不動産鑑定評価入門2 植杉伸介

◆第1節 不動産とその価格
 【不動産は,通常,土地とその定着物をいう。土地はその持つ有用性の故にすべての国民の生活と活動とに欠くことのできない基盤である。そして,この土地を我々人間が各般の目的のためにどのように利用しているかという土地と人間との関係は,不動産のあり方,すなわち,不動産がどのように構成され,どのように貢献しているかということに具体的に現れる。】


 冒頭で不動産の定義をしています。土地と土地の定着物(建物など)を不動産としているのですが,これは民法86条1項の「土地及びその定着物は,不動産とする」という規定をそのまま受けたものです。差し当たって,土地と建物を頭に思い浮かべておけば,問題ありません。

 後半で,土地と人間との関係について述べていますが,これは次のような意味です。

 たとえば,土地の上にビルを建てて貸しビル業を営んでいる場合は,土地は人間に対して収益(賃料等)を与えるという関係で貢献していることになります。

 これに対し,たとえば,土地の上に自分の住む住宅を建てている場合は,土地は人間に対して雨や風をしのぎ快適な生活を営むことに貢献するという関係に立つことになります。

 要するに,土地の利用の仕方によって,人間に貢献する形も具体的に違ってきますよ,といっているわけですね。


【この不動産のあり方は,自然的,社会的,経済的及び行政的な要因の相互作用によって決定されるとともに経済価値の本質を決定づけている。一方,この不動産のあり方は,その不動産の経済価値を具体的に表している価格を選択の主要な指標として決定されている。】

不動産のあり方が,「自然的,社会的,経済的及び行政的な要因の相互作用によって決定される」ということは,とりあえず常識的な感覚で何となく分かれば,それで十分でしょう。さらに鑑定評価基準を読み進めていくと,この部分についての詳しい説明が出てくるからです。

 少し難しい内容のものを勉強するときは,最初に読んだときに全部理解しようとしないほうがよいでしょう。よく分からなくても,どんどん先に進んでしまうのが,学習のコツです。

 後半の「不動産のあり方は,......価格を選択の主要な指標として決定されている」というのは,不動産のあり方が,不動産の価格によって決まるという意味です。人は,その価格に見合った不動産の利用方法を模索します。

 たとえば,非常に高額な土地があった場合,収益目的で企業がその土地を利用することはあっても,居住目的で個人がその土地を利用することはほとんどありません。

【 不動産の価格は,一般に,
1 その不動産に対してわれわれが認める効用
2 その不動産の相対的稀少性
3 その不動産に対する有効需要

の三者の相関結合によって生ずる不動産の経済価値を,貨幣額をもって表示したものである。そして,この不動産の経済価値は,基本的にはこれら三者を動かす自然的,社会的,経済的及び行政的な要因の相互作用によって決定される。

不動産の価格とこれらの要因との関係は,不動産の価格が,これらの要因の影響の下にあると同時に選択指標としてこれらの要因に影響を与えるという二面性を持つものである。】


 不動産の経済価値は,その不動産の効用,相対的稀少性,有効需要によって決まります。すなわち,不動産を利用することによってわれわれの日常生活や経済活動に役立てることができます(効用)。

しかし,不動産は有限であり,その不動産を手に入れるためには経済的犠牲が必要です(相対的稀少性)。それから,その不動産を購入できるだけの経済力を持ったうえで,その不動産を欲する人がいてはじめて,不動産の価格が意味を持ってきます(有効需要)。

 鑑定評価基準の文章中の「三者の相関結合によって生ずる」というのは,要するに,不動産の効用・相対的稀少性・有効需要の3つの要素がからみ合って,不動産の経済的価値が生ずるということです。

 そして,不動産の効用・相対的稀少性・有効需要の3つの要素は,自然的,社会的,経済的および行政的な要因の相互作用によって決定されています。不動産の効用・相対的稀少性,有効需要は,不動産の物理的状況,人口の動向,景気の状態,土地利用に関する公的な規制など,さまざまな要因によって動かされているのです。

 こうしてみると,これらの諸要因と不動産の価格とは,互いに原因と結果のような関係になっていることが分かります。すなわち,これらの諸要因によって不動産の価格が決まると同時に,不動産の価格がこれらの諸要因に影響を与えているのです。