司法書士・調査士記述式対策 不動産登記記述式入門1 田中利和

1 はじめに 
教授「やあ,司法君! 今年の本試験も済んで,ほっとしているところかな?」

司法「そうなんですよ。試験発表まで1カ月ほどありますので,その間はゆっくりしたいと思っています」


教授「なるほど。そうすると,試験の出来は良かったんだね」

司法「そうですね。ある程度点数は取れていると思います。毎年,失敗している不動産登記の記述式の問題も基本的な論点の出題でしたので,今年は大丈夫だと思います」

教授「なるほど。確かに,不動産登記の記述式は基本的な問題だったね。やはり基本が大切だということかな。そこで,今回は,不動産登記の記述式の問題を解くために必要となる基本的な事項を勉強していこう。これから勉強する受験生にも分かるように説明していきたいと思う」


① 不動産登記とは
教授「それでは,"そもそも論"から始めよう。そもそも,不動産登記は,どのような制度で,どんな目的があるのかな?」

司法「そんなところから始めるのですか?」

教授「答えられないのかい?」

司法「不動産登記の制度・目的ですね。答えられますよ! それは,不動産の表示および不動産に関する権利を公示するための登記に関する制度について定めることにより,国民の権利の保全を図り,もって取引の安全と円滑に資することを目的とするとされています」

教授「不動産登記法第1条に規定されているね。不動産に関する権利,つまり,物権は,物に対する排他的な権利であるので,物権変動を第三者が認識することができるように公示しなければ,円滑な取引の安全を図ることができない。

そこで,不動産に関する権利の変動は,その公簿に記録して公示することになった。

こ れが,不動産登記の制度であり目的だ。また民法第177条には,『不動産に関する物権の得喪及び変更は,不動産登記法その他の登記に関する法律の定めると ころに従いその登記をしなければ,第三者に対抗することができない』と規定しているので,不動産に関する権利の変動があった場合については,この規定があ ることにより,登記が促されることになる」


② 登記の効力
教授「それでは登記の効力について確認しよう。登記には,対抗力,権利推定力,形式的確定力がある」

司法「二重譲渡がなされた場合,先に登記を得た者が自己の所有権を主張することができる。これが対抗力ですね」

教授「典型例は,A所有不動産についてBCに二重譲渡があった場合,BもCも登記がない限り,両者の地位には優劣はなく,どちらからも対抗し得ず,先に登記をした者が優先するということだったね(大判大8・5・26)」

司法「権利推定力は,その登記記録のとおりの実体上の権利関係が真実に存在するという推定が働く,これが権利推定力です」

教授「実体上,ACの共有の不動産がある。ところが,登記記録上,AB共有名義で登記されている場合,Aが持分を放棄したときは,その持分はCに帰属する(民法255条)。しかし,ABが共有者として登記されている以上,Aの他の共有者はBであるとの権利の推定が働くということ。これが権利推定力だ。では,形式的確定力は?」

司法「形式的確定力は,ひとたびなされた登記が存在すると,その登記が有効であるか無効であるかを問わず,その後の登記手続はこれを無視して手続をすることができないという効力です」

教授「具体例を示しておこう。A所有不動産について,売買が無効であるにもかかわらず,B名義に所有権移転の登記がなされた場合,AがCに当該不動産を売却することは実体上可能だ。
しかし,登記手続においては,B名義の所有権の登記を抹消するか,真正な登記名義の回復を原因としてA名義に所有権の移転登記をしない限り,AからCに所有権移転登記を申請することができない。形式的確定力が働いているからなんだ。

つまり,登記手続は,現在の登記記録を出発点として手続を進めなければならないということなんだ。この点は重要だから覚えておいてね」