし,この抗弁権は,口頭での催告も可能とされ,それほど強力な効力は有しないとされています。

(イ)検索の抗弁権
 債権者が主たる債務者に催告をした後であっても,保証人が主たる債務者に弁済をする資力があり,かつ,執行が容易であることを証明したときは,債権者は,まず主たる債務者の財産について執行をしなければならない(453条)。

 本問は,この検索の抗弁権の提出要件を記載することになります。

問題3
 「根抵当権」とは,どのようなものか。40字程度で記述しなさい。


 解説
(1)根抵当権とは
 たとえば,家電販売店Aと家電メーカーB社との間で,B社のテレビをAが継続的に購入し,その代金を毎月末に支払うこととしたとします。

 この代金債権を担保するため,普通抵当権をAの店舗およびその敷地に設定したとします。この場合,Aが債務を弁済すると付従性により抵当権は消滅することになります。

さらに,新たにB社がテレビを供給すると,その代金を担保するため,新たな抵当権を設定する必要が生じることになります。これでは,抵当権の設定手続が面倒であるだけでなく,その登記料も膨大なものとなってしまい,とても耐えられません。

 そこで,債務者が債務を弁済しても抵当権は消滅せず,また新たに債務が発生した場合に,その債務も同一の抵当権で担保できるという抵当権が必要となってきました。これが根抵当権ということになります。
 民法は,「抵当権は,設定行為で定めるところにより,一定の範囲に属する不特定の債権を極度額の限度において担保するためにも設定することができる」と規定しています(民法398条の2第1項)。

2 時効
 次は,時効に関しての問題です。

問題2
 時効には,一定の期間の権利不行使により,その権利を失わせる「消滅時効」と,一定の期間占有もしくは準占有をすることにより権利取得の効果を生じる「取得時効」が認められている。では,自己の物でないことを知りつつ占有を開始した場合,所有権の時効による取得は,どのような要件のもとに認められるか。40字程度で記述しなさい。

 解説
(1)時効とは
 時効制度は,平穏に成立した現在の社会秩序を維持するために,一定期間継続した事実状態に即した権利変動を生じさせる制度です。
 時効制度の存在理由に関しては,1. 長期間継続した社会秩序を維持する,2. 時間経過とともに困難となる証拠保全の救済,3. 権利の上に眠る者は法の保護に値しない,といったことがあげられています。通説は,1 を主たる目的とし,2.  3 .を補充的理由としています。
 取得時効に関しては,所有権の取得時効と所有権以外の財産権の取得時効に分けて規定されています。


(2)所有権の取得時効
 民法162条は,「1. 20年間,所有の意思をもって,平穏に,かつ,公然と他人の物を占有した者は,その所有権を取得する。2. 10年間,所有の意思をもって,平穏に,かつ,公然と他人の物を占有した者は,その占有の開始の時に,善意であり,かつ,過失がなかったときは,その所有権を取得する」として,所有権の取得時効を規定しています。


 2. が,占有開始時点において,自己の物であると信じ,それについて過失のない場合です。善意・無過失の場合は,10年間の取得時効期間ということです。これに対して,1. が,悪意または有過失の場合であり,20年間の占有の継続が要件となります。


解答例
20年間,所有の意思をもって,平穏に,かつ,公然と他人の物を占有すること。(36字) 

1 制限行為能力者
 まず,制限行為能力者制度のやさしい問題から解いてみましょう。

 


問題1
 民法は,自己の行為の結果を判断することの不十分な者のした法律行為を取り消すことができるものとして,制限行為能力者の保護を図っている。しかし,制限行為能力者であるか否かは外見上分からないことも多く,取引の安全を害するおそれもある。そこで,制限行為能力者が,保護に値しないような行為をした場合には,もはや取り消すことができないとして,制限行為能力者と取引をした相手方を保護する制度も規定している。民法は,どのような場合に取り消すことができないとしているか。40字程度で記述しなさい。

 解説
 民法は,人が権利を有し,義務を負うためには,その人の意思に基づくという「私的自治の原則」を基本原理としています。そこでは,意思こそが権利義務の発生する根拠であるとされます(意思主義)。
 このように,意思主義を採用しますと,自己の行為の結果を弁識する能力(意思能力)のない者のした行為によっては,権利義務が発生しないということになるでしょう。

 そこで,意思能力のない者のした行為は,無効であると考えられています。しかし,その行為をした当時に意思能力があったか否かを証明することは,とても困難なことです。

 そこで,民法は,意思能力に関して,画一的な基準を設け,その基準に達しない者のした行為は,取り消すことができるとしています。この場合,その行為の時に意思能力があったか否かは証明の必要がありません。判断能力の不十分な人を制限行為能力者として,その保護を図ったものです。
 このように,制限行為能力者の制度は,制限行為能力者の保護を目的としていますが,法律の保護にもとるような行為をした者まで保護を図る必要はありません。

 そこで,制限行為能力者の側で,相手方を騙すような行為をした場合は,取り消すことができないとして,保護の手を引き上げることとしています。

 すなわち,民法21条は,「制限行為能力者が行為能力者であることを信じさせるため詐術を用いたときは,その行為を取り消すことができない」としているのです

 本問は,この内容を記述すればよいでしょう。少し簡単すぎたかもしれませんね。

問題5難易度★★★

 インターネット等に関する次の1~5の記述のうち,誤っているものはいくつあるか。


問題4難易度★☆☆


 ある企業に勤務する,ユーザIDが「CL750Y」の田中さんが6ケタのパスワードを設定する場合に,次の1~5のパスワードの中で,最も適切と考えられるものはどれか。    


問題3難易度★★☆

 企業などでのインターネットのアクセスの管理に関する次の1~5の記述のうち,妥当なのものはいくつあるか。


問題2難易度★★☆

 個人情報保護法に関する次の記述のうち,誤っているものはいくつあるか。