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不動産ビジネストレンドその3  殿岡秀秋

●国交省、犯罪収益移転防止法、宅建業者も対象、本人確認など義務付け

 犯罪収益移転防止法が3月1日に施行されたことで宅建業者にもマネー・ローンダリング(資金浄化)の防止義務が課されることになりました。

 これにより宅建業者が売買契約の締結またはその代理・媒介を行うとき、売主や買主の本人確認や記録の作成・保存、疑わしい取引の届出が義務付けられることになりました。

 これは2007年3月末に成立した「犯罪収益移転防止法」によるマネーロンダリング(犯罪資金の洗浄)の防止が狙いです。金融機関に義務付けられていたものが、2008年の3月から38業種に拡大されたものです。

 宅建業者の業務のうち、同法の規制対象になるのは、宅建業者が行う宅地建物の売買契約の締結、あるいはその代理、媒介です。 

 同法が求める具体的な業務は次の4つです。

1本人確認

 契約締結のとき、運転免許証等の公的証明書で本人、特定事項を確認します。個人なら氏名・住所・生年月日などです。法人なら名称・本店または主たる事務所の所在地などです。

 宅建業者が2社介在し、それぞれ売主側・買主側の片方の代理・媒介であることが明確なら、その一方のみの確認でよいとされています。

 法人取引や代理人取引の場合は、現に取引の任に当たっている個人と法人(依頼人)のそれぞれについて本人確認が必要となることに注意が必要です。


2本人確認記録表

 本人確認を行ったら、直ちに本人確認記録表を作成し、契約締結時から7年間保存しなくてはなりません。記録表の様式・書式は任意です。


3取引記録表

 契約締結後直ちに取引記録表を作成し、その日から7年間保存しなくてはならりません。これは宅建業法で義務付けられている帳簿でよいとされています。

 ただし、宅建業法上の帳簿の保存義務は5年ですので、それを売買については7年間保存としなければなりません。


4疑わしい取引の届出

 契約締結に至らなくても、疑わしい取引に該当する場合は宅建の免許権者宛(国土交通大臣免許の場合は所管の地方整備局)にその旨を届けなければなりません。


5罰則

 違反しても直ちに罰則を課されることはありません。しかし、是正命令違反や、報告義務の拒否などについては罰則規定が設けられています。

 是正命令違反は2年以下の懲役、もしくは3百万円以下の罰金、又はその併科(法人に対しては3億円以下の罰金)となります。

 報告徴求や立入検査の際の質問拒否及び虚偽報告、妨害及び忌避は1年以下の懲役もしくは3百万円以下の罰金、又はその併科(法人に対しては3億円以下の罰金)となります。


 国土交通省が示した宅地建物取引業者が関与する「不動産の売買における疑わしい取引の参考事例」は以下の通りです。


第1 現金の使用形態に着目した事例

1 多額の現金により、宅地建物を購入する場合(特に、契約者の収入、資産等の属性に見合わない高額の物件を購入する場合。)


2 短期間のうちに行われる複数の宅地建物の売買契約に対する代金を現金で支払い、その支払い総額が多額である場合

第2 真の契約者を隠匿している可能性に着目した事例

3 売買契約を架空名義又は借名で締結したとの疑いが生じた場合


4 顧客が取引の関係書類に自己の名前を書くことを拒む場合


5 申込書、重要事項説明書、売買契約書等の取引の関係書類それぞれに異なる名前を使用しようとする場合


6 売買契約の契約者である法人の実体がないとの疑いが生じた場合


7 顧客の住所と異なる連絡先に関係書類の送付を希望する場合


第3 取引の特異性(不自然さ)に着目した事例

8 同一人物が、短期間のうちに多数の宅地又は建物を売買する場合


9 宅地又は建物の購入後、短期間のうちに当該宅地又は建物を売却する場合


10 経済合理性から見て異常な取引を行おうとする場合(例えば、売却することを急ぎ、市場価格を大きく下回る価格での売却でも厭わない場合等)


11 短期間のうちに複数の物件を購入するにもかかわらず、各々の物件の場所、状態、予想修理費等に対してほとんど懸念を示さない場合


12 取引の規模、物件の場所、顧客が営む事業の形態等から見て、当該顧客が取引の対象となる宅地又は建物を購入又は売却する合理的な理由が見出せない場合


第4 契約締結後の事情に着目した事例

13 合理的な理由なく、予定されていた決済期日の延期の申し入れがあった場合


14 顧客が(売買契約締結後に)突然、高額の不動産の購入への変更を依頼する場合


第5 その他の事例

15 公務員や会社員がその収入に見合わない高額な取引を行う場合


16 顧客が自己のために取引しているか疑いがあるため、真の受益者について確認を求めたにも関わらず、その説明や資料提出を拒む場合


17 顧客が取引の秘密を不自然に強調する場合


18 顧客が「疑わしい取引の届出」を行わないように依頼、強要、買収等を図る場合


19 暴力団員、暴力団関係者等に係る取引


20 自社従業員の知識、経験等から見て、不自然な態様の取引又は不自然な態度、動向等が認められる顧客に係る取引


21 犯罪収益移転防止管理官(※)その他の公的機関など外部から、犯罪収益に関係している可能性があるとして照会や通報があった取引


(※)警察庁刑事局組織犯罪対策部犯罪収益移転防止管理官(JAFIC)


 国土交通省では、これらの事例について、宅地建物取引業者が日常の取引の過程で疑わしい取引を発見又は抽出する際の参考となるものですが、合理的な理由がある場合など、これらの事例に形式的に合致するものがすべて疑わしい取引に該当するものではない一方、これに該当しない取引であっても、宅地建物取引業者が疑わしい取引に該当すると判断したものは届出の対象となることに注意を促しています。

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