「司法書士直前対策」 民事執行法のポイント4 植杉伸介

第三者異議の訴え等
問題 強制執行における不服申立てに関する次のアからオまでの記述のうち,誤っているものの組合せは,後記1から5までのうちどれか。(平成17年第6問)

ア 条件成就執行文の付与について,その条件成就に異議のある債務者は,執行文付与に対する異議の申立てをすることなく,直ちに執行文付与に対する異議の訴えを提起することができる。

イ 仮執行の宣言を付した判決に基づく強制執行については,当該判決が確定する前であっても請求異議の訴えを提起することができる。

ウ 請求異議の訴えは,債務名義の正本に執行文が付与される前であっても提起することができる。

エ 債権者は,第三者異議の訴えにおいて敗訴しても,同一の債務名義に基づいて,債務者の責任財産に属する他の財産に対し,強制執行をすることができる。

オ 第三者異議の訴えは,強制執行が終了した後であっても提起することができる。

1 アエ  2 アオ  3 イウ  4 イオ  5 ウエ 

まず最初に,本問のイを検討します。この点は,すでに本稿の2問目の解説で説明済みですね。確定前の仮執行宣言付き判決に対する不服申立ては,その判決に対する上訴として行うべきであり,請求異議の訴えを提起することはできません。したがって,イの記述は誤りです。

1 執行文付与に対する異議の訴え
 本稿の1問目の解説において,執行文付与に対する異議の「申立て」について説明しましたが,ここで説明するのは,執行文付与に対する異議の「訴え」です。両者は別の制度ですから,ごっちゃにしないように気をつけてください。

 執行文付与に対する異議の「訴え」は,一定の執行文が付与された場合に,債務者が,強制執行の不許を求めるために提起する訴えをいいます。異議の訴えを提起できるのは,次の2種類の執行文が付与された場合です。

 たとえば,条件成就執行文が付与された場合に,債務者がその条件の成就を否定して,その執行正本に基づく強制執行を阻止するために訴えを提起することができるわけです。

1 条件成就執行文(27条1項)
 条件成就執行文とは,たとえば,立ち退き料を支払うことを条件として不動産を明け渡すという内容の債務名義のように,請求が債権者の証明すべき事実の到来に係る場合の執行文をいいます。この場合,債権者がその事実の到来を証する文書を提出した場合に限り,執行文が付与されます。

2 承継執行文(27条2項)
 承継執行文とは,債務名義に表示された当事者以外の者を債権者または債務者とする執行文をいいます。たとえば,債権者または債務者が死亡して,その地位を相続人が承継したような場合です。

 執行文付与に対する異議の「申立て」と執行文付与に対する「訴え」との関係が問題になりますが,特に法律上の制限はありません。どちらを先にするかあるいは同時にするか,異議申立てが認められなかった後に,この訴えを提起するか,ということは債務者の自由です。

 したがって,執行文付与に対する異議の申立てをすることなく,執行文付与に対する異議の訴えを提起することができるので,本問のアは,正しい記述です。


2 請求異議の訴えを提起できる時期
 請求異議の訴えは,債務名義の成立後であれば,執行完了までいつでも提起することができます。債務名義の成立後であればよいのですから,債務名義さえ成立していれば,執行文が付与されていなくても,請求異議の訴えを提起することができます。したがって,本問のウは正しい記述です。


3 第三者異議の訴え
(1)第三者異議の訴えとは
 第三者異議の訴えとは,強制執行によって自己の財産権を侵害される第三者が執行債権者を被告として,その執行の排除を求める訴えをいいます(38条1項)。

 たとえば,債務者の自宅内の動産を差し押さえたところ,その動産の中に債務者の財産でない物が含まれていたようなときに,その財産の所有者が強制執行を排除する訴えを提起する場合です。

(2)第三者異議を認める判決の効力
 第三者異議の訴えの本案の審理は,原告が主張する異議事由が存在するかどうかという点についてのみ行われます。執行債権の存否や債務名義自体の有効性など,執行の正当性一般に関しては審理しません。

 そのため,第三者異議を認める判決が確定したとしても,当該目的物に対する執行が許されなくなるだけであり,債務名義の効力まで失われるわけではありません。したがって,債権者が,第三者異議の訴えにおいて敗訴しても,同一の債務名義に基づいて,債務者の責任財産に属する他の財産に対し,強制執行することはできるので,本問のエの記述は,正しい内容であることになります。
(3)第三者異議の訴えを提起できる時期
 第三者異議の訴えは,原則として,執行が開始された以降でなければ,訴えの利益が認められません。執行開始前は,どの財産が執行の対象となるか明らかでないからです。

ただし,特定物の引渡しや不動産の明渡しの執行の場合は,執行の対象が債務名義によって特定されているので,執行開始前でも訴えの利益が認められます。

 第三者異議の訴えは,目的物に対する執行が完了した後は,提起することができません。第三者異議の訴えは,不当執行の排除を目的とするものです。そうだとすれば,執行が完了し,もはや排除すべき執行が存在しない段階で,訴えを提起しても無意味だからです。

 したがって,強制執行が終了した後であっても,第三者異議の訴えを提起することができるとする本問オの記述は,誤りです。

 以上,ア~オのうち誤っている記述はイとオですから,本問は肢4が正解となります。