仲介のためのマンション調査入門 1 津村重行
新耐震マンションの調べ方
買主の自己責任は情報開示から
はじめに
耐震偽装事件の発覚は日本中のマンション住民に衝撃を与えました!
「建築確認があるから」「中間検査に合格しているから」「検査済み証があるから」「10年間の瑕疵補修の責任があるから安心です」という神話が崩壊しつつあります。
50の確認審査機関の内46機関が「偽装を想定していなかった」と回答。
2005年6月24日、最高裁は、「指定確認検査機関による建築確認は国または公共団体の行政事務」という判決を下しました。
日本には、万一、分譲業者が倒産しても10年間95%弱を保証する第3者保証機関が存在します。
登録した住宅は平成19年3月末で119万戸を超える。
どうして、保証付きマンションを購入しなかったか!と。
買主の自己責任時代になりつつあります!
しかし、賃貸住宅の延長で分譲マンションを考える宅地建物取引業者も数多い。
マンション取引では建物全体や敷地全体に多くの問題が含まれており、業者の役割は大きい。
消費者に対して、不動産取引に関する重要な事項を情報開示することで消費者保護が可能になります。
本書では、消費者保護の根幹をなすマンションの「情報開示すべき重要事項」の範囲が理解できるように、特に重大な問題をわかりやすく述べていきます。
1. 耐震偽装事件と買主の自己責任
(1) 建物の基本的安全性とは!
2007年7月6日、最高裁(裁判長今井功)は、「建築物の基本的安全性」として、「ベランダ手すりがぐらついていて入居者が転落する可能性があるような場合は、建築物としての基本的な安全性を有していない欠陥」としました。
それは、「建物の基礎や構造く体に瑕疵がある場合に限って不法行為責任が認められると解すべき理由もない。」というものです。
また、従来の不法行為責任の範囲を、「構造上の欠陥のみに限定しない」と否定しました。
さらに、「建物利用者や隣人,通行人等の生命,身体又は財産を危険にさらすことがないような安全性を備えていなければならず,・・そのような瑕疵があればその建物には建物としての基本的な安全性を損なう瑕疵がある。」
つまり、「建築された建物に建物としての基本的な安全性を損なう瑕疵があり、それにより居住者等の生命、身体又は財産が侵害された場合には、これによって生じた損害について不法行為による賠償責任を負うというべきである」と判決しました。
マンション調査の基本は、構造的な欠陥だけではなく、入居者の生命の安全性にも気をつけて、調査をすることが大切です。
新築住宅だから、中古マンションだから、「少々のことは説明をしなくても大丈夫だろう」と考えずに、少なくとも、「目で見て危険とわかるような設備状況」などは説明責任が問われます。
(2) 苦情の多い分譲業者!
2006年12月20日、宅地建物取引業法(以下「宅建業法」)第47条を改正し、「取引の関係者の資力若しくは信用に関する事項であって、宅建業者の相手方等の判断に重要な影響を及ぼすこととなるもの」について、宅建業者は買主に告知する義務を課しています。
特に、新築マンションの仲介の場合は慎重になる必要があります。
無事に取引が完了したとしても欠陥だらけで何度も補修の苦情を聴かされることになります。
売主は、それが企業であろうと個人であろうと、購入者の都合の悪い話などはしないものです。
たとえば、売主業者が取引完了前に倒産などをして、契約を履行することができなくなった場合、仲介業者が「いつ、どこで、どのような方法で何を調べたか」が問われることになります。
不動産会社については、苦情相談受付窓口である都道府県庁の建設・不動産業課に行って、「この会社は、不動産トラブルなどで苦情相談はありませんか」と質問をします。
通常、行政処分の記録のある企業については、公開情報ですので教えてくれます。
中には、「この会社は車に乗って街中を時速100キロで走っているようなものです」と、説明をしてくれる担当者もいます。
行政処分がない場合でも、消費者からの苦情が余りに多い場合は教えてくれる場合があります。
苦情の多い会社はその事実をあらかじめ買主に告知しておくことが大切です。


