変革期・不動産ビジネスのトレンド 殿岡秀秋
インスペクション:不動産調査
第21回
(賃貸住宅管理士) 殿岡秀秋
更新料返還請求を棄却――京都地裁判決
マンションの賃貸借契約の更新料は,消費者契約法に違反するとして争われた裁判の判決が京都地裁で出ました。
京都市の男性会社員が貸主に,更新料5回分計50万円の返還を求めた訴訟で,1月30日に判決しました。
池田光宏裁判長は「更新料は,いわば賃料の一部の前払いで(本件では)契約期間や家賃に照らし過大でなく,消費者の利益を一方的に害するものとはいえない」と述べて原告の請求を棄却しました。
判決によると,男性は2000年8月,月額家賃4万5,000円,更新料毎年10万円で左京区のマンションを借りる契約を貸主と締結しました。
2006年11月に退去するまでに6回更新したうち,最後を除く5回,更新料あわせて50万円を支払いました。
判決は「借り手は,更新料を含めて物件を選択しており,契約前に更新料の金額について説明を受けている」と指摘しました。「契約が不測の損害,不利益をもたらすものではない」として,消費者の利益を一方的に害する条項を無効と定めた消費者契約法に反しないとしたものです。
賃貸住宅の更新料は1~2年の契約期間を更新するたびに借り手が貸主に支払うものです。家賃1カ月分前後の場合が多く,敷金と異なり返還されません。
首都圏や北海道,愛知,京都,福岡,沖縄などを中心に相当数の設定があるといわれています。
判決は,本件の更新料を家賃の一部といっています。しかし,家賃は日割りで返還されますが,更新料は契約満了前であっても返還されません。
不動産業界では通常,家賃の一部とは考えていません。
関東では2年に一度の更新が多いのに,本件では1年ごとです。また,更新料は家賃の1カ月分がほとんどなのに,本件では家賃の倍以上となっています。
したがって,本件判決が更新料一般が消費者契約法に反しないと裁判所が認めたと判断するのは早計です。
家賃以外の特約(礼金,敷金,更新料等)について,全国的な基準の制定を求める動きが活発化しているのが現状です。
原告側は即日,大阪高裁に控訴しました。控訴審の行方や他の判例に注目していきましょう。
2007年の首都圏中古マンション成約件数減少
首都圏の中古マンションの成約件数は,5年ぶりに前年を下回りました。一方,成約価格は2003年から2007年にかけての5年間で26.3%も上昇しました。
とくに2007年は前年比10.9%上昇し,平均価格が2,480万円になりましたが,売り出し価格は2割強の上昇となっており,売値と成約価格の差が,取引が成立しにくい状況をまねいています。
これは,東日本レインズ(東日本不動産流通機構)が首都圏の2007年の不動産流通市場の動向を報告した中で明らかになったものです。
首都圏の2007年の中古マンションの成約件数は前年比3.0%減の2万8,498件でした。これは5年ぶりの減少で,首都圏のすべての都県で減少しています。
一方,新規登録物件数は前年比21.5%増の13万9,601件で,過去最高を記録しました。すべての都県で前年を上回っています。
成約価格の1平方メートル当たり単価は,首都圏平均で前年比11.4%上昇の39.63万円になりました。
新規登録物件の1平方メートル当たり単価は,首都圏平均で前年比22.0%上昇の47.66万円と大幅に上昇しました。また,新規登録価格の平均は前年比20.3%上昇の2,774万円となりました。
成約価格と新規登録物件の乖離が大きすぎて,成約物件の減少をまねいたと,東日本レインズでは分析しています。
2008年度の民間住宅投資は大幅増加へ
改正建築基準法施行により,2007年度の民間住宅投資は前年比マイナス15.8%に落ち込みましたが,2008年度は逆に20.4%増加して回復に転じるという予測を,建設経済研究所が出しました。
これは,建設経済研究所が独自の建設経済モデルで試算した「2007~2008年度の建設投資見通し」の中で予想したものです。
その中で,2007年6月20日の改正建築基準法施行の影響で2007年度の民間住宅投資は前年度比15.8%減の16兆900億円と,4年ぶりに落ち込むと予測しています。
しかし,2008年度は民間住宅建設が持ち直し,前年度比20.4%増の19兆3,700億円に回復するとしています。
また,住宅着工戸数の見通しをみると,2007年度は,改正建築基準法施行の影響で前年度比21.2%減の101.2万戸と,大きく落ち込むことになると予測しています。
しかし,2008年度は,「改正建築基準法施行の影響が収束すれば,先送りされた着工が顕在化することにより,住宅着工は再び高水準になる」と予想しています。
これにより2008年度の住宅着工戸数は,前年度比24.5%増の126万戸となると同研究所ではみています。
土地情報システムに4万6,000件の新規提供
国土交通省は不動産取引市場の透明化,取引の円滑化・活性化等を図ることを目的に,不動産の取引価格情報をWebサイト「土地総合情報システム」に2006年4月から公開しています。
このシステムに新たに2007年7月から9月で4万6,284件の情報提供がありました。これによりシステム開始からの全提供件数は,21万9,546件に達しました。
内容別では,土地のみの取引が1万8,771件(2006年4月からの累計で8万3,341件)でした。土地と建物の一括取引が1万6,118件(同7万9,727件)でした。マンション等の取引が6,778件(同4万463件)でした。その他の取引(農地など)が4,617件(同1万6,015件)となっています。
利用者等からのアクセスは公開から2007年12月末までに約4,184万件ほどありました。
調査対象地域として提供している情報は,2005年度分が三大都市圏の政令指定都市等となっています。2006年度分は,全国の政令指定都市を中心とする地域となりました。
そして2007年度分は,全国の県庁所在都市など地価公示対象地域に拡大されています。
借家契約の中途解約は正当事由が必要
借家契約の中途解約には,どのような制限があるのでしょうか。
借地借家法では,期間の定めのある賃貸借契約は,当事者(貸主と借主など)が期間の満了の1年前から6カ月前までの間に相手方に対して更新をしない旨の通知をしなければならない(借地借家法26条)と定めています。
ところが実際は,「賃借人は1カ月前の予告によって解約が可能である」という借家契約があって,賃借人からの解約は比較的自由に行える場合が多いのです。これは法に基づくのではなくて,特約によって決められます。
近年,賃貸借契約の特約が問題となっています。貸主も借主も特約に十分に気をつける必要があります。
従来は家賃が上がっていくのが普通でした。ところが,継続して住んでいる人の家賃は上げずらい傾向がありました。このため借主から出ていってくれるなら大歓迎というのが一般的だったのです。新規借主なら家賃を上げられるし,礼金・敷金が入ってくるからです。
しかし,状況は変わりました。家賃が下がりだし,空室率が上がってくると,出ていってもらったら困るという貸主が増えてきます。
貸主のほうからの解約は「正当事由」が必要です。これは借主保護のために借地借家法で規定されています。
「建物の賃貸借は,解約の申入れの日から6月を経過することによって終了する」(同法27条)となっています。
しかし,「建物の明渡しと引換えに建物の賃借人に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して,正当の事由があると認められる場合でなければ,することができない」(同法28条)となっていて,実際には正当事由が認められなければ賃貸人からの中途解約は難しい制度になっています。
そこで「定期建物賃貸借」契約制度が誕生しました。
これは「契約の更新がないこととする旨を定めることができる」(同法38条)借家契約です。貸主からの期間内の中途解約は認められていません。借主からの中途解約も制限されています。
借主から中途解約できる場合は,居住用であること。床面積が200平方メートル未満の建物であること。転勤,療養,親族の介護その他のやむを得ない事情があることという3条件がついています。
この3条件にあてはまる建物の賃借人は,建物の賃貸借の解約の申入れをすることができます。この場合は,建物の賃貸借は,解約の申入れの日から1カ月を経過することによって終了します。
つまり,商業用の定期建物賃貸借では,借主からの中途解約はできません。
賃貸人からの建物賃貸借の解約に正当事由が必要なのに対して,定期建物賃貸借では「期間の満了の1年前から6月前までの間に建物の賃借人に対し,期間の満了により建物の賃貸借が終了する旨の通知」さえすれば解約ができます。このため定期建物賃貸借契約は増加しています。
貸主は,普通の賃貸借にするか,定期建物賃貸借にするかについて,賃貸借のプロであるコンサルタントと相談してから,募集・契約・管理をすることが必要な時代になっています。
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