「はじめて行政書士 民法」
植杉伸介著
住宅新報社刊
定価1995円(本体1900円)
26 不動産登記法
不動産をめぐる民法の問題においては、登記が重要な役割を果たします。それゆえ、民法の学習をする際には、登記の基本的な仕組みを理解しておいたほうがよいでしょう。登記の仕組みは、「不動産登記法」という法律に定められています。
① 登記制度の意義
登記とは、不動産に関する権利等を公示する仕組みです。たとえば、所有権や抵当権という権利自体は、目に見えるものではありません。不動産の取引をするときに、権利の存在が明らかでないと、安心して取引できません。そこで、権利の存在を知る手がかりとして、登記制度を設けたのです。
② 不動産登記簿
不動産登記は、登記官が登記簿に登記事項を記録することによって行われます。
登記簿とは、登記記録が記録される帳簿であって、磁気ディスクをもって調製するものをいいます。
昔の登記は、紙に記載されていましたが、現在はコンピューター化されているわけです。登記記録は、原則として、一筆の土地または一個の建物ごとに、電磁的記録によって作成されます。一筆の土地または一個の建物ごとに、独立して取引が行われるので、登記記録も別にするのです。
そして、一つの登記記録は、①表題部、②権利部に区分して作成されます。
③ 登記記録の記録事項
表題部、権利部にはそれぞれどのようなことが記録されるのでしょうか。
表題部には、表示に関する登記が記録されます。表示に関する登記とは、不動産の物理的な現況を明らかにするための情報です。土地であれば、所在地、地目、地積(面積)など、建物であれば、所在地、種類(居宅・店舗などの区別)、構造、床面積などです。
権利部には、権利に関する登記が記録されます。
権利部は、さらに甲区と乙区に分かれます。甲区には所有権に関する事項、乙区には所有権以外の権利(抵当権、地上権など)に関する事項が記録されます。
以上の記録内容の違いから、表題部に登記することを「表示に関する登記」、権利部に登記することを「権利に関する登記」といいます。
④ 申請主義の原則
申請主義の原則とは、当事者の申請または官公署の嘱託(裁判所等からの登記の依頼)がない限り、登記官(登記事務を行う役人)が勝手に権利に関する登記をすること(職権による登記といいます)はないという原則です。登記は自分の権利を守るために行うものなので、登記をするかどうかを本人の意思に任せたのです。
⑤ 共同申請の原則
たとえば、A所有の土地をBに譲渡した場合、AからBへの所有権移転登記を申請するときは、AとBが共同で申請しなければなりません。B一人で申請しても、受け付けてもらえません。どちらかが単独で申請するよりは、共同で申請させたほうが、真実に合致した正しい登記がなされるであろうという考え方に基づきます。
なお、この場合の売主Aのように、権利に関する登記をすることにより、登記上、直接に不利益を受ける登記名義人を「登記義務者」、買主Bのように、登記上、直接に利益を受ける者を「登記権利者」といいます。この言葉は、登記の基本用語ですから、覚えておくとよいでしょう。
27 賃 貸 借
売買契約に次いで、皆さんにとってなじみ深い契約というと、やはり賃貸借契約ではないでしょうか。賃貸借とは、賃貸人が賃借人にある物の使用および収益をさせることを約し、賃借人がこれに対してその賃料を支払うことを約する契約です(民法六〇一条)。
要するに、賃料を払って物を貸し借りする契約ですね。レンタルビデオ店でビデオを借りたり、レンタカーを借りたりする契約、あるいはアパートを借りる契約なども賃貸借契約です。
賃貸借については、民法の規定のほかに、借地借家法という法律が存在することを知っておかなければなりません。
民法の賃貸借の規定は、右の例で挙げたように、ビデオのレンタルから不動産の賃貸まで、あらゆる目的物を対象にして定められています。
しかし、同じく賃貸借といっても、ビデオを借りるのと、土地や建物を借りるのとでは、かなり状況が異なります。土地や建物は借りている人にとって生活の本拠であったりするので、土地や建物の賃貸借契約をめぐる法律関係は、賃借人に対して非常に深刻な影響を与えます。
たとえば、賃借人が土地や建物から簡単に追い出されるような内容の契約だと、賃借人が路頭に迷うことになります。
ところが、不動産の賃貸は、不動産を所有する経済的強者である賃貸人と不動産を所有しない経済的弱者である賃借人が契約することになるので、どうしても賃貸人側にとって都合のよい契約を押しつけられがちです。
賃借人は、自分に不利な契約でも住み家がないと困るので、仕方なく承諾することになります。そして、民法には契約自由の原則がありますので、賃借人に不利な内容の契約であっても、賃借人がそれを承諾した以上、有効な契約となります。
つまり、民法という法律しかない状態では、賃借人に不利な契約であっても、そのまま認めざるをえないのです。
そこで、民法では不動産の賃借人を守ってやることができないので、賃借人を保護する目的で、別の法律をつくることにしました。その法律が借地借家法です。
したがって、借地借家法の特徴をひとことで言えば、「借主保護」ということになります。借地借家法では、借主を保護する方向で民法の規定を修正しています。
借地借家法に関しては、ある問題について、民法と借地借家法の両方に条文がある場合どうするかという点をクリアしておく必要があります。
たとえば、賃貸借の存続期間に関する規定は、民法と借地借家法の両方に定められています。このような場合は、借地借家法が優先的に適用され、民法の規定は適用されないという関係になります。
民法の規定では借主に不利だからということで、わざわざ借地借家法をつくったのに、民法を適用してしまったら意味がないからです。
ただし、土地や建物の賃貸借だからといって、民法の適用がゼロになるわけではありません。借地借家法に規定がない部分は、民法の適用があります。したがって、借地借家法の問題を解くときは、借地借家法だけでなく、民法の知識も必要になります。
また、土地を借りる場合でも、借地借家法が適用されるのは、借主がその土地の上に建物を建てる場合に限定されています。駐車場として土地を借りるような場合は、民法だけが適用されます。

