不動産鑑定評価入門6 植杉伸介

【不動産の価格(又は賃料)は,その不動産に関する所有権,賃借権等の権利の対価又は経済的利益の対価であり,また,二つ以上の権利利益が同一の不動産の上に存する場合には,それぞれの権利利益について,その価格(又は賃料)が形成され得る。】


 不動産の価格の特徴の2つめです。
 不動産の価格は不動産の所有権の売却の対価,不動産の賃料は賃借権の設定の対価という形をとります。

 そして,1つの不動産に対して,所有権のほか,賃借権,地上権などの権利も同時に存在することができ,それぞれに価格・賃料が形成されます。同じ不動産について,所有権を購入する場合の価格,賃借権を設定した場合の賃料などが同時に成立するということですね。


【 不動産の属する地域は固定的なものではなくて,常に拡大縮小,集中拡散,発展衰退等の変化の過程にあるものであるから,不動産の利用形 態が最適なものであるかどうか,仮に現在最適なものであっても,時の経過に伴ってこれを持続できるかどうか,これらは常に検討されなければならない。した がって,不動産の価格(又は賃料)は,通常,過去と将来とにわたる長期的な考慮の下に形成される。今日の価格(又は賃料)は,昨日の展開であり,明日を反 映するものであって常に変化の過程にあるものである。】

不動産の価格の特徴の3つめです。
 不動産の地理的位置は変わりませんが,社会の変化などに伴って,その属する地域は変わっていきます。たとえば,かつては緑が豊かな場所であったところが,都市の発展や拡大により住宅地に変わります。


 また,同じく住宅地であっても,かつては低層の戸建て住宅が中心であった地域が次第にマンション等の中高層住宅を中心とする地域に変わることもあります。地域が変われば,不動産の利用形態として最適なものも変わってきます。

 不動産の価格を評価する場合も,こうした地域の変化の過程を考慮する必要があります。単純に,現時点での不動産の利用形態のみを考えて,不動産の価格を評価したのでは,適正な価格を示すことができません。過去はどうであったのか,そして将来はどのように変化するのか,ということまで考慮すべきです。

【 不動産の現実の取引価格等は,取引等の必要に応じて個別的に形成されるのが通常であり,しかもそれは個別的な事情に左右されがちのものであって,このような取引価格等から不動産の適正な価格を見出すことは一般の人には非常に困難である。したがって,不動産の適正な価格については専門家としての不動産鑑定士の鑑定評価活動が必要となるものである。】

 不動産の価格の特徴の4つめです。
 不動産の現実の取引価格は,取引ごとの個別的な事情に左右されることが多いので,個別の取引価格を見て,一般の人が不動産の適正な取引価格を判断することは困難です。

 たとえば,現実の取引において,資金の都合上,早く換金しなければならない事情があり,売り急いでいる場合は,どうしても本来の適正な価格より低い金額で取引が行われます。

また,たとえば,土地の所有者が隣接の土地を買い取って併合する計画である場合は,どうしてもその隣接地でなければならないため,適正価格より高い金額で取引される可能性が高くなります。

 このような個別的な事情に左右される可能性を考えると,たとえば,ある100平方mの土地が1,000万円で売却されたからといって,それだけで,付近の土地も同様に1平方m当たり10万円くらいが相場だと判断することはできないのです。

 不動産の適正な価格を評価するには,高度な専門知識と豊富な経験が必要です。そのような知識と経験を有する専門家は,不動産鑑定士です。それゆえ,不動産の適正な価格を見出すためには,不動産鑑定士による鑑定評価活動が必要となってくるのです。

【不動産の現実の取引価格は,個別的な事情に左右されがち】

【一般の人にとって,不動産の適正な価格を見出すことは困難】

【不動産鑑定士による鑑定評価活動が必要となる】

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