ネコでも分かる供託法 「供託手続」 田中利和
ネコでも分かる供託法:第15回「供託手続」
司法書士 田中利和
(1) 供託申請手続
教授「それでは,今日から供託手続に入っていこう。細かい手続の部分になるので正直なところ面白くないところだけど我慢してね」
司法「はい。分かりました」
教授「あらかじめ断っておくけれど,今から話をするのは電子情報処理組織による供託(オンラインによる供託)の論点ではなく,供託書という紙の媒体を使用して供託する場合について学習していくよ。過去の本試験も,もっぱら紙による申請を前提にしているからね」
司法「了解しました」
教授「供託手続については,供託規則に定められている。供託申請手続は,過去の本試験を見る限り出題は少ないね。出題されたとしても,供託先例からの出題ではなく,供託規則からの出題だ。ということで,供託規則を中心に学習しておけば問題ないと思う」
司法「はい,分かりました。早く本題に入りましょう」
教授「やる気十分だね。供託申請の際に使用する供託書(供託規則13条)や,それに記載する金額,数量の記載に用いる文字(供託規則6条2項),供託書の訂正方法(供託規則6条4項)などが,供託規則に定められている。平成12年度に,これらに関する論点の出題があったので確認しよう」
供託の申請は,法令に定める事項を記載した書面によりしなければならないが,その様式は適宜なもので足りる。(平成12年 問8肢1)
供託書に記載した供託金額を訂正するときは,誤記した金額に二線を引いて,その近接箇所に正書し,その字数を欄外に記載しなければならない。(平成12年 問8肢2)
教授「結論から言うと,いずれも誤りの肢だ。肢1は,供託書の様式は,供託規則13条1項および2項に規定があり,現行法下においては,オンライン指定庁ではオンライン申請も認められているので,『書面によりしなければならない』という部分も誤っている。
肢2については,供託規則6条6項の規定により,供託書等に記載した供託金額については,訂正,加入または削除をしてはならないとされている。したがって,誤りということになる。肢2の同様の論点として,平成7年,平成2年にも出題されているよ」
司法「細かい論点の問題ですね」
教授「確かにそうだね。このような供託書の記載についての論点は,平成12年度以降の出題には見当たらないね」
(2) 供託書の添付書類
教授「供託申請手続に関する論点として出題が多いのは,供託申請の際に,どのような添付書類が必要かという問題だ。供託申請の際の添付または提示すべき書類は,次のとおりだ」
①資格証明書(自然人以外の場合)(供託規則14条1項・2項・3項)
②代理権限証書(代理人による供託の場合)(供託規則14条4項)
③弁済供託をする場合において,供託官に供託通知書の発送を請求する場合には,供託通知書(供託規則16条1項・2項)
④振替国債を供託しようとするときは,その振替国債の銘柄,利息の支払期および償還期限を確認するために必要な資料(供託規則14条の2)
(3) 資格証明書
教授「それでは,資格証明書の出題に関する論点から見ていこう。
供託官は,供託書の記載事項から実体的な要件を審査するほか,供託の申請をしようとする者が,適法に供託当事者となり得る者か否か,また,有効な供託をするために申請代理権を有する者であるか否かについて審査権限を有しているんだ(日本加除出版『供託の知識167問』566頁より一部引用)」
司法「なるほど。だから,自然人以外の者,つまり,法人が供託を申請した場合には,その法人の代表者が当該申請の資格を有しているかどうかの判断をするために,資格証明書の添付または提示を要求しているのですね」
教授「過去の本試験の問題を見てみよう」
法人が供託しようとするときは,その代表者の資格を証する書面が必要であるが,その書面が登記された法人について登記所の作成したものであるときは,これを供託所に提示すれば足り,提出することを要しない。(平成12年 問8肢3)
登記された法人以外の法人の職員の給与債権が差し押さえられている場合において,当該法人が供託をするときは,関係官庁が作成した代表者の資格証明書を添付しなければならない。(平成8年 問10肢ウ)
教授「いずれの肢も正しいね。出題の論点としては,資格証明書を添付するのか提示するのか,ということが問われている。ポイントは,当該法人が『登記された法人』か『登記されていない法人』か,ということだ」
司法「供託規則14条1項では『登記された法人』については『提示』,同規則14条2項では『登記されていない法人』については『添付』と規定されていますね」
教授「添付または提示する場合の書面については,供託事務取扱手続準則31条に規定されている。確認しておいてね」
供託者が法人である場合における代表者の資格を証する書面は,登記された法人については登記事項証明書,その他の法人については関係官庁の証明書とする(供託準則31条)。
教授「ちなみに,法人でない社団または財団であって,代表者または管理人の定めのある者が供託をしようとする場合,当該社団または財団の定款または寄附行為および代表者または管理人の資格を証する書面を供託書に添付しなければならないとされている(供託規則14条3項)。ちなみに,この条文に関する論点として平成4年に出題されているよ」
(4) 代理権限証書
教授「代理権限証書に関する論点に入っていこう。まず,供託規則14条4項の規定を確認してくれるかい」
代理人によって供託しようとする場合には,代理人の権限を証する書面を提示しなければならない。この場合において,第1項後段の規定は,支配人その他登記のある代理人によって供託するときに準用する(供託規則14条4項)。
司法「代理権限証書は,提示で足りるようですね」
教授「そういうこと。平成4年,平成12年に出題されているね。具体的な代理権限証書としては,委任による代理の場合には『本人の委任状』,会社の支配人の場合には『登記事項証明書』,法定代理人の場合には『戸籍の謄・抄本』がそれに該当する」
司法「ところで,教授,『提出』する場合もあれば,『提示』で足りる場合もあるのですが,その理由は何ですか?」
教授「昭和53年3月の供託規則の改正前は,すべて提出または添付することとされていたようなんだ。法人の代表者の資格証明書について,供託者が登記された法人であるときは,供託後にその確認の必要性が生じた場合は,当該法人の登記を調査することは容易であるので,必ずしも提出まで要求されなかったようなんだ」
司法「提示された登記所発行の登記事項証明書を確認しておけば,後日,当該法人の登記を調査することは容易ですよね」
教授「そこで,供託事務簡素化(供託所の保管すべき書類の削減等)のために,提示で足りることとされたんだ。
代理権限証書については,そもそも供託申請する際に本人の真の代理人であることや,法定代理人本人であることを証明することは要求されていない。
他方,他人の代理人を装い,他人名義で供託したとしても何の不利益も受けないし,本人とされた者も何の不利益も受けない。
仮に他人のために供託をしようとするならば,直接その他人の名前で供託することもでき,場合によっては,第三者供託をすることもできる。そういった理由から,代理権限証書の『添付』ではなく,『提示』で足りることとされたんだ(日本加除出版『供託の知識167問』573~574頁より一部引用)」
(5) 供託通知書
教授「弁済供託をした場合には,供託の成立によって,被供託者について,還付請求権が発生することになる。
したがって,供託をした者は,遅滞なく債権者に供託の通知をしなければならないとされている(民法495条3項)。実体法たる民法は『供託をした者は通知をしなければならない』とされているが,供託規則上は,供託者が被供託者に供託の通知をしなければならない場合には,供託者は,供託官に対し,被供託者に供託通知書を発送することを請求することができるとされている(供託規則16条1項)」
司法「つまり,供託者は,①供託者自ら供託通知書を発送する方法と,②供託官に供託通知書の発送を請求する方法のいずれかを選択することになるのですね」
教授「そういうこと。平成17年の供託規則の改正前までは,供託者が被供託者に供託の通知をしなければならない場合には,
①被供託者は供託通知書の送付を受けることによって,供託の事実を知ることができ,これにより還付請求権を行使する契機となること,
②還付請求をする者が払渡請求書に供託通知書を添付することによって,被供託者本人である蓋然性が高いと判断でき,本人確認の重要な資料にもなることから,供託通知書の発送については供託所が関与して確実に行うこととされ,供託申請の際に,供託通知書の添付が義務づけられていたんだ(旧供託規則16条1項)」
司法「なるほど」
教授「しかし,民法上は,このような取扱いについては,供託成立の有効要件とはされていない(民法495条3項)。そこで,供託通知書の発送を供託官に請求したときに限り,供託所が供託通知書の発送に関与することとされたんだ。それでは過去の本試験の問題を確認しておこう」
供託者が被供託者に供託の通知をしなければならない場合には,供託者は,供託書に供託通知書を被供託者の数に応じて添付しなければならない。(平成18年 問11肢オ)
供託者が被供託者に供託の通知をしなければならない場合において,供託書に,供託通知書及び郵券を付した封筒を被供託者の数に応じて添付しなければならない。(平成7年問11肢5)
司法「ということは,いずれの肢も誤りですね」
教授「そのとおり。平成7年の肢は細かい論点だね。ちなみに,根拠条文は供託規則16条2項1号・2号だ。その他,平成元年にも同様論点が出題されているよ。注意してね。供託通知書の出題論点として,もう1問だけ見ておこう」
金銭債権の一部に対して差押えがされた場合において,その全額に相当する金銭を供託するときは,供託者は被供託者に供託の通知をしなければならない。(平成16年 問11肢ア)
教授「結論としては正しい肢だ。この肢の論点は分かるかい?」
司法「金銭債権の一部に対して差押えがされた場合,その全額に相当する金銭を供託することができますが(民執法156条)……」
教授「本稿の8回目の『金銭債権について一部の差押えを受けた場合における,「当該金銭債権の全額に相当する金銭」の供託』のところで学習したね。第三債務者が,金銭債権の全額を供託した場合,差押債権額を超える部分は弁済供託の性質を有しているということだったね。
だから,債務者たる被供託者が供託受諾をして還付請求することができるので,供託者は被供託者に供託の通知をしなければならないとされているんだ(昭55・9・6民四第5333号通達)」
司法「なるほど,よく分かりました」
教授「参考までに,OCR用供託書用紙(供託規則16条4項)により供託申請した場合を説明しておこう」
供託規則第16条第1項の場合において,供託者がOCR用供託書を提出したときは,第2項第1号の規定にかかわらず,供託通知書を添付することを要しない。この場合においては,当該OCR用供託書には,供託通知書の発送を請求する旨の記載をしなければならない(供託規則16条4項)。
教授「OCR(『Optical Character Reader』の略)とは,光学式文字読取装置のことなんだ。簡単に言えば,文字を読み取る装置だね。
この装置の機能によって,『供託通知書』『封筒の宛名・差出人の記載』を作成することができるとされているので,OCR用紙を使用した供託申請の場合には,供託官が,供託の種類に従って,供託通知書を調製しなければならないとされているから,供託通知書の添付は不要なんだ(日本加除出版『供託の知識167問』578頁より一部引用)」
(参考書籍)
●『供託の知識167問』日本加除出版
●『登記情報』524号「改正供託規則の解説」きんざい
●『別冊ジュリスト供託先例判例百選』有斐閣
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