不動産鑑定評価入門4  植杉伸介

〈人文的特性〉

用途の多様性: 土地の用途は単一のものに限られず,住宅,商業,工業,農業,林業などさまざまな用途に供することができるという性質


併合・分割の可能性: 土地を併合したり,分割することによって,用途に応じた適正な広さと形状に変えることができるという性質

社会的・経済的位置の可変性: 周辺の環境条件等の変化に対応して,その土地に適した用途が変わってきたり,土地の用途の変更に伴って収益性なども変わってくるという性質

土地の自然的特性は,土地それ自体がもともと持っている固有の特性といえます。これに対して,土地の人文的特性は,土地に対してわれわれがさまざま な働きかけをする場合において,われわれと土地との関係として生じてくる特性です。人為的な特性といってもいいかもしれません。

 後半の文章における「与件」とは,「与えられた条件」という意味です。つまり,不動産は,土地の持つそれぞれの自然的特性と人文的特性を前提条件として利用され,有用性を発揮するのです。

したがって,その前提条件が変化すれば,不動産の利用形態や有用性も変化することになります。
 



【不動産は,また,その自然的条件及び人文的条件の全部又は一部を共通にすることによって,他の不動産とともにある地域を構成し,その地域の構成分子としてその地域との間に,依存,補完等の関係に及びその地域内の他の構成分子である不動産との間に協働,代替,競争等の関係にたち,これらの関係を通じてその社会的及び経済的な有用性を発揮するものである(不動産の地域性)。 】


 不動産の有用性を考える場合は,その地域性を無視することはできません。不動産は,個々の不動産ごとに独立して存在するものではなく,自然的条件(地質,地盤,地勢,気候等)と人文的条件(都心との距離,交通施設の状態,住宅・街路等の街並みの状態,行政区域等)を共通することによって,他の不動産とともにある地域を形作っていくものだからです。

 不動産と地域との依存関係とは,たとえば,ある商業地域の繁華性が増すと,その地域内の個々の不動産の商況もよくなるという関係をいいます。補完関係とは,たとえば,学校が集まっている地域には,文房具店や書店などが多く見られるようになる関係をいいます。

 また,地域内の個々の不動産との間の協働関係とは,たとえば,地域内の個々の不動産(店舗)が力を合わせて働くことによって,地域における商店街が栄えるような関係をいいます。

代替・競争関係とは,地域内において類似の商品を扱う店舗との間に見られる関係です。競争関係にありつつも,A商店が休みの日は,B商店で買い物をするというように,互いに代替しあう関係を有する場合もあります。