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平成21年度国家試験を展望する「司法書士試験」鈴木宏美


平成21年度
国家試験を展望する
司法書士試験
住宅新報社講師 鈴木宏美

1.20年度試験の総括
 平成20年度の試験は,筆記試験が7月6日(日曜日),口述試験が10月14日(火曜日)に行われ,11月4日(火曜日)の午後4時に,最終合格者の発表がありました。見事合格をされた皆さま,本当におめでとうございます。

 司法書士試験の出願者数は,毎年増加傾向にあり,本年度は,3万3,007名(538名増)となりました。受験者数(午前の部および午後の部の双方を受験した者の数)は,2万7,102名(242名増)であり,最終の合格者数は931名(男691名・74.2%,女240名・25.8%)でした。

(過去3年間の推移)
出願者数 18年度 31,878名    19年度 32,469名    20年度 33,007名
受験者数 18年度 26,278名   19年度 26,860名   20年度 27,102名
合格者数 18年度 914名     19年度 919名     20年度 931名
合格率  18年度 3.4%     19年度 3.4%      20年度 3.4%

筆記試験について
 法務省の発表によると,本年度の筆記試験合格点は,満点262点中189.5点以上でした。

 筆記試験には,午前の部(9:30~11:30)と午後の部(13:00~16:00)がありますが,午前の部の試験(多肢択一式問題)については満点105点中78点に,午後の部の試験のうち,多肢択一式問題については満点105点中84点に,記述式問題については満点52点中19.5点に,それぞれ達しない場合は,それだけで不合格とされました。
 

司法書士試験の筆記試験合格点は,平成13年度から発表されるようになりましたが,本年度は公表が始まって以来,最も低い合格点となりました。これは記述式試験のうち,不動産登記法の問題の出題形式が一変したことに,その一因があるものと推測されます。

(過去3年間の筆記試験の基準点)
 
合格点@(総合点) 18年度 202.5点 19年度 211.5点 20年度 189.5点
択一式 午前 18年度 81点 19年度 84点 20年度 78点
択一式 午後 18年度 75点 19年度 84点 20年度 84点
記述式        18年度 31.5点 19年度 30.0点 20年度 19.5点

(1)午前の部
 午前の部は,試験時間2時間で,5肢択一式により35問の出題があります。
 本年度の内訳は,憲法3問,民法21問,刑法3問,商法・会社法8問でした。

●憲法 本年度は3問中2問が推論問題であり,1問が条文問題でした。頻出論点であったため,比較的問題なく解答できたものと思われます。


●民法 全体的な難易度は標準的なものでした。内容はバランスのとれた基本的なものであり,条文や基本的な判例の知識をしっかり押さえていた受験生であれば,正解を出すのにそれほど困難ではなかったと思われます。


 なお,親族・相続の分野では,ニュースでも大きくとり上げられた認知の問題で新しい論点(凍結精子を用いた死後懐胎子)が出題されました。


●刑法 本年度は,総論から1問,各論から2問の出題がありました。本年度の問題は,典型的な論点から出題されており,前年度よりは取り組みやすかったでしょう。

 ただし,3問すべてが判例からの出題であったことから,刑法にあまり勉強時間を割いていない受験生にとっては,やや難しかったのではないかと思われます。


●商法・会社法 昨年度に引き続き,8問すべてが会社法からの出題でした。前年度と同様に,細かな条文知識を問う問題もありましたが,出題形式がすべて組み合わせであったため,他の肢との関係から容易に正解にたどり着けたのではないかと思います。


(2)午後の部
 午後の部は,試験時間3時間で,5肢択一式により35問,記述式により2問の出題があります。
 本年度の択一式の内訳は,民事訴訟法5問,民事執行法1問,民事保全法1問,司法書士法1問,供託法3問,不動産登記法16問,商業登記法8問であり,記述式の内訳は,不動産登記法1問,商業登記法1問でした。


①多肢択一式試験
●民事訴訟法・民事執行法・民事保全法 例年過去に出題のない論点を混ぜてくる傾向があるものの,全体としては,条文や過去問で十分対処できる問題でした。

●司法書士法 本年度は,司法書士名簿の登録および司法書士会への入退会に関する問題でした。条文をしっかり読み込んでいる受験生であれば,容易に正解できたでしょう。

●供託法 本年度は,弁済供託,担保(保証)供託,供託物払渡請求に関する出題でした。先例と条文を基本とした内容であり,あまり時間をかけることなく正解にたどり着けたでしょう。

●不動産登記法 前年度と比べると,全体的にやや難易度が上がったかもしれません。しかし,出題形式がすべて組み合わせであったため,基本的には,他の肢との関係から解答することができるものが多かったように思われます。

 不動産登記法の出題数は16問もありますので,この分野で,いかに失点を最小限に食い止めるかが司法書士試験の合否のポイントです。

●商業登記法 特例有限会社,持分会社,外国会社といった受験生によっては苦手意識のある論点・知らない論点もあったかもしれませんが,全体的な難易度は標準的なものでした。

 なお,外国会社の登記に関する問題については,今回正解が2つ存在し,出題ミスであることが法務省から発表されています。

②記述式試験
 平成20年度は,以下の事項に関する知識および能力を試すための出題がされました。

第36問(不動産登記法)
1 第1欄について
 根抵当権者が本店移転を行った経緯を登記記録から読み取り,既に登記されている根抵当権につき必要な登記を選別し,根抵当権の表示の変更の登記の申請をするときの登記申請書の正確な記載及び添付書面の特定

2 第2欄について
 根抵当権者が根抵当権の元本確定請求を行った等の事実を別紙資料から抽出し,不登法第93条に基づき根抵当権の元本確定の登記を単独申請する場合の登記申請書の正確な記載及び添付書面の特定

3 第3欄について
 抵当権者が合併を行った経緯を登記記録から読み取り,既に登記されている抵当権につき必要な登記を選別し,抵当権の合併による移転登記の申請をするときの登記申請書の正確な記載及び添付書面の特定

4 第4欄について
 不動産の所有者が破産し,管財人が選任された経緯を会社の登記記録から読み取るとともに,管財人が破産財団に属する不動産を任意売却した等の事実を別紙資料から抽出し,所有権の移転の登記の申請をする場合の登記申請書の正確な記載及び添付書面の特定

第37問(商業登記法)
1 株式会社の取締役,代表取締役,監査役及び会計監査人の変更,株主名簿管理人の設置,株券発行会社の定めの廃止並びに募集株式の発行の各登記手続における登記申請書の正確な記載及び添付書面並びに登記懈怠とならない申請日

2 司法書士として登記の申請を代理すべきでない事項
※ 平成20年度司法書士試験多肢択一式試験の正解等(法務省ホームページより抜粋)

●不動産登記法 特筆すべきは,出題形式の変化です。最近までの出題形式は,あらかじめ文章によって示された事実関係に従って解答を作成する形式でした。これに対して,本年度は,会社の登記事項証明書や契約書等の書面を別紙として提示し,そこから受験生自身が権利変動を読み取って判断しなければならない形式となりました。

 別紙を数多く読むことが要求されており(別紙の数が別紙1から16までありました),予想以上に,実務を意識した問題となりました。ただし,出題内容は,根抵当権の登記名義人表示変更・元本確定,合併による抵当権移転,売買による所有権移転といった基本的なものであり,問われた論点は標準的なものであったといえます。

●商業登記法 不動産登記法のような出題形式の変化こそありませんでしたが,解答の分量が非常に多く,試験当日の限られた時間の中で解くのは大変だったと思います。

 問われた論点は典型的なものでしたが,時間が足りなくて答案を書ききれない受験生が多かったように思われます。


口述試験について
 口述試験は,筆記試験合格者を対象として実施されるものです。筆記試験に合格したからといって,口述試験で不合格となる可能性がないとは言い切れませんが,例年,口述試験の欠席者を除いて,受験した人は必ず合格しています。本年度は筆記試験合格者の全員が口述試験を突破し,最終合格しました。


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