2009年3月アーカイブ

「はじめて行政書士 民法」 
植杉伸介著
住宅新報社刊
定価1995円(本体1900円)


24 「第三者」の範囲
 「二重譲渡が行われた場合、先に対抗要件を得たほうが勝つ」という結論は、第三者が悪意の場合にも当てはまるのでしょうか。たとえば、AさんがBさんに土地を売却した後に、その売買の事実を知っているCさんが二重譲渡を受けた場合などです。

 この問題については、次のような話を想像してみるとよいでしょう。
 あなたは村の長老です。ある日、村内のもめ事について相談を持ちかけられました。Aさんが持っていた一枚の田んぼをめぐって、村人BとCが互いに「俺のものだ」と争っているのです。

 そこで、事情を調べてみると、Bはきちんとお金を払ってその田んぼを譲り受けたが、Cは自分の田んぼの隣りにあるのをよいことに勝手に占拠していることがわかりました。あなたならどうしますか。当然、Bの勝ちとしますよね。

 ところが、BとCどちらもきちんとお金を払って譲り受けていた場合は、どうでしょうか。どちらを勝たせたらよいか、困ると思います。でも、どちらかを勝たせないと、いつまでももめ事が収まりません。そこで、前述のように登記で決着を図ることにしたのです。

以上の話で、「第三者」の範囲が見えてきたのではないでしょうか。法律の世界もその根本をさかのぼれば、村の長老がもめ事を解決する場合と同じです。

「はじめて行政書士 民法」 
植杉伸介著
住宅新報社刊
定価1995円(本体1900円)

22 対抗要件
 前項で、所有権は契約を締結した時に移転するというお話をしましたが、この考え方にも問題があります。それは、所有権の移転が目に見えないということです。

 たとえば、Aさんが所有する土地について、BさんがAさんに対し「その土地を一〇〇〇万円で売ってくれ」と申込みの意思表示をし、Aさんが「わかりました。一〇〇〇万円で売りましょう」と承諾をすれば、この瞬間に売買契約が成立し、土地の所有権も移転したことになります。

しかし、契約が成立しただけでは、この土地に対する外形上の支配状態には、何の変化も生じていません。まだ引渡しも登記もしていないのですから、所有権の移転が目に見えません。法律的な論理の世界で、観念的に所有権が移転しているだけなのです。

 このような段階で、この土地の権利をめぐってトラブルが生じた場合、契約当事者以外の第三者が予想外の不利益を受けるおそれがあります。第三者には、所有権の移転が目に見えないので、所有権はまだBさんに移転していないと思って行動してしまうからです。 

そこで、こうした問題点を解決する手段として、対抗要件という考え方が導入されています。対抗要件とは、権利を第三者に主張するための要件のことです。すなわち、契約の締結だけで所有権が移転しますが、それを契約当事者以外の第三者に対して主張するためには、一定の要件が必要になるのです。

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植杉伸介著
住宅新報社刊
定価1995円(本体1900円)

20 売買契約
 各種の契約のなかで、我々にとって最も身近な契約が売買契約でしょう。いまさら説明するまでもないかもしれませんが、法的な説明を加えることによって、法律的な発想や感覚を身につけてもらうことにしましょう。


 売買契約を法律的に定義すると、「売主が所有権その他の財産権を買主に移転することを約し、買主が売主に代金を支払うことを約することによって成立する契約」ということになります。


 売買契約が成立すると、売主・買主の双方に債務が生じます。買主は、売主に対し代金を支払う債務、売主は、買主に対し売買の目的物を引き渡す債務を負担します。これを権利者の側面から見れば、売主は買主に対し代金の支払いを請求できる債権、買主は売主に対し売買の目的物を引き渡すよう請求できる債権を取得したと表現することもできます。


 たとえば、Aさんの土地をBさんが一〇〇〇万円で購入する売買契約が成立した場合であれば、AさんはBさんに対し「一〇〇〇万円を支払え」と請求し、BさんはAさんに対し「土地を引き渡せ」と請求できるわけです。
 

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