図解不動産業シリーズ
「相続コーディネート入門」
曽根恵子著
住宅新報社刊
定価1785円(本体1700円)
9 相続コーディネートのタイミング
相続コーディネートに取り組むタイミングは、いつがいいのでしょうか?
いままでたいていの場合、相続への取組みは生前対策で、土地有効利用が主体でした。
しかし、ここにご紹介する「相続コーディネート」は、亡くなってからのタイミングがベストです。
なぜなら、亡くなってからは、申告と納税に期限があり、それに向けて決断をしてもらえることがメリットになるからです。
それは、生前とは違うビジネスチャンスになります。
たとえば土地有効利用の場合、内容は悪くなくても結局は決断してもらえなかった、という経験はありませんか?
節税になるからといっても、特別差し迫った事情がなければ、進めなくても困ることはありません。となると、土地所有者やご家族が対策の必要性を十分に認識されない限りは事業が進まないといえます。
しかし、これが相続が起きたあとは事情が変わってきます。相続が特別な事情だということです。相続税の具体的な金額が決まってくると納税は待ったなしですから、何らかの納税方法を選択しなければなりません。
また、相続税の納税を経験すると、たいていの方は次に相続税を払うときには節税したいと考えられます。だからこそ節税対策の提案は、理解をもって受け入れてもらえることが多くなります。
相続が発生したときのベストタイミングを逃さないことがポイントです。
10 相続コーディネーターの注意点
相続コーディネーターとして価値を発揮するためには、「自分が顧客を獲得すること」が前提です。自分の案件だからこそ、他の専門家に協力を依頼でき、まとめ役になれるということです。
その意味では、大家さん、地主さんに近いことは有利な立場にあると意識していただきたいと思います。
その立場を活かして、自分の案件として相続に関わろうという意識がないと始まりません。
相続コーディネーターは自らの発想でストーリーを描いて提案をしますが、独断にならないように注意が必要です。
また、それぞれの専門家の分野は、その専門家に責任をもって仕事に取り組んでもらうようにしなければなりません。
相続税の申告は税理士、不動産の登記は司法書士、土地の測量や分筆は土地家屋調査士、路線価以外の不動産評価をする場合は不動産鑑定士。自分の専門以外の業務は相続コーディネーターとして責任を取れないのが現実ですので、提案をする際も前置きが必要です。
たとえば、相続税評価は税理士の仕事ですから、説明が必要な場合は税理士が同席のうえで進めたほうがいいのです。
ただし、まとめ役としての自分のポジションをキープすることが必要ですから、事前の打ち合わせをし、その後の進行や方針は提案をするという、税理士とは別の役割を担当しなければなりません。すべての業務で、このスタンスが必要です。
11 まずは相続に取り組んでみる
「相続コーディネーター」の役割は、ご理解いただけたでしょうか?
あれこれ考えるよりは、まず実際に取り組んでみることで、自分なりの「相続コーディネート」のあり方、進め方を作りだしていただければよいと思います。それが不動産業としての仕事作りのきっかけにもなります。
なにより、大家さん、地主さんに近いという立場を活用していただければ機会は訪れるでしょう。
「○○さんが亡くなった」というときには、「相続をコーディネートするので、お任せください」と、声をかけてみましょう。
「おつきあいの少ない税理士や信託銀行に任せるより、普段からつきあいのある私に任せたほうが一生懸命に取り組みます!」ということです。
基本は、「相続人の利益のために成果を出す」ということになりますが、それを普段から伝えられるような努力は必要でしょう。
しかし、相続をビジネスとして儲けようという考え方では、相続手続の実務者として選択してもらえません。
利益優先の相続ビジネスでは得られない信頼関係があればこそで、さらに相続のときに「相続人のために成果を出そう」という取組みで信頼を積み重ねることができれば、仕事につながります。
ノウハウは取組みのなかで蓄積されると思いますが、困ったときはセカンドオピニオンとして私や相続に強い専門家と協働することも可能です。
まずは、勇気を持って取り組んでみましょう。
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