2 執行文
(1)執行文とは
執行文とは,債務名義の執行力およびその内容を公証するため,債務名義の正本の末尾に付記される公証文書をいいます。執行文を付与するのは,裁判所書記官です。
具体的には,下記のような文書が債務名義の末尾につけられます。
債権者Aは,債務者Bに対し,この債務名義により強制執行することができる。
平成○年○月○日
○○地方裁判所民事○部
裁判所書記官 ○○ ×× 印
執行文の付与の申立ては,事件の記録の存する裁判所の裁判所書記官に対して行います(26条1項)。執行裁判所(強制執行を実施する裁判所)の裁判所書記官に申し立てても,執行文をもらうことはできません。
執行文は,その事件に対する判決が上級審で取り消されたりしていないかという点などを確認し,その判決に基づく執行が可能かどうかをチェックしたうえで付与されます。そのようなチェックは,その判決に関する事件の記録が存する裁判所でなければ行うことができないからです。
したがって,「執行裁判所の裁判所書記官に対し,執行文の付与の申立てをしなければならない」とする本問のアの記述は誤りです。
(2)執行文が不要となる例外(25条)
執行文が付されていないと強制執行を実施できないのが原則ですが,次の場合は,執行文がなくても強制執行が実施されます。
1 少額訴訟の確定判決
2 仮執行宣言を付した少額訴訟の判決
3 仮執行宣言を付した支払督促
少額訴訟および支払督促は,簡易迅速な紛争解決を目的とした制度です。そのような制度目的に合致させるべく,執行文の付与を省略できることとして,簡易迅速な処理を認めたのです。
したがって,本問のイの記述は,正しい内容です。
(3)執行文の再度付与(28条1項)
執行文は,債権の完全な弁済を得るため執行文の付与された債務名義の正本が数通必要であるとき,またはこれが滅失したときに限り,さらに付与することができます。
たとえば,債務者の不動産と債権に対して執行する場合のように,同時に数個の方法で執行するときは,執行文の付された債務名義の正本が数通必要になります。債務名義の正本が数通必要になるのであれば,執行文もその数だけ付与するということです。
本問のウは,この規定のとおりの内容ですから,正しい記述です。
(4)執行文の付与と執行開始の要件
執行文の付与を受ける段階で満たすべき要件と,実際に執行を行う段階で満たすべき要件は,しっかり区別しなければなりません。
たとえば,AがBに土地を売却したという事例において,「AはBに対して,Bの代金支払と引換えに土地を引き渡せ」という判決に基づいて,Bが強制執行を申し立てる場合を考えてみましょう。
Aの負担する土地引渡債務は,Bの代金支払と同時履行関係に立っているので,Bは,自らの債務である代金支払債務を履行しないと,土地の引渡しを受けることができません。
したがって,Bは,代金支払に関する領収書を提出するなどして,反対給付の証明をしなければ,土地引渡しに関する強制執行を受けることができません。
それでは,Bは,反対給付の証明をいつ行う必要があるのでしょうか。それは,執行開始の段階です(31条1項)。執行文の付与を受ける段階では,まだ証明する必要はありません。執行文の付与は,執行を受ける前段階の手続であり,この時点で執行が行われるわけではありません。
執行の対象と反対給付とは同時履行関係なのですから,反対給付の証明は執行文付与の段階ではなく,執行が開始される段階に行われるべきなのです。
したがって,執行文付与の段階で反対給付の証明が必要であるとする本問エの記述は,誤りとなります。
(5)執行文付与に対する異議申立て
執行文の付与に関する付与機関の処分に不服のある債権者または債務者は,裁判所書記官の処分にあってはその書記官の所属する裁判所に,公証人の処分にあってはその公証人の役場の所在地を管轄する地方裁判所に,異議の申立てをすることができます(32条1項)。
したがって,本問オは,正しい記述です。
以上,ア~オのうち誤っている記述はアとエですから,本問は肢2が正解となります。

