第1問
管轄と移送に関する次のアからオまでの記述のうち,誤っているものの組合せは,後記1から5までのうちどれか。
ア 裁判所の管轄は,訴えの提起の時を標準として定める。
イ 移送を受けた裁判所は,移送の裁判をした裁判所に対して,再移送をすることができない。
ウ 地方裁判所は,係属した訴訟が,その管轄区域内の簡易裁判所の管轄に属する場合には,その簡易裁判所に当該訴訟を移送しなければならない。
エ 簡易裁判所に係属している訴訟の被告が反訴で地方裁判所の管轄に属する請求をした場合には,簡易裁判所は,職権で,本訴及び反訴を地方裁判所に移送しなければならない。
オ 簡易裁判所は,その管轄に属する不動産に関する訴訟につき被告の申立てがあるときは,その申立ての前に被告が本案について弁論をした場合を除き,訴訟の全部又は一部をその所在地を管轄する地方裁判所に移送しなければならない。
1 アエ 2 アオ 3 イウ
4 イオ 5 ウエ
解答・解説
管轄と移送に関しては頻出論点であり,平成2年,3年,5年,7年,10年,15年と出題されている。ここ数年出題がないところなので,しっかりと勉強する分野であろう。
ア 正しい。裁判所の管轄は,訴えの提起の時を標準として定める(民事訴訟法15条)。なぜなら,訴えの提起の時に,いったん存在した管轄権がその後の事情で消滅し,他の管轄裁判所に移送しなくてはならないとすれば,それまでの審理が無駄になってしまうからである。
イ 正しい。移送を受けた裁判所は,さらに事件を他の裁判所に移送することができない(22条2項)。なぜなら,事件の移送を受けた裁判所が,さらにその事件を移送することができるとすると,いわば事件のたらい回しによって審理が著しく遅れ,当事者の裁判を受ける権利を実質的に侵害することになりかねないからである。
ウ 誤り。裁判所は,訴訟の全部または一部がその管轄に属しないと認めるときは,申立てによりまたは職権で,これを管轄裁判所に移送しなければならないが(16条1項),地方裁判所は,訴訟がその管轄区域内の簡易裁判所の管轄に属する場合においても相当と認めるときは,申立てによりまたは職権で,訴訟の全部または一部について自ら審理および裁判をすることができる(16条2項)。訴訟関係者の出頭の便宜,審理の都合等からかえって地方裁判所で審理するほうが当事者にとって利益であると考えられる場合があるからである。
エ 誤り。被告が反訴で地方裁判所の管轄に属する請求をした場合において,相手方の申立てがあるときは,簡易裁判所は,決定で,本訴および反訴を地方裁判所に移送しなければならない(274条1項)。
オ 正しい。民事訴訟法19条2項のとおりである。ただし,被告が本案について弁論をなし,応訴の態度を明らかにした後は,移送の申立ては許されないことには注意が必要である。
以上により,誤っているものはウとエであるから,5が正解。

