「司法書士直前対策」 民事執行法のポイント1 植杉伸介

はじめに
 司法書士試験における出題数からして,民事執行法の学習に多くの時間を割くことはできません。

そこで,本稿では,民事執行法の出題ポイントになりそうなところをピックアップして,解説していこうと思います。頁数の都合があるので,民事執行法の出題ポイントの一部しか取り上げることができませんが,本稿を読んでいただければ,きっと得点力がアップするはずです。

 なお,本稿では,過去の本試験問題を題材にして,内容を詳しく解説すると同時に,周辺の知識も説明するというスタイルをとります。過去の本試験問題を題材にして学習したほうが,試験合格に直結した実践的な実力をつけることができるからです。


執行文の付与
問題 執行文に関する次のアからオまでの記述のうち,誤っているものの組合せは,後記1から5までのうちどれか。(平成16年第7問)
ア 強制競売の申立てをする債権者は,強制競売の執行裁判所の裁判所書記官に対し,執行文の付与の申立てをしなければならない。

イ 少額訴訟における確定判決に表示された当事者に対し,その正本に基づいて強制執行の申立てをする場合には,執行文の付与を受ける必要がない。

ウ 執行文は,債権の完全な弁済を得るため執行文の付された債務名義の正本が数通必要であるとき又はこれが滅失したときに限り,更に付与することができる。

エ 債務者の給付が反対給付と引換えにすべきものである場合には,債権者は,反対給付又はその提供があったことを証明しなければ,執行文の付与を受けることができない。

オ 裁判所書記官がした執行文の付与を拒絶する処分に対しては,その裁判所書記官の所属する裁判所に異議の申立てをすることができる。

1 アウ  2 アエ  3 イウ  4 イオ  5 エオ

1 債務名義
 強制執行は,まず債務名義を得たうえで,これに執行文をつけてもらうことによって行われます。したがって,執行文の付与について勉強する場合は,その前提となる債務名義についても押さえておく必要があります。

 債務名義とは,強制執行によって実現されるべき請求権の存在と内容を公的に証明する文書をいいます。

 債務名義になるのは,次のような文書です(民事執行法22条)。以下に列挙したものを丸暗記する必要はありませんが,すべて公文書であり,原則として裁判所がらみのものであることは頭に入れておいてください。

(1)確定判決
 判決の中身は,給付を命ずるもの(給付判決)でなければなりません。

(2)仮執行の宣言を付した判決
 仮に執行できますよという宣言がついているのですから,これを根拠にして強制執行ができるのは当然です。

(3)抗告によらなければ不服を申し立てることのできない裁判
 給付を命ずる決定のことです。不動産引渡命令などが該当します。

(4)仮執行の宣言を付した損害賠償命令

(5)仮執行の宣言を付した支払督促

(6)訴訟費用や和解費用の額などを定める裁判所書記官の処分

(7)執行証書
 執行証書とは,公証人が作成した公正証書のうち,下記の2つの要件を満たすものをいいます。
一定額の金銭の支払または一定の数量の代替物・有価証券の給付を目的として作成されたものであること:+:債務者が直ちに強制執行に服する旨の陳述が記載されていること

 給付の目的物は,金銭,代替物,有価証券に限られており,不動産などの特定物は対象になっていないことに注意してください。不当な強制執行が行われた場合,目的物が金銭,代替物,有価証券であれば,金銭による賠償によって債務者の損害を容易に回復できますが,特定物が目的物である場合は,その特定物自体の回復が必要であり,金銭賠償では十分な損害回復ができないからです。

(8)確定した執行判決のある外国判決

(9)確定した執行決定のある仲裁判断

(10)確定判決と同一の効力を有するもの
 裁判上の和解調書,請求の認諾調書,調停調書などです。
 

 ☆正解は次回へ