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国試改正法 「改正商業登記法他」 田中利和

(司法書士) 田中利和

◇はじめに
 本稿は,改正商業登記法・法務省民商第782号通達に関連した出題論点だけでなく,会社法に関連する論点も含めて学習していきます。

1 役員変更等に関して
 まずは,頻出論点である株式会社の役員変更登記を中心に学習していきます。
 特に取締役会非設置会社が取締役を選任した場合や取締役会設置会社が非設置会社に変更した場合に伴い役員を改選した場合は非常に複雑ですので,このあたりを中心に学習していきましょう。

2 取締役の変更登記

 それでは,取締役の変更登記に関する論点を確認しましょう。次の問題はどうでしょうか?


◇予想問題

〔問題1〕 取締役在任中に破産手続開始決定を受けた者が,未だ,復権していない場合であっても,取締役に選任して就任による変更登記を申請することができる。

〔解答・解説〕

 正しい。破産手続開始の決定を受け復権していない者は取締役の欠格事由から除かれました(会社法331条)。

 したがって,取締役が破産手続開始の決定を受け復権していない場合であっても,取締役に選任することができ,その者が就任承諾をすれば,就任登記を申請することができます。

 これに対し,在任中の取締役が破産手続開始の決定を受けた場合には退任することになります。
 株式会社と役員等(取締役,会計監査人)との関係は委任に関する規定に従うとされ(330条),破産手続の開始決定は民法上の委任の終了事由(民法653条)になるからです。


 なお,この場合,登記原因は「資格喪失」ではなく,「退任」となります(商事法務『商業登記ハンドブック』松井信憲400頁)。


 ところで,取締役の中から代表取締役を定めない場合,取締役は各自が会社を代表するため,定款または株主総会の決議により取締役に就任すると,同時に代表取締役に就任することになります。

 これは,旧有限会社法に関する解釈と同じく,代表取締役の地位と取締役の地位が一体として,会社の一方的な意思表示によって,会社を代表すべき取締役として決定されるからです。

 つまり選任当初より代表権のある取締役として選任されると解されているからです。

 それに関連した論点として次の問題はどうでしょうか?

〔問題2〕

 取締役会非設置会社において,在任の取締役全員が退任し,取締役が1名しか就任しない場合であっても,その者について,取締役の旨及び氏名,代表取締役の旨及び住所,氏名の登記を申請しなければならない。

〔解答・解説〕

 正しい。
 取締役は,株式会社を代表します(会社法349条1項)。

 つまり,原則として,取締役には代表権があり,複数在任していても各自が株式会社を代表することになります(349条2項)。
 したがって,取締役が1名のときは当然に当該取締役が会社を代表する取締役でもあるため,取締役の氏名だけではなく(911条3項13号),代表取締役の氏名および住所を登記しなければなりません(911条3項14号)。

 取締役が複数選任された場合は,定款に別段の定めがない限り,当該取締役の氏名,代表取締役の氏名および住所をそれぞれ登記しなければなりません。

 なお,代表取締役が複数いる場合の共同して代表すべきことを定めた規定(旧商法188条2項9号)は廃止されたので,当該共同代表の定めに関する登記はすることはできません。


〔問題3〕 定款に代表者に関する別段の定めがない取締役会非設置会社において,株主総会において取締役を選任した場合,取締役として就任を承諾すれば代表取締役として就任承諾書を提出することなく,当該登記申請をすることができる。

〔解答・解説〕
 正しい。
 原則として取締役は,株式会社を代表し,取締役が2人以上ある場合には,取締役は,各自,会社を代表します(会社法349条1項・2項)。

 したがって,定款に代表者に関する別段の定めがない取締役会非設置会社の株主総会において,取締役に選任された者がその就任を承諾した場合には,代表取締役の就任承諾をも含んでいることから,代表取締役としての就任承諾書は不要とされています。

 それでは,問題3と関連しますが,次の印鑑証明書の論点は,どうでしょうか?

〔問題4〕
 取締役が複数存在する取締役会非設置会社において,取締役の互選により代表する取締役を選定する旨の定款の定めがある場合,取締役の互選により代表取締役を選定した場合には,代表取締役の就任による変更登記の申請書には,当該代表取締役の就任承諾書に市区町村長の作成した印鑑証明書を添付しなければならない。

〔解答・解説〕

 誤り。
 添付書面は,改正前の有限会社の取締役および代表取締役の就任による変更の登記と同様です。

 したがって,定款の定めに基づき取締役の互選によって代表取締役を定めたときは,定款およびその互選を証する書面,代表取締役の就任承諾書(商業登記規則61条1項,商業登記法46条)を添付しなければならず,取締役の就任(再任を除く)による変更の登記の申請書に添付すべき取締役が就任を承諾したことを証する書面の印鑑について市区町村長の作成した証明書を添付しなければなりません。

 しかし,取締役の中から代表取締役が就任を承諾したことを証する書面については,別途,印鑑証明書の添付を要しません(法務省民商第782号通達47頁)。


 なお,同趣旨の問題として,平成18年問31肢アにおいて出題されています。

〔問題5〕
 定款に代表者に関する別段の定めがない取締役会非設置会社において,取締役全員が任期満了により退任したため,株主総会において同一人を取締役に選任した場合,当該株主総会議事録に出席取締役が記名・押印をしていなかったとしても,登記所に印鑑を届け出た従前の取締役が,登記を委任する司法書士にあてた委任状に当該登記所に届け出た印鑑を押印すれば,当該登記申請は受理される。

〔解答・解説〕

 誤り。
 本問のように株主総会の決議により各自会社を代表する取締役として取締役を選任した場合(つまり,代表取締役として選任した場合),代表取締役の就任による変更の登記の申請書には,議長および出席した取締役が株主総会の議事録に押印した印鑑につき市区町村長の作成した証明書を添付しなければなりませんが,当該印鑑と変更前の代表取締役が登記所に提出している印鑑とが同一であるときは,この限りでないとされています(商業登記規則61条4項1号)。


 会社法下においては,出席取締役について株主総会議事録に記名・押印義務がなくなったとはいえ(会社法施行規則72条),商業登記規則61条4項の適用を受けるためには,株主総会議事録に出席取締役が記名・押印したうえで,従前の代表取締役が当該株主総会議事録に登記所に提出している印鑑を押印しなければなりません。

3 代表取締役の変更登記

 代表取締役の変更登記について見ていきましょう。取締役会設置会社が取締役会設置会社の定めを廃止した場合,取締役会非設置会社が取締役会設置会社の定めの設定をした場合,それら以外の論点も確認します。


 まずは,取締役会設置会社が取締役会設置会社の定めを廃止した場合を確認しましょう。

◇予想問題

〔問題6〕
 在任中の取締役ABC,代表取締役Aという取締役会設置会社において,取締役会設置会社の定めを廃止して,代表者の選任については定款に別段の定めを設けない場合,取締役BCについては,代表権の付与の登記を申請しなければならない。

〔解答・解説〕

 正しい。
 取締役会を廃止して,代表者の選任について定款の定めを設けない場合には,取締役は各自代表となり,代表権のなかった取締役については代表権が付与されます。したがって,取締役BCについては,代表権の付与の登記を申請しなければなりません(法務省民商第782号通達)。

 これは,取締役の中から代表取締役を定めていた会社がこれを定めないこととした場合(定款に基づく取締役の互選による選定方法をとっていた会社にあっては,当該定款の規定を削除した場合等)には,会社法の規定に従って,従前代表権を有していなかった他の取締役は,その在任中に,法律上の効果として,各自代表権を有することとなります。したがって,取締役BCは,代表取締役としての選任行為および就任承諾なくして,代表取締役となるので,登記原因として「代表権付与」という文言が用いられています。


 なお,BCに付与された代表権は法律上の効果とされているので,代表取締役としての就任承諾書や印鑑証明書は不要とされています(商事法務『商業登記ハンドブック』松井信憲391頁)。

〔問題7〕
 取締役ABC,代表取締役Aという取締役会設置会社において,任期満了と併せて取締役会設置会社の定めを廃止して,株主総会において,取締役ABCが選任された場合(代表者の選任について定款に別段の定めを設けない)には,取締役及び代表取締役の変更登記を申請しなければならない。

〔解答・解説〕

 正しい。
 任期満了と併せて取締役会設置会社の定めが廃止された場合には,選任された取締役は,代表取締役にも就任することになるので,本問の場合においては,取締役および代表取締役の変更の登記を申請しなければなりません。

 新取締役たるABCは,各自代表の取締役として選任され,就任を承諾しています。

 したがって,従前代表権を有しなかった取締役BCが重任するときは,取締役の重任および代表取締役の就任の登記(取締役Aについて重任する場合には取締役および代表取締役の重任の登記)を申請することとなります。


 なお,取締役の選任についての議事録に係る印鑑の証明書(変更前の代表取締役が届出印を押印した場合を除く)および取締役の就任承諾書も添付書面となります。ただし,取締役が重任する場合には取締役の就任承諾書に係る印鑑の証明書は添付書面とはならないとされています(商登規61条2項後段)(商事法務『商業登記ハンドブック』松井信憲392頁一部引用)。


 なお,本問のように,役員の改選と併せて代表取締役の選定方法を廃止した場合には,新取締役は,取締役会を置かない会社の本来的な形態である「代表権のある取締役」として選任され,就任を承諾しているため,代表権の付与という登記原因はなく,取締役および代表取締役に就任(または重任)という登記原因を用いることとなります(商事法務『商業登記ハンドブック』松井信憲380~381頁一部引用)。

〔問題8〕
 在任中の取締役ABC,代表取締役Aという取締役会設置会社において,取締役会設置会社の定めの廃止と同時に定款に互選により代表取締役を選定する旨の定めを置いて,取締役ABCの互選により,Aを代表取締役として選定した場合,代表取締役の重任の登記を申請しなければならない。

〔解答・解説〕

 誤り。
 取締役会設置会社でない会社は,定款の規定に基づく取締役の互選により,取締役の中から代表取締役を定めることができます(会社法349条3項)。

 会社が取締役会設置会社の定めの廃止と同時に定款に互選により代表取締役を選定する旨の定めを置き,取締役会設置会社の定めの廃止前の代表取締役と同一人を定款の定めに基づく互選により代表取締役に選定した場合には,取締役会設置会社の定めの廃止前後で代表取締役および取締役について何らの変更が生じていないので,代表取締役および取締役に関する変更の登記を申請することは要しません。

 したがって,この場合には,取締役会設置会社の定めの廃止による変更の登記のみを申請すれば足ります(『会社法等の施行に伴う商業登記実務についてのQ&A』日本司法書士会連合会一部引用)。

 次に,取締役会非設置会社が取締役会設置会社の定めの設定をした場合を確認しましょう。

〔問題9〕
 在任中の取締役ABC,代表取締役Aという取締役会非設置会社において,取締役会設置会社の定めを置いて,新たに取締役会の決議により,Aを代表取締役として選定した場合,代表取締役の退任及び就任の登記を申請しなければならない。

〔解答・解説〕
 誤り。
 取締役会設置会社の定めの設定に伴い,それまで定款,定款の規定に基づく取締役の互選または株主総会の決議のいずれかにより取締役の中から代表取締役を選定していた取締役会設置会社でない会社(会社法349条3項)は,

 新たに取締役会の決議により取締役の中から代表取締役を選定し,取締役会設置会社の定めの設定による変更の登記と同時に代表取締役の変更の登記(取締役会で選定された代表取締役の就任の登記および取締役会設置会社の定めが設定される前に選定されていた代表取締役の退任の登記)を申請する必要があるとされています。

 この場合において,取締役会設置会社の定めの設定前に代表取締役であった取締役が再度選定されたときは,同一人が代表取締役の地位にあり続けることから,取締役会における選定は,その地位にあることの確認の意義を有するにとどまるものと解されているので,

 当該代表取締役の退任および就任を原因とする変更の登記は不要とされています(きんざい『月刊登記情報542号会社法の施行後における商業登記実務の諸問題(3)』法務省民事局商事課商業法人登記第二係長宗野有美子より一部引用)。

 ●参考書籍等
『商業登記ハンドブック』商事法務
『月刊登記情報539号』きんざい
『月刊登記情報542号』きんざい
『会社法等の施行に伴う商業登記実務についてのQ&A』日本司法書士会連合会