⑥ 抵当権設定
教授「乙区の最後の登記記録を確認しよう」
司法「順位番号は3,登記の目的は抵当権設定,受付年月日・受付番号の記載があって,権利者その他の事項には,登記原因は平成21年8月1日保証委 託契約に基づく求償債権平成21年9月1日設定,債権額金5,000万円,損害金の記録があって,連帯債務者として乙野次郎,乙野三郎,抵当権者として株 式会社新宿保証,共同担保目録(く)第5002号と記録されています」
⑦ まとめ
教授「この建物の登記記録全体を見ると,どういうことがいえるのかな? つまり,この登記記録から何が読み取れるのか,ということだ。説明してくれるかい」
司法「はい。分かりました。まず,甲野太郎が建物を新築しました。そのとき,新築費用として,株式会社中央銀行から融資を受けたと推測されます」
教授「受付年月日は同日で,受付番号も連続しているね。つまり,甲区の所有権保存の登記と乙区1番の抵当権設定登記を申請したということだね」
司法「はい。そうです」
教授「その続きはどうだい?」
司法「甲野太郎は乙野次郎と乙野三郎に建物を売却しています。乙野次郎と乙野三郎は,当該建物の売買代金を金融機関から融資を受け,その売買代金を甲野太郎に支払い,甲野太郎は株式会社中央銀行に対し,残債務を支払って,1番抵当権抹消の登記申請をしたと推測されます」
教授「そうだね。これらの登記も受付年月日は同日で,受付番号も連続しているので,おおむね,それで合っていると思うよ。一般的に住宅の所有者は,金融機関から住宅ローン融資を受けて購入していることが多いね。
売却時もその金融機関に対し,融資の残債務がある場合,売主側に設定されている担保権の登記が残っているので,売買と同時に当該担保権を抹消することとなる。また,同時に住所の変更登記をすることも多い。それはなぜか分かるかい?」
司法「はい。不動産を購入時(新築も含む)の住所は,その建物に引っ越しする前の住所です。つまり,引っ越しをする前の住所で所有権移転や所有権保存の登記を申請することが多いということです。購入後,その建物に引っ越しをすると,住所は当該建物の所在地を住所地と定めることになるでしょう。後日,その不動産を売却するまで,新たに金融機関から融資等を受けない限り,登記記録上の住所は,購入時のまま,つまり,引っ越し前の住所地のままということになります」
教授「そういうことだね。余談になるけれど,実務の世界では,この一連の登記手続を略して『名変・抹消・移転・設定』といったりするね」
司法「つまり,所有権登記名義人変更を『名変』(メイヘン),抵当権抹消を『抹消』,所有権移転を『移転』,抵当権設定を『設定』を省略しているのですね」

