司法書士・調査士記述式対策 不動産登記記述式入門12 田中利和

3 登記識別情報とは
教授「それでは,解答例の所有権移転登記の申請情報の添付情報を参考にして説明していこう。

まず,『登記識別情報』とある。これは何かな?」

司法「はい。結論からいうと,これは,登記義務者たる甲野太郎の登記識別情報です。

 登記権利者および登記義務者が共同して権利に関する登記の申請をする場 合,申請人は,その申請情報と併せて登記義務者の登記識別情報を提供しなければならないとされています(不登法22条)。

 そこで,この『登記識別 情報』とは何か? ということですが,これは,登記名義人が登記を申請する場合,当該登記名義人自らが当該登記を申請していることを確認するために用いら れる符号その他の情報であって,登記名義人を識別することができるものです(不登法2条14号)」

教授「登記識別情報の定義はそういうこ とだね。原則として,登記官は,その登記をすることによって申請人自らが登記名義人となる場合において,当該登記を完了したときは,法務省令で定めるとこ ろにより速やかに,当該申請人に対し,当該登記に係る登記識別情報を通知しなければならない(不登法21条)。

 権利部の甲区1番を見てくれるか い。ここでは,甲野太郎の所有権保存の登記がなされている。つまり,この登記は甲野太郎によって申請されたから甲区1番の登記がなされたということだ。
 そ の登記がなされると,甲野太郎が,所有権の登記名義人となる。
 そうすると,不動産登記法21条の規定により,登記官が,甲野太郎に対して,登記識別情報を 通知することになる。登記識別情報を見てみよう」

登記識別情報
登記識別情報通知
次の登記の登記識別情報について,下記のとおり通知します。

【不動産】
東京都渋谷区本田新町100番地 
(家屋番号100番       )建物
【不動産番号】
1206000005432
【受付年月日・受付番号(又は順位番号)】
平成21年9月1日受付 第5340号
【登記の目的】
所有権保存
【登記名義人】
東京都渋谷区柳野町15番5号
甲野太郎
(以下余白)
※下線のあるものは抹消事項であることを示す。

登 記 識 別 情 報
A|5|B-H|S|3-G|H|8-C|6|Z
   平成21年9月8日
   東京法務局 渋谷出張所
   登記官  渋 谷  司   印 

 

教授「実際には,アラビア数字やローマ字が記載してあるところは,目隠しシールが貼り付けてある。そのシールを剥がすと,このように記載してあるんだ」

司法「登記実務に携わったことがなく,勉強を始めたばかりの受験生にとっては,イメージがしにくいですよね。逆にいうと,この部分のイメージがつかめれば,不動産登記手続の全体像の理解も早まるような気がします」

教授「書面申請の場合について,簡単に図式化しておこう」

〔登記識別情報の通知の流れ〕
甲野太郎が所有権保存登記を申請する。
 ↓
登記官が甲野太郎に対し,登記識別情報を書面により通知する。

   ↓
甲野太郎が当該書面を受け取る。

   ↓
甲野太郎と乙野次郎,乙野三郎が売買を原因として,所有権移転登記を申請する。
※申請の際,甲野太郎の登記識別情報を提供する。

   ↓
登記官が乙野次郎,乙野三郎に対し,登記識別情報を書面により通知する。

    ↓
乙野次郎と乙野三郎が当該書面を受け取る。


司法「図式化すれば,たいしたことはありませんね。登記申請をすることによって,当該申請人が登記名義人となる場合,登記官から登記識別情報が通知される。今の例は,所有権移転の場合でしたが,抵当権設定登記の場合は,当該申請人たる抵当権者に登記識別情報が通知されるということですね」

教授「そういうこと。解答例の抵当権抹消登記の申請情報を見てみよう。このとき提供する登記識別情報は1番抵当権の登記名義人たる株式会社中央銀行が抵当権設定の登記申請をしたときに登記官から通知された登記識別情報のことだ。登記識別情報は,その登記をすることによって申請人自らが登記名義人となる申請人に通知される(不登法21条)。

したがって,その登記名義人が登記義務者として登記を申請する場合には,過去に通知を受けた登記識別情報を提供させることにより,登記名義人本人が申請していることを確認することができる。

これを提供することにより,その登記の申請が登記義務者本人によるものであるということが保証され,登記義務者の真意により申請されたことが担保されるからなんだ(民事法情報センター『全訂不動産登記入門』178頁一部引用)」