国試改正法講座 「土地家屋調査士」 阪本健一
【土地家屋調査士】
(住宅新報社講師) 阪本健一
1 事前通知制度
(1) 意義
不動産登記法22条の規定により登記識別情報を提供しなければならない登記を申請するに際して(表示の登記に関する申請では所有権の登記がある土地の合筆,所有権の登記がある建物の合併または合体),登記識別情報を提供することができない正当な理由があり,提供しないで登記申請をした場合、…
登記官は,申請人である登記義務者,または登記名義人に対して当該申請があった旨および当該申請の内容が真実であると思料するときは,定められた期間内にその旨の申出をすべき旨を通知しなければなりません(不登法23条1項前段)。
通知を受けた申請人から,期間内に間違いがない旨の申出がされることにより,申請人が登記名義人であることが確認できるまで当該申請に係る登記はできません(23条1項後段)。
なお,この制度は,旧法の保証書制度に代わって設けられた制度であり,新法においては本人確認の方法がより厳格化されています。また,この制度は,登記識別情報の制度と違ってオンライン庁・オンライン未指定庁にかかわらず適用されます。
(2) 事前通知の方法
登記の申請が電子申請,書面申請にかかわらず,書面(事前通知書)を送付して通知されます(規則70条1項)。申請人が当該郵便物を速達にしてほしい旨の申出とともに速達料金に相当する郵便切手を提出したときは,速達郵便の取扱いがされます(規則70条3項)。
事前通知書には,当該通知を識別するための番号,記号その他の符号(通知番号等)を記載しなければなりません(規則70条2項)。
ⅰ 通知を受ける者が自然人の場合
登記義務者,または登記名義人の登記記録上の住所にあてて,郵便事業株式会社の内国郵便約款の定めるところにより名あて人本人に限り交付し,または配達する本人限定受取郵便,またはこれに準ずる方法で通知されます(規則70条1項1号)。
申請情報の内容とした申請人の住所に,たとえば,「何アパート内」または「何某方」と付記して事前通知書を送付されたい旨の申出があったときは,その申出に応じることができるとされています(準則44条1項)。
ⅱ 通知を受ける者が法人の場合
書留郵便または信書便の役務であって信書便事業者において引受けおよび配達の記録を行うものを使い(規則70条1項2号),当該法人の主たる事務所にあてて送付されます(準則43条2項前文)。
ただし,申請人から事前通知書を法人の代表者の住所にあてて送付を希望する旨の申出があったときは,その申出に応じることができ(準則43条2項ただし書),この場合には自然人への通知の方法に準じます(規則70条1項1号)。
ⅲ 通知を受ける者が外国に住所を有する場合
書留郵便もしくは信書便の役務であって信書便事業者において引受けおよび配達の記録を行うものまたはこれらに準ずる方法で通知されます(規則70条1項3号)。
(3) 前住所への通知
登記官は,通知を受ける者の住所について変更の登記がされているときは,事前通知に加え,登記記録上の前の住所あてに,当該申請があった旨を通知しなければなりません(不登法23条2項)。
ただし,以下の場合は除かれます。
ⅰ 通知を受ける者の住所についての変更もしくは更正の登記の登記原因が,行政区画もしくはその名称または字もしくはその名称についての変更または錯誤もしくは遺漏である場合(規則71条2項1号)
ⅱ 登記の申請の日が,通知を受ける者の住所についてされた最後の変更もしくは更正の登記の申請に係る受付の日から3カ月を経過している場合(規則71条2項2号)。
言い換えれば,通知を受ける者が,当該登記申請の日から3カ月以内に住所の変更もしくは更正の登記がされている場合に限り前住所へも通知が必要となります。
また,3カ月以内に2以上住所の変更もしくは更正の登記がされている場合には前のいずれの住所にも通知をしなければなりません(準則48条2項)。
ⅲ 登記義務者が法人である場合(規則71条2項3号)
ⅳ 本人確認情報の提供があった場合において,当該本人確認情報の内容により申請人が登記義務者であることが確実であると認められる場合(規則71条2項4号)
なお,この通知は,転送を要しない郵便物として書面を送付する方法またはこれに準ずる方法により送付されます(規則71条1項)。
(4) 事前通知に対しての申出の方法
ⅰ 登記申請を電子申請でした場合
事前通知書の内容を,通知番号等を用いて特定し,申請の内容が真実である旨の情報に電子署名を行ったうえ,登記所に送信します(規則70条5項1号)。
この申出の電子署名と,申請情報の電子署名が同一であれば申出人と申請人が同一であることが確認できるのです。
ⅱ 登記申請を書面申請でした場合
事前通知書に通知に係る申請の内容が真実である旨を記載,および記名し,申請書または委任状に押印したものと同一の印を当該書面に押印したうえ,登記所に提出します(規則70条5項2号本文)。
申出の押印したものと,申請書,または委任状に押印したものとが同一であれば申出人と申請人が同一であることが確認できます。
申請情報の全部を記録した磁気ディスクを提出した場合には,申請の内容が真実である旨の情報に電子署名を行い,これを記録した磁気ディスクを事前通知書と併せて登記所に提出します(同かっこ書)。
この場合,電子申請の場合と同様に電子署名で申出人と申請人が同一であることが確認されます。
事前通知をした場合において,通知を受けるべき者が死亡していた場合,その相続人全員から相続があったことを証する情報を提供するとともに,電子申請であった場合は,当該申請人の相続人が通知番号等を特定する情報および当該登記申請の内容が真実である旨の情報に電子署名を行って申出ができます。
書面申請であった場合は,当該申請人の相続人が事前通知書に登記申請の内容が真実である旨を記載し,記名押印したうえ,相続人の印鑑証明書を添付して申出ができます(準則46条1項)。
法人の代表者に事前通知をした場合において,その法人の他の代表者から申出をする場合,当該他の代表者の資格を証する書面,および事前通知書に登記申請の内容が真実である旨を記載し,記名押印したうえ,印鑑証明書を添付して申出ができます(準則46条2項)。
(5) 事前通知に対しての申出の期間
事前通知に対しての申出の期間は,通知を発送した日から2週間ですが,申出人が外国に住所を有する場合には,4週間とされます(規則70条8項)。
なお,事前通知書が受取人不明を理由に返送された場合,申出の期間の満了前に申請人から事前通知書の再発送の申出があったときは,再発送されます。この場合の申出の期間は,最初に事前通知書を発送した日から起算されます(準則45条)。
(6) 事前通知を要する登記申請の受付
旧法の保証書制度での登記申請の受付は,事前通知に対し間違いない旨の申出があった時点で行われていましたが,新法の事前通知制度では申請時に受付がされます。
そのことにより,事前通知が必要な登記申請がされた後にその不動産について他の登記申請がされた場合,先の登記申請の受否が決まるまでの間は後の登記申請は保留されることになります。
事前通知と共に前住所への通知がされている場合,前住所への通知に対する返答がない場合であっても事前通知に対するまちがいない旨の申出があれば,登記官が申請人の申請権限の有無を調査する必要がない限り登記は実行されます。
(7) 事前通知を省略できる場合
ⅰ 登記の申請が,登記の申請の代理を業とすることができる資格を有する代理人(資格者代理人)によってされた場合であって,登記官が,当該代理人からその申請人が申請権限を有する登記名義人であることを確認するために必要な情報の提供を受け,かつ,その内容を相当と認める場合には事前通知を省略できます(法23条4項1号)。
資格者代理人から提供を受ける申請人が申請の権限を有する登記名義人であることを確認するために必要な情報(本人確認情報)は,次に掲げる事項を明らかにするものでなければなりません(規則72条1項)。
ア 資格者代理人(資格者代理人が法人である場合にあっては,当該申請において当該法人を代表する者。以下同じ。)が申請人(申請人が法人である場合にあっては,代表者またはこれに代わるべき者。以下同じ。)と面談した日時,場所およびその状況(規則72条1項1号)
イ 資格者代理人が申請人の氏名を知り,かつ,当該申請人と面識があるときは,当該申請人の氏名を知り,かつ,当該申請人と面識がある旨およびその面識が生じた経緯(規則72条1項2号)
「申請人の氏名を知り,かつ,当該申請人と面識があるとき」とは,
●資格者代理人が,当該登記の申請の3カ月以上前に当該申請人について,資格者代理人として本人確認情報を提供して登記の申請をしたとき(準則49条1項1号)。
●資格者代理人が当該登記の申請の依頼を受ける以前から当該申請人の氏名および住所を知り,かつ,当該申請人との間に親族関係,1年以上にわたる取引関係その他の安定した継続的な関係の存在があるとき(同2号)。
のいずれかに相当する場合です。
ウ 資格者代理人が申請人の氏名を知らず,または当該申請人と面識がないときは,申請の権限を有する登記名義人であることを確認するために当該申請人から提示を受けた書類(規則72条2項に規定)の内容,および当該申請人が申請の権限を有する登記名義人であると認めた理由(規則72条1項3号)
提示を受ける書類に有効期間や有効期限がある場合には,提示を受ける日において有効なものに限ります(規則72条2項ただし書き)。
資格者代理人が,申請人の氏名を知り,かつ,当該申請人と面識がある場合には,ア・イが本人確認情報であり,申請人の氏名を知らず,または当該申請人と面識がない場合には,ア・ウが本人確認情報になります。
資格者代理人が本人確認情報を提供して登記の申請をする場合,当該資格者代理人が登記の申請の代理を業とすることができる者であることを証する情報も本人確認情報と併せて提供しなければなりません(規則72条3項)。
資格者代理人が登記の申請の代理を業とすることができる者であることを証する情報とは,
●日本司法書士会連合会または日本土地家屋調査士会連合会が発行した電子証明書(準則49条2項1号)
●当該資格者代理人が所属する司法書士会,土地家屋調査士会または弁護士会が発行した職印に関する証明書(準則49条2項2号)
●電子認証登記所が発行した電子証明書(準則49条2項3号)
●登記所が発行した印鑑証明書(準則49条2項4号)
のいずれかです。
なお,●・●の印鑑証明書は,発行後3カ月以内のものであることを要します(準則49条3項)。
ⅱ 申請に係る申請情報(委任による代理人によって申請する場合にあっては,その権限を証する情報)を記載し,または記録した書面または電磁的記録について,公証人から当該申請人が申請の権限を有する登記名義人であることを確認するために必要な認証がされ,かつ,登記官がその内容を相当と認める場合には事前通知を省略できます(法23条4項2号)。
なお,登記官が本人確認情報の内容を相当と認めることができない場合には,事前通知の手続が採られます(準則49条4項)。
また,相当と認める場合には事前通知は省略できますが,3カ月以内に住所変更もしくは更正の登記がされている場合の前住所への通知は原則的には必要となります。
ただし,当該本人確認情報の内容により申請人が登記義務者であることが確実であると認められる場合には前住所への通知も省略できます(規則71条2項4号)。
〔問題〕 次の問いに○×で答えなさい。
1 不動産登記法第23条第1項に規定する登記識別情報を提供できない場合に登記官が行う通知(事前通知)は,登記の申請が電子申請でされた場合には電子情報処理組織を使用する方法で,書面申請の場合には書面を送付する方法で行われる。
2 事前通知に対する申出は,登記の申請が電子申請でされた場合には電子情報処理組織を使用する方法で,書面申請の場合には書面を登記所に提出する方法(申請情報の全部を記録した磁気ディスクを提出した場合を除く。)によらなければならない。
3 事前通知が必要な登記の申請がなされても不動産登記法第25条第12号(登録免許税を納付しないとき)の規定により申請を却下すべき場合には,事前通知はされない。
4 平成20年1月9日に住所の変更の登記の申請がされた所有権の登記名義人から,同年3月3日に土地の合筆の登記申請がされ,登記をするに際し事前通知が必要な場合には,登記官は,事前通知のほかに,その登記名義人の登記記録上の前の住所あてに土地の合筆の登記の申請があった旨の通知をしなければならない。
5 事前通知が到達する前に登記の申請人が転居をし,その旨を郵便事業者に届出をしている場合は,事前通知書は転居後の住所に転送される。
6 Aが所有権の登記名義人とする登記がある土地の合筆の登記の申請を土地家屋調査士Bが代理人として申請した場合,登記官が,BからAが所有権の登記名義人であることを確認する情報(本人確認情報)の提供を受け,かつ,その内容が相当と認めたときには,事前通知をすることを要しない。
7 問6の場合で,登記官が本人確認情報の内容が相当と認めることができない場合には,この登記の申請は却下される。
8 問6の場合で,AとBは小学生時代からの知り合いで,社会人になってからも釣り仲間としてつき合いが続いている場合であっても,本人確認情報には,Aが申請の権限を有する登記名義人であることを確認するためにAから提示を受けた運転免許証・国民年金手帳等の内容,及び当該申請人が申請の権限を有する登記名義人であると認めた理由を内容としなければならない。
9 所有権の登記名義人が法人である場合,事前通知の送付は,申請人から当該法人の代表者の住所にあてて送付を希望する旨の申出があったとしても,当該法人の主たる事務所にあてて送付される。
10 所有権の登記名義人が法人で,申請人から事前通知書を法人の代表者の住所にあてて送付を希望する旨の申出があり,当該法人の代表者の住所あてに事前通知書を送付する場合,書留郵便で送付される。
11 法人の代表者に事前通知をしたが,その法人の他の代表者から,当該他の代表者の資格を証する書面及び事前通知書に登記申請の内容が真実である旨を記載し,記名押印したうえ,印鑑証明書を添付して同項の申出があったときは,その申出を適法なものとして取り扱う。
12 所有権の登記名義人が法人である土地の合筆の登記を,事前通知制度を使用する方法で申請したが,その2カ月前に当該本店の移転の登記の申請がされていた場合には,事前通知とともに前の所在地あてに合筆の登記の申請があった旨が通知される。
13 所有権の登記名義人が土地の合筆の登記を,事前通知制度を使用する方法で申請したが,その2カ月前に町名変更に伴い,所有権の登記名義人の住所変更の登記の申請がされていた場合には,事前通知とともに前の住所あてに合筆の登記の申請があった旨が通知される。
14 事前通知に対しての申出の期間は,申請人に通知が到達した日から日本国内に住所を有する場合は2週間,外国に住所を有する場合には4週間である。
〔解説〕
1 事前通知は電子申請,書面申請にかかわらず書面を送付する方法で行われる(規則70条1項)。×
2 事前通知に対しての申出の方法は,登記の申請が電子申請で行われた場合と書面申請で行われた場合とでは異なる。
電子申請の場合は,申請人が,事前通知の内容を,通知番号等を用いて特定し申請の内容が真実である旨の情報に電子署名を行ったうえ,登記所に送信する方法によらなければならない(規則70条5項1号)。
書面申請の場合は,申請人が,事前通知書に,通知に係る申請の内容が真実である旨を記載し,これに記名し,申請書または委任状に押印したものと同一の印を用いて当該書面に押印したうえ,登記所に提出する方法によらなければならない。
ただし,申請情報の全部を記録した磁気ディスクを提出した場合には,申請の内容が真実である旨の情報に電子署名を行い,これを記録した磁気ディスクを事前通知書と併せて登記所に提出する方法によらなければならない(規則70条5項2号)。〇
3 登記官が,事前通知が必要な登記の申請がなされても不動産登記法第25条第10号(事前通知に対して期間内に申出がないとき)以外の規定により申請を却下すべき場合には,事前通知はされない(法23条3項)。本問の場合は12号却下であるから事前通知はされない。〇
4 登記の申請の日が,登記義務者の住所についてされた最後の変更の登記の申請に係る受付の日から3カ月を経過している場合は前住所への通知は必要ないが(規則71条2項2号),本問の場合,3カ月を経過していないので事前通知とともに前住所への通知が必要である(法23条2項,規則71条2項2号)。〇
5 事前通知は,転送を要しない郵便物として書面を送付する方法またはこれに準ずる方法により送付するものとされているので(規則71条1項),転居後の住所へは転送されない。転送されたら事前通知の趣旨が損なわれる。×
6 申請が登記の申請の代理を業とすることができる代理人(資格者代理人)によってされた場合であって,登記官が当該代理人から当該申請人が所有権の登記義務者であることを確認するために必要な情報の提供を受け,かつ,その内容を相当と認めるときは事前通知を要しない(法23条4項1号)。〇
7 登記官が本人確認情報の内容を相当と認めることができない場合には,事前通知の手続が採られる(準則49条4項)。×
8 資格者代理人が申請人と面談した日時,場所およびその状況と(規則72条1項),資格者代理人が申請人の氏名を知り,かつ,当該申請人と面識がある場合であるので,当該申請人の氏名を知り,かつ,当該申請人と面識がある旨およびその面識が生じた経緯(規則72条2項)を本人確認情報とすることができる。×
9 所有権の登記名義人が法人である場合において,事前通知をするときは,事前通知書を当該法人の主たる事務所にあてて送付するものとされている。
ただし,申請人から事前通知書を法人の代表者の住所にあてて送付を希望する旨の申出があった場合には,代表者の住所にあてて送付することができる(準則43条2項)。×
10 所有権の登記名義人が法人である場合で当該法人の主たる事務所にあてて事前通知書を送付する場合には,書留郵便または信書便の役務であって信書便事業者において引受けおよび配達の記録を行うもので送付されるが(規則70条1項2号),当該法人の代表者の住所にあてて書面を送付する場合は,所有権の登記名義人が自然人の場合と同様に,郵便事業株式会社の内国郵便約款の定めるところにより名あて人本人に限り交付し,または配達する本人限定受取郵便またはこれに準ずる方法により送付される(規則70条1項1号)。×
11 法人の代表者に事前通知をした場合において,その法人の他の代表者から,当該他の代表者の資格を証する書面および事前通知書に登記申請の内容が真実である旨を記載し,記名押印したうえ,印鑑証明書を添付して同項の申出があったときは,その申出を適法なものとして取り扱う(準則46条2項)。〇
12 事前通知が必要な登記の申請の日から3カ月以内に申請人である所有権の登記名義人の住所についての変更もしくは更正の登記の申請がされている場合に登記官は,事前通知とともに前の住所にも登記の申請があった旨の通知をしなければならない(法23条2項)。
ただし,申請人が法人である場合には通知はされない(規則71条2項3号)。×
13 申請人の住所についての変更または更正の登記の登記原因が,行政区画もしくはその名称または字もしくはその名称についての変更または錯誤もしくは遺漏である場合(規則71条2項1号)に該当するので,前の住所に通知はされない。×
14 所有権の登記名義人が国内に住所を有する場合は通知を発送した日から2週間,外国に住所を有する場合には4週間である(規則70条8項)。「通知が到達した日から」ではない。×




