司法書士・調査士記述式対策 不動産登記記述式入門3 田中利和

2  所有権保存
教授「権利部の所有権に関する事項に関する登記記録を確認しよう。

所有権保存の登記は,所有権の登記のなされていない不動産について,初めてなされる所有権の登記だ。
登記記録の甲区にその所有者のために所有権の登記がなされ,以後,その所有権の登記を基礎として,その不動産の権利に関する登記がなされることになる」

司法「この建物の権利部の所有権保存の登記記録によると,順位番号は1,登記の目的は所有権保存,受付年月日・受付番号は平成20年3月22日受付第3224号,権利者その他の事項として,所有者甲野太郎と記録されていますね」

教授「ちなみに,受付年月日・受付番号とは,所有権保存の登記申請がなされた日とその受付番号だ(不登規則56条参照)」

3 所有権登記名義人住所変更
教授「続いて,1番付記1号を見てみよう。登記の目的は『1番登記名義人住所変更』とあるね。登記名義人の定義を示しておこう」
 
 登記名義人とは,権利の帰属主体として登記された現在の名義人をいい,その表示とは,登記名義人の同一性を示す記号,つまり,自然人ならば住所・氏名,法人ならば商号・本店等をいう。

教授「この登記名義人の定義も,しっかり覚えておいてね。重要な定義だから,しっかり記憶しておいてほしい。特に『登記された現在の名義人』が重要だ」

司法「分かりました。『権利者その他の事項』には,登記原因として,住所移転した年月日とその住所が記録されています」

教授「この登記名義人住所変更登記を申請したことによって,登記官は,所有権保存の登記の所有者の住所に下線を引いたんだ」


司法「なるほど。『登記官は,権利の変更の登記又は更正の登記をするときは,変更前又は更正前の事項を抹消する記号を記録しなければならない』(不登規則150条)と規定されています。これが,その下線の根拠ですね」

教授「そうだね。続いて順位番号2の登記記録を見てくれるかい。所有権移転の登記記録がなされている。これは,甲野太郎が乙野次郎および乙野三郎に対して,建物を売買したことによってなされた登記だ」

司法「そうですね。何か問題でも......」

教授「問題というわけではないんだ。権利推定力や形式的確定力の話をしたところに結びついている。甲野太郎と乙野次郎らが建物を売買した。売買の前に,甲野太郎は住所を移転していた。売買契約の当事者である甲野太郎は住所移転の前後を問わず,権利の主体としては同一だ。
ところが,登記記録上,東京都渋谷区柳野町15番5号の甲野太郎と登記がなされているので,これを東京都渋谷区本田新町100番地の甲野太郎と変更したうえで,所有権移転登記を申請しなければならなかった,ということなんだ」

司法「なるほど。ここは形式的確定力のところですね。不動産登記法上も,乙野次郎らへの所有権移転登記の申請をする前に甲野太郎の登記名義人住所変更登記を経由しておかなければ,所有権移転登記申請は却下されることになります(不登法25条7号)」