2009年11月アーカイブ

5 不法行為
 不法行為に関しては,使用者責任の問題を解いてみましょう。
問題5
 ある事業のために他人を使用する者は,被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし,使用者があることを証明したときは,その責任を免れる。どのようなことを証明したときか。40字程度で記述しなさい。


 解説
(1)使用者責任とは
 たとえば,タクシー会社A交通の運転手Bの過失により歩行者Cを負傷させたとしましょう。Cは,Bに対して不法行為(民法709条)に基づく損害賠償請求をすることができますが,Bが無資力だったときは,事実上,損害賠償請求は空振りに終わります。しかし,それでは被害者Cの救済が図れません。

 そこで,タクシー会社に損害を賠償してもらおうというのが,「使用者責任」です。タクシー会社は,被用者Bの行為により利益を得ているので,Bの行為による損失もタクシー会社A交通に償ってもらうのが公平だという「報償責任」の考え方です。

(2)使用者責任の要件
ア 使用関係の存在
 使用者責任は「ある事業のために他人を使用する者」でなければなりませんので,使用者・被用者間に雇用関係が必要といえます。しかし判例は,事実上の指揮監督関係があれば足り,雇用関係は不可欠の要素ではないとしています。暴力団に関する判例で,次のようなものもあります。

 「階層的に構成されている暴力団が,その威力をその暴力団員に利用させることなどを実質上の目的とし,下部組織の構成員に対しても同暴力団の威力を利用して資金獲得活動をすることを容認していたなど判示の事情の下では,同暴力団の最上位の組長と下部組織の構成員との間に同暴力団の威力を利用しての資金獲得活動に係る事業について民法715条1項所定の使用者と被用者の関係が成立している」(最判平16.11.12)。

イ 「事業の執行につき」とは
 使用者責任は,「事業の執行につき」被用者が不法行為をした場合でなければなりません。判例は「事業の執行につき」を広くとらえ「『事業の執行につき』というのは,必ずしも被用者がその担当する業務を適正に執行する場合だけを指すのではなく,広く被用者の行為の外形を捉えて客観的に観察したとき,使用者の事業の態様,規模等からしてそれが被用者の職務行為の範囲内に属するものと認められる場合で足りるものと解すべきである」(最判昭39.2.4)としています(外形理論)。

4 保証債務
 次に,債権法の分野から保証に関する出題です。

問題4
BがAに対して負担する債務についてCが保証人となった。Aは,Bに対して再三弁済の請求をしたが,Bは言を左右にして弁済をしてくれない。そこで,Aは保証人Cに対して,債務の弁済を請求してきた。Cは,債務者Bの財産につき執行するよう抗弁したいが,それはどのような要件のもとに可能か。40字程度で記述しなさい。

 解説
(1)保証債務の性質
 保証人は,主たる債務者がその債務を履行しないときに,その履行をする責任を負う(民法446条1項)。
 保証債務は人的担保とされ,主たる債務の弁済を担保する機能をもつものです。そこで,保証債務は,以下のような性質があります。

ア 付従性
 保証債務は,主たる債務が成立しなければ成立せず,主たる債務が消滅すれば保証債務も消滅し,その内容は主たる債務より重くなることはありません。

イ 随伴性
 主たる債務の債権者が変更するとき(債権譲渡),保証債務は主たる債務とともに移転します。

ウ 補充性
 保証債務は,主たる債務が履行されないときにはじめて履行しなければならなくなります。

(2)保証債務の補充性
 保証債務の補充性から,次の2つの抗弁権が認められます。

(ア)催告の抗弁権
 債権者が保証人に債務の履行を請求したときは,保証人は,まず主たる債務者に催告をすべき旨を請求することができる。ただし,主たる債務者が破産手続開始の決定を受けたとき,又はその行方が知れないときは,この限りでない(452条)。
 ただし,この抗弁権は,口頭での催告も可能とされ,それほど強力な効力は有しないとされています。

(イ)検索の抗弁権
 債権者が主たる債務者に催告をした後であっても,保証人が主たる債務者に弁済をする資力があり,かつ,執行が容易であることを証明したときは,債権者は,まず主たる債務者の財産について執行をしなければならない(453条)。

 本問は,この検索の抗弁権の提出要件を記載することになります。

問題3
 「根抵当権」とは,どのようなものか。40字程度で記述しなさい。


 解説
(1)根抵当権とは
 たとえば,家電販売店Aと家電メーカーB社との間で,B社のテレビをAが継続的に購入し,その代金を毎月末に支払うこととしたとします。

 この代金債権を担保するため,普通抵当権をAの店舗およびその敷地に設定したとします。この場合,Aが債務を弁済すると付従性により抵当権は消滅することになります。

さらに,新たにB社がテレビを供給すると,その代金を担保するため,新たな抵当権を設定する必要が生じることになります。これでは,抵当権の設定手続が面倒であるだけでなく,その登記料も膨大なものとなってしまい,とても耐えられません。

 そこで,債務者が債務を弁済しても抵当権は消滅せず,また新たに債務が発生した場合に,その債務も同一の抵当権で担保できるという抵当権が必要となってきました。これが根抵当権ということになります。
 民法は,「抵当権は,設定行為で定めるところにより,一定の範囲に属する不特定の債権を極度額の限度において担保するためにも設定することができる」と規定しています(民法398条の2第1項)。

2 時効
 次は,時効に関しての問題です。

問題2
 時効には,一定の期間の権利不行使により,その権利を失わせる「消滅時効」と,一定の期間占有もしくは準占有をすることにより権利取得の効果を生じる「取得時効」が認められている。では,自己の物でないことを知りつつ占有を開始した場合,所有権の時効による取得は,どのような要件のもとに認められるか。40字程度で記述しなさい。

 解説
(1)時効とは
 時効制度は,平穏に成立した現在の社会秩序を維持するために,一定期間継続した事実状態に即した権利変動を生じさせる制度です。
 時効制度の存在理由に関しては,1. 長期間継続した社会秩序を維持する,2. 時間経過とともに困難となる証拠保全の救済,3. 権利の上に眠る者は法の保護に値しない,といったことがあげられています。通説は,1 を主たる目的とし,2.  3 .を補充的理由としています。
 取得時効に関しては,所有権の取得時効と所有権以外の財産権の取得時効に分けて規定されています。


(2)所有権の取得時効
 民法162条は,「1. 20年間,所有の意思をもって,平穏に,かつ,公然と他人の物を占有した者は,その所有権を取得する。2. 10年間,所有の意思をもって,平穏に,かつ,公然と他人の物を占有した者は,その占有の開始の時に,善意であり,かつ,過失がなかったときは,その所有権を取得する」として,所有権の取得時効を規定しています。


 2. が,占有開始時点において,自己の物であると信じ,それについて過失のない場合です。善意・無過失の場合は,10年間の取得時効期間ということです。これに対して,1. が,悪意または有過失の場合であり,20年間の占有の継続が要件となります。


解答例
20年間,所有の意思をもって,平穏に,かつ,公然と他人の物を占有すること。(36字) 

1 制限行為能力者
 まず,制限行為能力者制度のやさしい問題から解いてみましょう。

 


問題1
 民法は,自己の行為の結果を判断することの不十分な者のした法律行為を取り消すことができるものとして,制限行為能力者の保護を図っている。しかし,制限行為能力者であるか否かは外見上分からないことも多く,取引の安全を害するおそれもある。そこで,制限行為能力者が,保護に値しないような行為をした場合には,もはや取り消すことができないとして,制限行為能力者と取引をした相手方を保護する制度も規定している。民法は,どのような場合に取り消すことができないとしているか。40字程度で記述しなさい。

 解説
 民法は,人が権利を有し,義務を負うためには,その人の意思に基づくという「私的自治の原則」を基本原理としています。そこでは,意思こそが権利義務の発生する根拠であるとされます(意思主義)。
 このように,意思主義を採用しますと,自己の行為の結果を弁識する能力(意思能力)のない者のした行為によっては,権利義務が発生しないということになるでしょう。

 そこで,意思能力のない者のした行為は,無効であると考えられています。しかし,その行為をした当時に意思能力があったか否かを証明することは,とても困難なことです。

 そこで,民法は,意思能力に関して,画一的な基準を設け,その基準に達しない者のした行為は,取り消すことができるとしています。この場合,その行為の時に意思能力があったか否かは証明の必要がありません。判断能力の不十分な人を制限行為能力者として,その保護を図ったものです。
 このように,制限行為能力者の制度は,制限行為能力者の保護を目的としていますが,法律の保護にもとるような行為をした者まで保護を図る必要はありません。

 そこで,制限行為能力者の側で,相手方を騙すような行為をした場合は,取り消すことができないとして,保護の手を引き上げることとしています。

 すなわち,民法21条は,「制限行為能力者が行為能力者であることを信じさせるため詐術を用いたときは,その行為を取り消すことができない」としているのです

 本問は,この内容を記述すればよいでしょう。少し簡単すぎたかもしれませんね。

問題5難易度★★★

 インターネット等に関する次の1~5の記述のうち,誤っているものはいくつあるか。


問題4難易度★☆☆


 ある企業に勤務する,ユーザIDが「CL750Y」の田中さんが6ケタのパスワードを設定する場合に,次の1~5のパスワードの中で,最も適切と考えられるものはどれか。    


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