国家試験改正法 「不動産登記法」 阪本健一
【土地家屋調査士】
(住宅新報社講師) 阪本健一
◇はじめに
不動産登記法は全面改正され,平成17年3月7日に施行されました。
また,平成18年1月20日施行で筆界特定制度が新たに設けられました(次号以降,改正前の法律を「旧法」,改正後の法律を「新法」と呼びます)。
調査士試験にかかわる主な改正点は,次のような点です。
①オンライン申請の導入
②登記申請における出頭主義の廃止
③登記済証を廃止し,登記識別情報の制度の新設
④保証書による本人確認制度を廃止し,事前通知制度の強化,および資格者代理人による本人確認制度の新設
⑤地図等の図面を電磁的記録に記録することができる制度の新設
⑥筆界特定制度の新設1
登記識別情報
(1) 意義
不動産登記法22条本文の規定により登記名義人が登記を申請する場合において,当該登記名義人自らが当該登記を申請していることを確認するために用いられる符号その他の情報であって,登記名義人を識別することができるものをいいます(不登法2条14号)。
その登記をすることによって申請人自らが所有権の登記名義人となる場合において,当該登記を完了したときは,当該申請人に対し,法附則6条1項の指定を受けていない登記所(以降,オンライン未指定庁)においては,従来どおり登記済証が交付されますが(法附則6条3項),法附則6条1項の指定を受けた登記所(以降,オンライン庁)においては,アラビア数字その他の符号の組合せによる記号で,不動産および登記名義人となった申請人ごとに定められた(規則61条)登記識別情報が通知されます(法21条本文)。
よって,所有権の登記がある不動産の表題部に関する登記を所有権の登記名義人が申請する際に,過去に通知された当該不動産の登記識別情報を提供することによって,申請人が所有権の登記名義人であることを証することができます。
(2) 登記識別情報の通知
①登記識別情報の通知を受ける者
ⅰ 申請人自らが登記名義人となる場合には当該申請人(法21条本文)
ⅱ 法定代理人(支配人その他の法令の規定により当該通知を受けるべき者を代理することができる者を含む)によって申請している場合,当該法定代理人(規則62条1項1号)
ⅲ 申請人が法人である場合(前号に規定する場合を除く),当該法人の代表者(同2号)
ⅳ 登記識別情報の通知を受けるための特別の委任を受けた代理人がある場合には,当該代理人(規則62条2項)
上記の者に登記識別情報が通知されます。債権者代位により申請した者や,登記名義人であってもその被代位者には通知されないことや,共有不動産について,その共有者中の一部の者から申請した場合,申請した共有者には通知されますが,申請に加わらなかった他の共有者には通知されないことになるので,注意を要します。
②登記識別情報の通知内容(準則37条1項)
ⅰ 不動産所在事項および不動産番号
ⅱ 申請の受付の年月日および受付番号または順位番号並びに規則147条2項の符号
ⅲ 登記の目的
ⅳ 登記名義人の氏名または名称および住所
ⅴ 登記識別情報
なお,登記識別情報を記載した書面は下記の様式で,登記識別情報を記載した部分が見えないようにするシールをはり付けます(準則37条2項)。
③登記識別情報の通知方法
ⅰ 電子申請の場合
登記官の使用に係る電子計算機に備えられたファイルに記録された登記識別情報を,電子情報処理組織を使用して送信し,これを申請人またはその代理人の使用に係る電子計算機に備えられたファイルにダウンロードします(規則63条1項1号)。
ただし,官庁または公署が登記権利者のために登記の嘱託をしたときにおける登記識別情報の通知は,官庁または公署の申出により,登記識別情報を記載した書面を交付する方法によりすることができます(規則63条3項)。

ⅱ 書面申請の場合
登記所において登記識別情報を記載した書面(登記識別情報通知書)を交付します(規則63条1項2号)。
なお,交付を受ける者に,当該登記の申請書に押印したものと同一の印を登記識別情報通知書交付簿に押印し,当該登記識別情報通知書を受領した旨を明らかにさせます(準則37条4項)。
すなわち,書面交付で送付は認められていません。ただし,官庁または公署が登記権利者のために登記の嘱託をした場合に限り,登記識別情報通知書交付簿に登記識別情報通知書を送付した旨を記載し,登記識別情報通知書の交付を送付の方法によりすることができます(準則37条5項)。
④登記識別情報の通知を要しない場合
ⅰ 申請人があらかじめ登記識別情報の通知を希望しない旨の申出をした場合(法21条ただし書,規則64条1項1号)
ⅱ 電子申請において,登記官の使用に係る電子計算機に備えられたファイルに登記識別情報が記録され,電子情報処理組織を使用して送信することが可能になった時から30日以内に自己の使用に係る電子計算機に備えられたファイルに当該登記識別情報をダウンロードしない場合(規則64条1項2号)
ⅲ 書面申請において,登記識別情報の通知を受けるべき者が,登記完了の時から3月以内に登記識別情報を記載した書面を受領しない場合(規則64条1項3号)
この場合,当該登記識別情報通知書は,登記識別情報通知書交付簿にその旨を記載し,廃棄します(準則38条)。
ⅳ 登記識別情報の通知を受けるべき者が官庁または公署である場合で,当該官庁または公署があらかじめ登記識別情報の通知を希望する旨の申出をしなかった場合(規則64条1項4号)
なお,登記識別情報の再通知は認められていません。
(3) 登記識別情報の失効の申出
登記名義人またはその相続人その他の一般承継人は,登記官に対し,通知を受けた登記識別情報について失効の申出をすることができます(規則65条1項)。登記識別情報が,盗み見られたり,その恐れがある場合,または記録したものを紛失した場合等により,この登記識別情報を用いての不正な登記申請を防止するために設けられた制度です。
この申出は,規則65条2項に示されている申出情報を,電子情報処理組織を使用して登記所に提供する方法,または記載した書面を登記所に提出する方法でできます(規則65条3項)。
申出情報の内容である登記名義人の氏名や名称または住所が登記記録と合致しない場合には,申出情報と併せて当該登記名義人の氏名もしくは名称または住所についての変更または錯誤もしくは遺漏があったことを証する市町村長,登記官その他の公務員が職務上作成した情報を提供して申出をすることができます。
ただし,公務員が職務上作成した情報がない場合にあっては,これに代わるべき情報を提供すれば足ります(規則65条4項)。
(4) 登記識別情報の有効証明
登記名義人またはその相続人その他の一般承継人は,登記官に対し,手数料を納付して,登記識別情報が有効であることの証明その他の登記識別情報(通知されていないこと,失効していること等の証明)に関する証明を請求することができます(令22条1項)。登記識別情報を必要とする登記申請を円滑に行うために,登記名義人が登記識別情報の効力をあらかじめ知っておくために設けられた制度です。
有効証明の請求方法は,失効の申出方法と同様の有効証明請求情報(規則68条1項)を,電子情報処理組織を使用する方法,もしくは書面を提出してする方法でできます(規則68条3項)。
なお,有効証明の請求の場合には登記識別情報も提供しなければならないことに注意が必要です(規則68条2項)。なお,登記名義人の氏名もしくは名称または住所が登記記録と合致しない場合の取扱いは,失効の申出の場合と同様です(規則68条5項)。
有効証明の受領は,電子情報処理組織を使用する方法で請求した場合は電子情報処理組織を使って,書面で請求した場合は登記官が証明に係る事項を記載した書面を交付する方法となります(規則68条4項)。
(5) 表示に関する登記で登記識別情報の提供が必要な登記
登記権利者および登記義務者が共同して権利に関する登記の申請をする場合,その他登記名義人が政令で定める登記の申請をする場合には,申請人は,その申請情報と併せて登記義務者(政令で定める登記の申請にあっては,登記名義人)の登記識別情報を提供しなければなりません(法22条本文)。
ここで,表示に関する登記申請で登記識別情報を提供しなければならない申請は,登記名義人自らが当該登記を申請していることを確認する必要がある以下の登記です。
ⅰ 所有権の登記がある土地の合筆の登記(令8条1項1号)
なお,当該合筆に係る土地のうちいずれか1筆の土地の所有権の登記名義人の登記識別情報を提供すれば足ります(令8条2項1号)。
ⅱ 所有権の登記がある建物の合体による登記等(令8条1項2号)
なお,登記名義人が同一である所有権の登記がある建物の合体による登記等においては,当該合体に係る建物のうちいずれか1個の建物の所有権の登記名義人の登記識別情報を提供すれば足ります(令8条2項2号)。
ⅲ 所有権の登記がある建物の合併の登記(令8条1項2号)
なお,当該合併に係る建物のうち,いずれか1個の建物の所有権の登記名義人の登記識別情報を提供すれば足ります(令8条2項3号)。
オンライン庁になる前に交付された登記済証は,申請する登記所がオンライン庁になってから初めて登記識別情報を必要とする登記を申請する場合,当該登記済証を添付して登記申請できます。
従来の登記済証が提出されたときは,登記識別情報が提供されたものとみなされます(法附則7条)。この場合,登記完了後は登記済証ではなく,登記識別情報が通知されることとなります。
①登記識別情報の提供を要しない場合
登記識別情報が通知されなかった場合,その他の申請人が登記識別情報を提供することができないことにつき正当な理由がある場合は,登記識別情報を提供することなしに登記申請ができます(法22条ただし書)。
正当な理由とは,
ア 登記識別情報が通知されなかった場合
イ 登記識別情報の失効の申出に基づき,登記識別情報が失効した場合
ウ 登記識別情報を失念した場合
です(準則42条1項)。
この場合には,提供できない理由を申請情報の内容としなければならず(令3条12項),内容としなかった場合には,その登記申請は却下されます(法25条9号)。ただし,直ちに却下するのではなく,登記官は申請人に対して補正を求めるものとされています(準則42条2項)。
2 登記完了証
オンライン庁においては,登記の申請がなされ,その登記が完了しても登記済証は交付されません。そこで登記官は,登記の申請に基づいて登記を完了したときは,申請人に対し,登記完了証を交付することにより,登記が完了した旨を通知しなければならないとされました(規則181条1項前段)。
この通知を受けることで申請人は当該申請した登記がなされたことを確認できます。この場合において,申請人が2人以上あるときは,その1人(登記権利者および登記義務者が申請人であるときは,登記権利者および登記義務者の各1人)に通知すれば足ります(規則181条1項後段)。
登記完了証は不動産所在事項,不動産番号,登記の目的,申請の受付の年月日および受付番号を記録して作成されます(規則181条2項)。
電子申請の場合には,登記官のファイルから申請人またはその代理人がダウンロードする方法で交付を受けます(規則182条1項1号)。
書面申請の場合は,登記完了証を書面により交付されます(規則182条1項2号)。ただし,官庁または公署が登記権利者のために電子申請により登記の嘱託をしたときにおける登記完了証の交付は,書面により交付を受けることができます(規則182条2項)。
なお,オンライン未指定庁において登記申請する場合には,申請情報として申請書副本を添付して申請し,登記が完了したときは登記済証が交付されます。
予想問題
〔問題〕 次の問いに○×で答えなさい。
1 オンライン未指定庁の管轄内の所有権の登記がある土地について,登記名義人から合筆の登記申請がなされ,登記が完了したときには登記識別情報が通知される。
2 オンライン庁の管轄内の所有権の登記がある土地について,登記名義人から合筆の登記申請がなされ,登記が完了したときには常に登記識別情報が通知される。
3 登記識別情報を記載した書面を盗まれた場合,登記名義人は登記官に対し,当該登記識別情報について失効の申出をして,当該登記識別情報を無効なものとし,後の不正な登記の申請を防止できる。無効となった登記識別情報に代わって新たな登記識別情報の通知を請求できる。
4 登記申請に関する一切の権限を委任された代理人であっても登記識別情報の通知を受けることはできない。
5 登記識別情報の通知は,電子申請した場合においても書面での通知を望む旨の登記申請をしておけば登記識別情報通知書で通知される。
6 AとBが共有する所有権の登記がある4筆の土地を合筆して甲地,乙地とする合筆登記を一括申請した場合,登記識別情報は4個通知される。
7 AとBが共有する所有権の登記がある1個の建物を2個の区分建物とする建物の区分登記がされた場合,登記識別情報は4個通知される。
8 AとBが申請人となって登記申請した場合の登記完了証は,AとBおのおのに交付される。
9 書面申請により,所有権の登記がある土地の合筆の登記が完了した場合には,この登記の申請に添付情報として提出された登記識別情報は廃棄される。
10 所有権の登記名義人が2人である土地の合筆の登記の申請には,いずれか1人の登記識別情報を提供すればよい。
11 所有権の登記名義人がAである土地の一部をAから買い受けたBが,債権者代位権を行使して当該土地を分筆する登記を申請し,登記がなされた場合,登記官はAに対して登記完了証を交付する。
12 登記官は,官庁又は公署が登記権利者(登記をすることによって登記名義人となる者に限る。)のためにした登記の嘱託に基づいて登記を完了したときは,速やかに,当該登記権利者に登記識別情報を通知しなければならない。
13 登記識別情報の失効の申出をする場合,申出に係わる登記識別情報を提供しなければならない。
14 甲所有の建物の所有権保存の登記申請が,乙から債権者による代位で申請された場合,登記識別情報は申請人である乙に通知される。
〔解説〕
1 登記識別情報の通知制度はオンライン庁だけの制度である。非オンライン庁においては登記済証が交付される(法附則6条1項・3項)。×
2 当該申請人があらかじめ登記識別情報の通知を希望しない旨の申出をした場合は,通知を要しない(法21条ただし書,規則64条1項1号)。×
3 失効の申出については正しいが(規則65条1項),登記識別情報の再通知はされない。登記識別情報は本人確認手段の1つであって,登記識別情報の通知をすること自体が目的ではない。登記識別情報が提供できない場合は,事前通知等の本人確認手続の方法で登記の申請を行え,登記識別情報の再通知をする必要性は,それほど高くないと思われるからである。×
4 代理人が登記識別情報の通知を受けるには,登記申請に関する代理権とは別に,登記識別情報の通知を受ける権限の委任をも受けていなければならない(規則62条2項)。委任状に個別に表記する必要がある。〇
5 電子申請の方法で登記申請した場合は,法務大臣の定めるところにより,登記官の使用に係る電子計算機に備えられたファイルに記録された登記識別情報を,電子情報処理組織を使用して送信し,これを申請人またはその代理人の使用に係る電子計算機に備えられたファイルに記録する方法により,通知される(規則63条1項1号)。
ただし,官庁または公署が登記権利者のために登記の嘱託をしたときにおける登記識別情報の通知は,官庁または公署の申出により,登記識別情報を記載した書面を交付する方法によりすることができる(規則63条3項)。×
6 登記識別情報は,不動産および登記名義人となった申請人ごとに定める(規則61条)。旧法であれば1通の登記済証が交付される場合であるが,登記識別情報の場合は,①甲地のA持分,②甲地のB持分,③乙地のA持分,④乙地のB持分の,おのおのの登記識別情報が通知される。〇
7 建物の区分の登記においては登記識別情報が通知されることはない。区分前の建物の登記識別情報が区分後の各建物の登記識別情報になる。建物の分割,土地の分筆の場合も同様である。×
8 登記官は,登記の申請に基づいて登記を完了したときは,申請人に対し,登記完了証を交付することにより,登記が完了した旨を通知しなければならない。この場合において,申請人が2人以上あるときは,その1人に通知すれば足りる(規則181条1項)。×
9 登記官は,書面申請より登記識別情報を記載した書面が提出された場合において,当該登記識別情報を提供した申請に基づく登記を完了したときは,速やかに,当該書面を廃棄するものとされている(規則69条)。〇
10 共有である土地の合筆の登記申請は共有者全員で申請しなければならない。したがって,当該登記名義人自らが当該登記を申請していることを確認するためには,共有者全員の登記識別情報を提供しなければならない。×
11 登記官は,登記の申請に基づいて登記を完了したときは,申請人に対し,登記完了証を交付することにより,登記が完了した旨を通知しなければならない(規則181条1項)。よって,登記完了証は申請人であるBに交付される。登記が完了した旨の通知が登記官からされる(規則183条1項2号)。×
12 登記官は,官庁または公署が登記権利者(登記をすることによって登記名義人となる者に限る)のためにした登記の嘱託に基づいて登記を完了したときは,速やかに,当該登記権利者のために登記識別情報を当該官庁または公署に通知しなければならない。登記識別情報の通知を受けた官庁または公署は,遅滞なく,これを当該登記権利者に通知しなければならない(法117条)。×
13 登記識別情報に係わる証明の請求(登記識別情報が通知されていないことまたは失効していることの証明の請求を除く)をするときは,有効証明請求情報と併せて登記識別情報を提供しなければならない(規則68条2項)。すなわち,失効の申出については登記識別情報の提供は必要とされていない。有効証明の請求の場合は必要となることに注意を要する。×
14 登記識別情報は,その登記をすることによって申請人自らが登記名義人となる場合において,当該登記を完了したときは,当該申請人に対し,当該登記に係る登記識別情報が通知される(法21条本文)。甲には,登記名義人ではあるが申請人ではないから通知されない。乙には,申請人ではあるが登記名義人ではないから,登記識別情報は通知されない。
×
登記識別情報通知
次の登記の登記識別情報について,下記のとおり通知します。
【不動産】
【不動産番号】
【受付年月日・受付番号(又は順位番号)】
【登記の目的】
【登記名義人】
(以下余白)
記
登記識別情報
‐ ‐ ‐
平成 年 月 日
法務局 出張所
登記官 職印


