国家試験合格スケジュール「不動産鑑定士試験」を展望する1 鈴木 優

.はじめに
 平成20年度の不動産鑑定士試験は,新しい制度となって3回目の短答式(択一式を含む)試験および論文式試験の2段階方式により実施されました。

(1)短答式
 ●不動産に関する行政法規(短答式40問〈2時間〉)
 ●鑑定理論(短答式40問〈2時間〉)

(2)論文式
 ●民法,会計学および経済学(大問2問〈各2時間〉)
 ●鑑定理論(大問4問〈4時間〉,演習1問〈2時間〉)

 不動産鑑定士試験は,不動産鑑定士となろうとする者に必要な学識およびその応用能力を有するかどうかを判定することを目的とし,短答式試験(平成20年5月18日〈日〉に行われ,受験者数3,002名,合格者数678名で,合格率は22.6%)に合格した者のみ,論文式試験を受験することができます。

 論文式試験は,暑い盛りの3日間(平成20年8月2日〈土〉,3日〈日〉,4日〈月〉)に行われ,対受験者合格率10.1%(受験者1,308名,合格者132名),対短答式受験者合格率4.4%(受験者3,002名,合格者132名)となりました。

一般的に「試験」というものは,試験場で難しく感じた問題や,まったく見当もつかなかった論点が,あとで冷静に考えてみると正解することができるものです。すなわち,試験場では難問だと思っても試験終了後,改めて見直してみると実際は基本的なところを問うていたのだと気づくことがよくあります。

2.20年の試験結果の概要
(1)短答式
(1) 不動産に関する行政法規(5/18〈日〉
 40問)
 出題範囲はA群の法律を中心に,B群の法律を含みます。

A群 土地基本法,不動産の鑑定評価に関する法律,地価公示法,国土利用計画法,都市計画法,土地区画整理法,都市再開発法,建築基準法,マンション建替え円滑化法,不動産登記法,土地収用法,土壌汚染対策法,文化財保護法,農地法,所得税法(第1編から第2編第2章第3節までに限る),法人税法(第1編から第2編第1章第1節までに限る),租税特別措置法(第1章,第2章,第3章第5節の2および第3章第6節に限る),地方税法(A群18法律)


B群 都市緑地法,住宅の品質確保の促進等に関する法律,宅地造成等規制法,新住宅市街地開発法,宅地建物取引業法,公有地の拡大の推進に関する法律,自然公園法,自然環境保全法,森林法,道路法,河川法,海岸法,公有水面埋立法,国有財産法,相続税法,景観法,高齢者・障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律,不動産特定共同事業法(第1章に限る),資産の流動化に関する法律(第1編,第2編第1章に限る),投資信託及び投資法人に関する法律(第1編,第2編第1章,第3編第2章第2節に限る),金融商品取引法(第1章に限る)(B群21法律)
(計 39法律)
 なお,アンダーラインの部分が20年度から出題範囲となりました。

 ①個数問題形式の出題が,26問(昨年25問で1問増えた)ありました。今後も個数問題が出題される傾向が十分予測されます。

 ②難易度については,19年度とほぼ同程度か多少難化しました。選択肢の正誤が判別しにくいものがあったからです。
 細かい知識を試す問題や条文を微妙に変えての問題もあり,5肢をじっくり読みこなさなければ,正誤の判定が難しい設問がありました。

 難問の出題の傾向は今後も続くものと予測されます。このような難問を解くには,相当の準備が必要となります。また,過去問以外からの出題対策としては,過去問を軽視するのではなく,過去問の出題範囲を確実にマスターすることによって,過去問以外から出題されたとしても,正解できる応用力を養うことが必要といえます。

(2) 鑑定理論
 ①主に不動産鑑定評価基準および不動産鑑定評価基準運用上の留意事項から出題されました。

 ②実務的な経験などを積んでいなければ分かりづらい選択肢も多少ありましたが,基本的には「基準」「留意事項」および「要説」(「要説不動産鑑定評価基準」発行所★★★(8550)住宅新報社)の読み込みで対応できるといえます。

 ③個数問題形式の出題が33問(全体の82%強)あり,この傾向は今後も続くでしょう。個数問題は,1つ1つの選択肢の正誤を正確に判断しなければ正解肢を判定できないので,普段の学習において正確な知識を身につけることが大切です。

④計算問題の出題が5問あり,今後とも計算問題は出題される可能性が大きいでしょう。


(2)論文式
(1) 民法(8/2〈土〉論文2問)
 20年度の試験は「適法な建物転貸借における基本賃貸借が賃料の不払いにより解除されたときに生じる事後的な法律問題」と「代理について基本的な問題」からの出題でした。どちらも,それなりに民法の受験対策として基本的な事項を学習していれば,まったく論述できない問題ではありませんでした。

 民法は,出題範囲が広いため,今後の出題予
測が非常に難しいのですが,とにかく自分の持っている既存の知識で答案を作り上げる答案構成力を高めることが求められます。

(2) 経済学(8/2〈土〉論文2問)
「金融・財政政策に関する基本的な理解を確認する問題」と「純粋交換経済における効率性や競争均衡の概念などについての基本的な理解を問う問題」からの出題となりました。

最近の出題傾向としての「計算問題」ですが,今年もこの傾向は継続しており,「計算問題」の出題傾向は今後も続くものと予測されます。

しかも「ミクロ」または「マクロ」どちらからでも出題される可能性があります。「計算問題」の対策としては,基本的な「計算問題」の解き方について,十分訓練することが求められます。

(3) 会計学(8/3〈日〉論文2問)
「〈負ののれん〉の発生原因と会計処理についての基本的な問題」と「研究開発費の処理およびその基準並びに繰延資産の計上根拠に関する問題」から出題されました。

 全体的には,専門家として会計面における資質,思考力などを試すには的を射た出題で,内容や質・量とも一定水準にあります。

(4) 不動産鑑定評価理論(8/3〈日〉論文2問,
 8/4〈月〉論文2問)
「基準」と「留意事項」を単純に丸暗記しただけでは解答できない問題が出題されています。全般的には,「考える」ことを要求する問題が出題されました。このように,「考える」ことを要求する問題は今後も増えていくことが予想されます。

 第1問は,「貸家およびその敷地(貸しビル)の評価について」の実務的な出題で,実務的な処理をいかに理解しているかが問われました。
 第2問は,「賃貸用不動産に関する個別要因である〔賃貸経営の良否〕と,DCF法との関連性を問う基本的な問題」からの出題でした。
 第3問は,「建物の再調達原価」に関する基本的事項からの出題でした。
 第4問は,「対象不動産の確定,価格時点,貸室賃料収入の把握に関する基本的な理解を問う問題」からの出題でした。

(5) 不動産鑑定評価理論(8/4〈月〉演習問題
 1問)
「区分所有権建物およびその敷地」という類型からの出題でした。「区分所有権建物およびその敷地」の評価は,煩雑で手順の内容はかなりボリュームがあり,不動産の鑑定評価に関する理論について,具体的に理解し,その応用力を有するかどうかが問われています。

 試験場で初めて電卓を使い,適切な取引事例の選択をはじめ,時点修正率などの補・修正率の計算など落ち着いて間違わずに,しかも要領よく一定の時間で処理しなければなりません。

 実務未経験の受験生には,事前に従来の3次試験の過去問題などで訓練をしていないと,不慣れのため焦ったり,制限時間内での解答は難しかったのではないかといえます。

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