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国家試験改正法講座 「司法書士」 田中利和

(司法書士) 田中利和

 はじめに
 さて,本特集の最後になりました。今回も改正商業登記法・法務省民商第782号通達に関する出題論点を学習していきましょう。

 今回は株式に関する出題論点を中心に学習していきます。

1 株式譲渡制限に関する規定

 株式会社は,その発行する全部の株式の内容として,譲渡による当該株式の取得について当該株式会社の承認を要することを定めることができます(会社法107条1項1号)。

 当該定めのある譲渡制限株式の株主は,その有する譲渡制限株式を他人(当該譲渡制限株式を発行した株式会社を除く)に譲り渡そうとするときは,当該株式会社に対し,当該他人が当該譲渡制限株式を取得することについて承認をするか否かの決定をすることを請求することができ(136条),

 また,譲渡制限株式を取得した株式取得者は,株式会社に対し,当該譲渡制限株式を取得したことについて承認をするか否かの決定をすることを請求することができるとされています(137条)。


 そこで,株式会社が会社法136条または137条1項の承認をするか否かの決定をするには,株主総会(取締役会設置会社にあっては,取締役会)の決議によらなければならないとされています。


 譲渡制限の範囲の規定の仕方については,株主の投下資本の回収を害するような,譲渡を全面的に禁止するような規定の仕方は許されません。

 これに対して,譲渡の制限を受ける範囲を限定することは可能です。


 たとえば,「株主間の譲渡については承認を要しない」「従業員である者に譲渡をする場合には承認を要しない」とする旨を定めることは可能です。

 つまり,譲受人について,制限を設けることは可能ですが,譲渡人について,その制限を設けることは許されません。株主平等の原則に反するからです。


 会社が株式の譲渡制限に関する規定を設定した後,この内容を変更することは可能とされています。
 それでは,その論点に関する問題を見てみましょう。


 予想問題

〔問題1〕 「当社の株式を株主以外の者が譲渡により取得する場合には,取締役会の承認を要する」との定款の定めがある株券発行会社が,「当社の株式を譲渡により取得する場合には,取締役会の承認を要する」と定款を変更した場合には,株式の提出に関する公告を証する書面を添付しなければならない。


〔解答・解説〕
 誤り。株券発行会社が,譲渡による当該株式の取得について当該株式会社の承認を要すること(会社法107条1項1号)についての定款の定めを設ける定款の変更をする場合には,

 当該行為の効力が生ずる日までに当該株券発行会社に対し全部の株式(種類株式発行会社にあっては,当該事項についての定めを設ける種類の株式)に係る株券を提出しなければならない旨を当該日の1カ月前までに,公告し,かつ,当該株式の株主およびその登録株式質権者には,各別にこれを通知しなければならないとされています。

 しかし,この定款変更は,譲渡制限の範囲を縮小する場合も拡大する場合も,株主総会の特別決議(309条2項11号)によりすることができるので(商事法務『立法担当者による新会社法の解説』P84~85),株券の提出に関する公告等については要しません。

 公告等は,株式の譲渡制限に関する規定の設定の際に要求されているにすぎず,変更する際には不要です。

 旧商法においては,譲渡制限の範囲を拡大する場合は,株券提出公告が必要とされていましたので,旧商法時代から勉強している方は特に注意が必要です。


2 株券を発行する旨の定款の定めの設定

 旧商法下においては,株式会社は,以下の例外を除いて,原則として株券を発行することとされていました。

① 定款に株券の不発行の定めがある場合

② 株式譲渡制限会社において株主から株券発行の請求がない場合

③ 株券不所持の申出があった場合において会社が株券を発行しない旨を株主名簿に記載した場合
 会社法では,株式会社は,原則として,株券を発行せず,株券を発行するためには,定款に株券を発行する旨の定めを設けることとされました。


 なお,会社法施行時に存在した既存の株式会社のうち株券不発行の登記がない会社については,整備法により,定款に株券を発行する旨の定めがあるものとみなされ(整備法76条4項),登記官の職権により「株券発行会社である旨」の登記がされています(113条4項)。


 予想問題

〔問題2〕 株券を発行する旨の定款の定めの廃止の登記を申請する場合には,会社法218条1項に係る株券の廃止公告をしたことを証する書面を必ず添付しなければならない。

〔解答・解説〕
 誤り。株券発行会社は,その株式に係る株券を発行する旨の定款の定めを廃止する定款の変更をしようとするときは,当該定款の変更の効力が生じる日の2週間前までに,

①その株式(種類株式発行会社にあっては,全部の種類の株式)に係る株券を発行する旨の定款の定めを廃止する旨,

②定款の変更がその効力を生じる日,

③効力が生じる日において当該株式会社の株券は無効となる旨を公告し,かつ,株主および登録質権者には,各別に通知しなければなりません(会社法218条1項)。


 しかし,当該会社が株式の全部について株券を発行していない場合には,定款の変更の効力が生じる日の2週間前までに,株主および登録株式質権者に対し,上記①②の事項を通知すれば足りるとされています(218条3項)。

 株券を発行していない場合には,株式の全部について株券を発行していないことを証する書面を添付するので(商登法63条),必ずしも公告をしたことを証する書面を添付する必要はありません。したがって,本問は誤りです。


3 株式の併合

 株式会社は,株主総会の特別決議により,株式の併合を行うことができ(会社法180条1項・2項,309条2項4号),取締役が株式の併合を必要とする理由を株主総会において説明しなければならないとされています(180条3項)。

 さらに,株券発行会社(株式の全部について株券を発行していない場合を除く)は,株式の併合を行う場合には,株券を株式会社に提出させる手続をとらなければなりません(219条)。

 旧商法下においては,例外的に併合に適する株式の数を記載した株券は会社に提出しなくてもよい旨を定めることができることとされていましたが,会社法においては,そのような定めをすることはできず,株券発行会社は,すべての株券を提出させるべきであるとしています。


 予想問題

〔問題3〕 株券発行会社が株式の併合を行う場合においては,併合に適する株式数を記載した株券を会社に提出しなくてもよい旨を定めた株券の提供公告をしたことを証する書面として添付して,株式の併合による変更登記を申請することができる。

〔解答・解説〕
 誤り。旧商法では,例外的に併合に適する株式の数を記載した株券を会社に提出しなくてもよい旨を定めることができるとされていました(旧商法214条3項)。


 しかし,会社法においては,このような定めをすることはできず,すべての株券を提出すべき旨を公告しなければなりません。

 したがって,会社法219条1項2号の株券提出公告が適法になされているとはいえず,当該効力発生日においても,株式の併合の効力は生じていないことになります。よって,株式の併合の登記は申請することができません。


4 株式の消却

 予想問題

〔問題4〕 株式会社が自己株式の消却による変更登記を申請する場合には,定款に自己株式の消却をした場合には消却した株式の数について発行可能株式総数が減少する旨の定めがあるときは,自己株式の消却による変更登記と発行可能株式総数の減少による変更登記を併せて申請することができる。

〔解答・解説〕
 正しい。会社は,取締役の決定(取締役会設置会社にあっては,取締役会)によって,自己株式の消却をすることができ,その場合には,消却する自己株式の数(種類株式発行会社にあっては,自己株式の種類および種類ごとの数)を定めなければならないとされています(会社法178条)。


 会社法においては,株式の消却・株式併合が行われた場合,当然には当該株式会社の発行可能株式総数には影響は与えないものとする整理がされています。

 すなわち,発行可能株式総数は定款で定められるべき事項であり(37条,98条,113条),定款を変更するためには,原則として株主総会の決議が必要となります(466条)。

 会社法においては,例外的に株主総会の決議によらずに定款変更をすることができる場合については,逐一その旨の明文の規定を設ける(112条1項,608条3項,610条)こととしており,

 そのような明文の規定が設けられていない株式の消却・併合に関しては,そのことによって発行可能株式総数につきその減少等の影響を与えるものではないとされています(商事法務『立法担当者による新会社法の解説』P28)。


 しかし,定款に自己株式の消却をした場合には消却した株式の数について発行可能株式総数が減少する旨の定めがある場合には当該定めは有効であるとされています(商事法務『論点解説 新・会社法 千問の道標』P182参考)。

 したがって,本問は,正しいということになります。


 なお,会社法においては,定款を変更して発行可能株式総数を減少する場合には,当該変更後の発行可能株式総数が当該変更の効力発生時における発行済株式の総数を下ることができないこととされていますので,注意してください(113条2項)。

5 準備金の資本組入れ

 会社法においては,資本金・準備金の額の減少については主に次の①~④のような見直しが行われました。

①旧商法におけるような制限を設けない(いずれも0円とすることが可能),

②資本金の額を減少して準備金に計上することが認められた(会社法447条1項2号),

③準備金の額を減少して資本金に計上する場合の決定機関は株主総会とされた(448条1項2号),

④定時株主総会において資本金の額を減少する場合であって当該減少の後,なお分配可能額が生じないときの決議要件は普通決議で足りるものとされました(447条1項,309条2項9号)(きんざい『月刊登記情報553号』商業登記実務のための会社法Q&A(15)資本金・準備金の額の減少より一部引用)。


 準備金の減少をする場合には,株主総会の決議により,

①減少する準備金の額,

②減少する準備金の額の全部または一部を資本金とする場合にはその旨およびその資本金とする額,

③効力発生日を定めなければなりません(448条1項)。この場合においては,①の減少する準備金の額は,③の効力発生日における準備金の額を超えてはならない旨の規定が設けられていますが(448条2項),減少額に制限はありません。


 なお,株式会社が株式の発行と同時に準備金の額を減少する場合において,当該準備金の額の減少の効力が生ずる日後の準備金の額が当該日前の準備金の額を下回らないときは,取締役の決定(取締役会設置会社にあっては,取締役会の決議)により,準備金の額の減少をすることができます(448条3項)。

 予想問題

〔問題5〕 株式会社が準備金を減少して,資本金に組み入れる場合には,準備金の額を資本金に組み入れる取締役会議事録を添付して利益準備金の資本組入れによる変更登記を申請しなければならない。

〔解答・解説〕
 誤り。旧商法下では,利益や利益準備金を資本に組み入れることが認められていました。

 しかし,企業会計原則は資本と利益との混同を禁止していたので,旧商法の規定と企業会計原則と整合していませんでしたが,会社法においては,株式会社の会計は一般の公正妥当と認められる企業会計の慣行に従うこととされました(会社法431条)。


 また,例外を認める必要性や合理性も特にないとして,会社法の委任を受けた会社計算規則では,利益準備金およびその他利益剰余金の資本への振替えを行うことはできないと明記されました(会社計算規則48条1項参照)。

 したがって,利益準備金の資本組入れによる変更登記は申請することができません(きんざい『月刊登記情報548号』 商業登記実務のための会社法Q&A(11)資本金の額その他の株主資本の変動より一部引用)。


 また,会社法においては,旧商法下の規制(準備金の減少時に資本金の4分の1以上を残さなければならないとする規制)は,廃止されています(商事法務『立法担当者による新会社法の解説』P128)。

 予想問題

〔問題6〕 準備金の減少により,減少した準備金の額の一部を資本金に組み入れる場合には,債権者保護関係書面を添付しなければならない。


〔解答・解説〕
 誤り。株式会社が資本金または準備金(以下「資本金等」という)の額を減少する場合(減少する準備金の額の全部を資本金とする場合を除く)には,当該株式会社の債権者は,当該株式会社に対し,資本金等の額の減少について異議を述べることができ(会社法449条),

 この場合,株式会社は,

①当該資本金等の額の減少の内容,

②当該株式会社の計算書類に関する事項として法務省令で定めるもの,

③債権者が一定の期間内に異議を述べることができる旨を官報に公告し,知れている債権者に各別に催告しなければなりません(449条2項)。

 ただし,定時株主総会において準備金の額のみの減少を決議した場合であって,減少する準備金の額が当該定時株主総会の日(439条前段に規定する場合にあっては,436条3項の承認があった日)における欠損の額を超えないときは,債権者保護手続を要しないとされています(449条1項ただし書,会社計算規則179条)。


 なお,準備金の資本組入れの登記の申請書には,

①株主総会議事録(商登法46条2項),ただし,会社法448条3項に該当する場合には,株主総会議事録に代えて,取締役会の過半数の一致があったことを証する書面または取締役会議事録(商登法46条1項・2項)および会社法448条3項に規定する場合に該当することを証する書面(商登規則61条7項),

②減少に係る資本準備金の額が計上されていたことを証する書面(商登法69条)を添付しなければなりません。


 しかし,準備金の額は登記事項ではないので,準備金の額の減少に係る債権者保護手続が必要とされる場合であったとしても,債権者保護手続を行ったことを証する書面の添付は要しません(法務省民商第782号通達)。


 ●参考書籍等
『立法担当者による新会社法の解説』商事法務
『月刊登記情報548号』きんざい
『月刊登記情報553号』きんざい
『論点解説 新・会社法 千問の道標』商事法務

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