マンション調査入門24(違法造成後) 津村重行
5)"がけ"上の工事で不適合建築物に!
隣接地が違法造成工事をしたために、当該マンションが"不適合建築物"になる場合があります。
"がけ"の工事が少し変である、という場合、その工事の様子をデジカメ写真にとって、建築確認の担当課に行き、「このような造成工事は問題がないでしょうか?」と聞くのです。
「この2段擁壁は違反造成です」といった回答がその場で得られる場合もあります。
また、工事中の場合は、行政から「工事中止命令」が出される場合もあります。
このようなときには、隣接地主に対して、「違反造成工事を撤去して元に復元をしてください」という請求をする場合、「損害賠償請求をする」ということにもなります。
マンションの1室を取引する場合、隣接地の"がけ"の状況を観察して、隣地が既存のものよりも高い擁壁を工事しているような気配があるときは、管理組合や管理会社に「隣地の"がけ"で問題になっていませんか」と聞きます。
ただし、"がけ"に関する条例違反であっても、「マンションが鉄筋コンクリート造りなので条例適用除外工事」とみなされることもあります。
この場合は、重要事項で説明は不要となる場合があります。
また、条例は地域によりまちまちですので、買主には、「本物件隣地の所有者が行っている"がけ"工事は行政が違反であるとしているため、現在、管理組合は隣地所有者と協議中です。」というような説明が必要となる場合もあります。
6)消防署の防火指導のあるマンション!
マンションによっては、駐車場入口に清掃用の小屋やプロパンガスのボンベ室を建築したために、駐車場入口が狭くなり、消防自動車が進入できなくなったという場合があります。
このような場合は、消防署は火災の防災対策に関する指導を行っているケースがあります。
つまり、火災が発生した場合、この駐車場に消防自動車が進入して消火に当る予定が、不用意な工作物があるために消火活動ができない、ということになります。
一見、見落としがちなこのような事象は、最悪の場合、人命にかかわります。
しかし、消防署の指導や検査というものは、消防署独自に抜き打ちのような形でマンションの火災防災の検査をしているわけではありません。
あくまでも、マンション管理組合からの定期的な要請に基づいて検査が実施されているものです。
したがって、管理組合側が消防署に対して検査要請をしない限り、このような安全性についての報告記録はありません。
意外に、このような問題は放置されていることが多く、駐車場の形態や自動車の進入路の状況に余裕があるかどうかも併せて見ておくことが大切です。
そして、消防署の指導があるという場合、重要事項の説明の際、「駐車場入口がゴミステーションで狭くなったため、消防署の指導があります。」と告知することが大切です。
見落としやすいことですので注意が大切です。
7)火災警報器設置の有無は重要事項か?
こんな事例があります。
2005年9月16日、最高裁は、
「売買重要事項説明書には,802号室の防火設備等として,火災感知器及び火災報知器の場所が示されていたが,本件防火戸の記載はなく,・・本件防火戸の電源スイッチの位置及び操作方法,火災発生時における本件防火戸の作動の仕組み等については,全く説明していなかった。」
として、不動産仲介業者に火災延焼による損害賠償判決を下しました。
折から、平成19年6月施行の建築基準法改正により、新築住宅においては、「火災警報器設置」が義務付けられています。
既存住宅においては、全国の市区町村の条例により、平成20年6月ごろにはほぼ一斉に関係者等に設置を義務付けることになります。
したがって、義務付けが始まった都市では、火災警報器が設置されていない建築物は建築基準法の不適合建築物となりますので、重要事項として不動産取扱い業者は説明をすることを考えておくことが大切です。
マンションの室内の点検の際、「火災警報器があるかないか」は大切なチェック項目です。
また、「火災警報器があるかないか」だけではなく、最高裁判例に示すように、「取扱い方法を説明」し、説明をした書面の受領書を取得しておくことも大切です。
消費者保護のためには、いかに物件調査情報の開示が大切かを示す判決です。
おわりに
消費者の「自己責任」は、「不動産取引において消費者保護のための情報開示システムが法令上で存在すること」が前提と思われます。
また、取引における消費者保護のために「情報開示を推進する」という総合規制改革会議の議論は、「個人情報保護」という名の下に、不動産取引の責任ある立場の人間が調査しても情報開示されないのが現実です。
不動産に関する情報が契約前に買主に明らかにならないのです。
したがって、買主は不動産取引の場では、不動産調査能力が担保されていない宅地建物取引業者の情報に頼らざるを得ない立場にあります。
そこで、このように不動産情報の収集が困難な時代になりますと、将来、「不動産取引書類のインスペクター(取引情報の審査を行う技術者)」が必要になります。
すでに、本書でも、「エスクロー制度が必要である!」と言いましたが、不動産調査および不動産取引の専門家の情報開示技術のレベルアップが急務となっています。
私が提唱する、「エスクロー調査」は「消費者保護のための不動産情報開示システム」であり、これを全国で実施する人は急速に増えています。
本書での出会いを機会に、皆様方が消費者保護に貢献されることを祈ります。

