国家試験合格スケジュール「司法書士」3 安部一郎

5.午前試験科目・刑法
(1)試験傾向
 全部で3問の出題で,総論部分から1問ないし2問,各論部分から1問ないし2問出題されます。総論部分については満遍なく出題される傾向があります。ただ,昔と比べて難解な学説を聞く問題が少なくなってきています。

 一方,各論については出題が顕著です。毎年といっていいほど,財産犯(窃盗罪・強盗罪・詐欺罪・恐喝罪・横領罪)から出題されています。

 その次に出題が多いのが,文書偽造に関連する罪です。片や,まったくといっていいほど出題されない犯罪類型もあります(名誉毀損罪・内乱罪・略取に関する罪)。


(2)学習法
 この科目は,消極的な学習をすることをお勧めします。それは,過去問の範囲で出題された知識にとどめる学習法のことです。このような学習をしておくことにより,良くも悪くも他の受験生と差がつきません。つまり,自分が得点できれば他人も得点できるし,自分が解けなければ他人も解けない,そういう状態でよいでしょう。

 この科目で,他の人に差をつけようとすると,それこそ民法以上の学習時間が必要になります。出題されていない分野について,テキストなどを読み込む学習は労多く益が少ないでしょう。

特に,この科目は面白く,興味がわきやすく「こうなったらどうなるのだろう?」と思いがちになりますが,そういったことは合格後に考えればいいと思われます。
 この科目は「はまりすぎないように」を心がけて学習しましょう。

6.午後試験科目・民事訴訟法・
民事執行法・民事保全法
(1)試験傾向
①民事訴訟法
 5問の出題です。従来は条文さえしっかり押さえておけば,正解を導くことはそれほど難しくない科目でしたが,司法書士に簡易裁判所での訴訟代理権が付与され得ることになったので,一定程度傾向変化が見られています。

 具体的にいえば,毎年必ずといっていいほど「現場で思考する問題」「推論問題」「○○主義に関する問題」が出されています。多い年で2問は,この手の問題が出題されます。ただ,基本は条文中心の知識問題です。ここについては,全体から満遍なく出題されますが,「証拠」に関する分野は毎年出題がなされます。

②民事執行法・民事保全法
 各1問ずつの出題です。民事執行法は「不動産執行」「債権執行」「不服申立て手続」が出題の中心で,民事保全方法は「保全命令手続」「不服申立て手続」が出題の中心です。
 民事訴訟法と異なり,出題は条文の知識,そして過去問の繰り返しとなっています。


(2)学習法
 まず,すべてに共通することは手続法だということです。この手続法は,全体の流れをつかんでいないと,しっくりとはいきません。
 常日ごろから,「今,自分はどの分野のどこをやっているのか」ということを意識しながら,学習を進めるようにしてください。

①民事訴訟法
 まず,従来型の条文中心の学習は必須です。テキストなどで出てくる条文は,すべて一通り目を通すべきでしょう。そして,忘れやすいところではあるので,過去問での反復学習が効果的です。 

 また,それ以外の問題については,これといった学習法はありません。強いていえば,1つ1つの条文・制度について,民法のように制度趣旨から考えていくという作業がよいでしょう。

 この科目の面倒なところは,専門用語の多さです。分かりにくい専門用語が多いのですが,必ず理解するだけでなく,記憶まですることを心がけてください。

②民事執行法・民事保全法
 こちらについては,刑法と同じく消極学習で対応できるでしょう。ほとんどの合格者が過去問以外には手を出しません。過去問が解ければ,理解が追いついていなくても,何とかなるところではあります。


7.午後試験科目・供託法
(1)試験傾向
 3問の出題です。分野としては「弁済供託」「供託手続」「執行供託」の3つが多く出題されます。
 また,過去問の知識を持っていれば,正解にたどりつけるというのもこの科目の特徴です。難解な肢が分からなくても,正解に至ることはできます。難度は,それほど高くないので,ぜひ全問正解したい科目です。

(2)学習法
 上記のとおり,やはり過去問中心の学習がよいでしょう。過去問で出題された分野について,結論を押さえていく学習が効率的です。
 また,先例が多くありますが,先例の事案を変えずに出題がされますので,丸暗記という姿勢でもこの科目を乗り切ることは可能です。


8.午後試験科目・司法書士法
(1)試験傾向
 1問の出題です。平成12年で出題が一旦中止しましたが,15年より復活しています。そして,復活してからの出題には特徴があります。「司法書士法人」「司法書士がなしえない業務の範囲」について,必ず肢レベルでの出題があるということです。

(2)学習法
 平成15年からの過去問があまり蓄積されておらず,また,平成12年前の過去問があまり現在の傾向とは合っていない以上,ここは条文を読んでいくという勉強方法が望ましいでしょう。条文数は結構な量になりますが,1つ1つ自分が司法書士になったことを想像しながら,読んでいくとイメージがつかみやすいと思います。


9.午後試験科目・不動産登記法
 不動産登記法および次でお話しする商業登記法は,記述式の問題でも出題されます。
 また,午後の試験科目の中では最も精度の高い記憶が要求されることになるため,時間をかけて学習をすることになります。

(1)試験傾向
 午後の試験科目で最も出題数が多く,16問の出題です。
 不動産登記法は条文のみならず,登記先例や実務書の見解等も問題として出題されるので注意が必要です。

 決まった出題傾向は見受けられず,総論・各論・横断整理とさまざまな問題形式で出題されます。ただ,過去問と同じ知識を聞きやすい分野でもあり,そういった問題を落とさないようにしたいものです。

 また,改正された分野についても間隔をあけずに出題してきます。改正情報については,常
に専門誌などで情報を収集する必要があります。

(2)学習法
 攻略法としては,やや地味ですが,こつこつと時間をかけて正確な知識を積み上げていくしかないようです。
 所有権に関する登記・抵当権に関する登記・根抵当権に関する登記・仮登記と権利ごとに学習をすすめることをお勧めします。その後,細かい実務処理・オンライン申請等の論点をつぶしていくことになります。

 不動産登記法は,民法のようなダイナミックさがないので,やや取っつきにくい感じはありますが,地道な作業をしばらく続けていると,あるとき必ず視界が開けます(この地道な作業というのが曲者で,ここでくじけてしまう人が多いのも確かです)。

 また,習うより慣れろ,ということも肝に銘じておくべきです。「これは何でだろう」という疑問を考えるよりは,その申請書を自分の手で書いてみる,記述式の問題を解く,というように慣れることに時間をかけるほうがいいでしょう。

 出題も法的思考力を試すものよりも知識を問うてくることが多いので,過去問を繰り返し解くことも一定の効果があります。そして,ある段階になったら,横断整理を心がけましょう。

抵当権の登記では○○なのに根抵当権の登記では結論が逆になる,といった形でまとめていくことが知識の定着へとつながります。