行政書士直前対策 民法記述式 予想問題と解説2 小川多聞

2 時効
 次は,時効に関しての問題です。

問題2
 時効には,一定の期間の権利不行使により,その権利を失わせる「消滅時効」と,一定の期間占有もしくは準占有をすることにより権利取得の効果を生じる「取得時効」が認められている。では,自己の物でないことを知りつつ占有を開始した場合,所有権の時効による取得は,どのような要件のもとに認められるか。40字程度で記述しなさい。

 解説
(1)時効とは
 時効制度は,平穏に成立した現在の社会秩序を維持するために,一定期間継続した事実状態に即した権利変動を生じさせる制度です。
 時効制度の存在理由に関しては,1. 長期間継続した社会秩序を維持する,2. 時間経過とともに困難となる証拠保全の救済,3. 権利の上に眠る者は法の保護に値しない,といったことがあげられています。通説は,1 を主たる目的とし,2.  3 .を補充的理由としています。
 取得時効に関しては,所有権の取得時効と所有権以外の財産権の取得時効に分けて規定されています。


(2)所有権の取得時効
 民法162条は,「1. 20年間,所有の意思をもって,平穏に,かつ,公然と他人の物を占有した者は,その所有権を取得する。2. 10年間,所有の意思をもって,平穏に,かつ,公然と他人の物を占有した者は,その占有の開始の時に,善意であり,かつ,過失がなかったときは,その所有権を取得する」として,所有権の取得時効を規定しています。


 2. が,占有開始時点において,自己の物であると信じ,それについて過失のない場合です。善意・無過失の場合は,10年間の取得時効期間ということです。これに対して,1. が,悪意または有過失の場合であり,20年間の占有の継続が要件となります。


解答例
20年間,所有の意思をもって,平穏に,かつ,公然と他人の物を占有すること。(36字) 

(3)悪意者の取得時効の要件
ア 取得時効期間は,20年間です。

イ 「所有の意思をもって」とは,所有者と同様な排他的支配を事実上行おうという意思です。所有者として振る舞う意思,といってもよいでしょう。

ウ 「平穏」とは,占有の取得および保持について法律上許されない行為によらないことをいいます。「強暴」の反対です。

エ 「公然」とは,占有の取得および保持について秘匿しないことをいいます。「隠秘」の反対です。

オ 「他人の物」とは,自己の所有物でないことをいいます。ただし,判例は,「自己の物」についての取得時効も認めています。

 取得時効に関しては,「所有の意思をもって,善意で,平穏に,かつ,公然と占有をするものと推定」されますので(186条1項),これらは,あまり問題となることはありません。問題となるのは,推定されない「無過失」かどうかということになります。

(4)所有権以外の財産権の取得時効
 民法は,所有権以外の財産権の取得時効として,所有権の場合に準じ,次のように定めています。
 「所有権以外の財産権を,自己のためにする意思をもって,平穏に,かつ,公然と行使する者は,前条の区別に従い20年又は10年を経過した後,その権利を取得する」と規定しています(163条)。この場合も,善意・無過失の場合は10年,悪意または有過失の場合は20年ということになります。