「司法書士」 民事執行法のポイント1 植杉伸介

総則
1 民事執行とは
 民事執行とは,強制執行,担保権の実行としての競売および民法,商法その他の法律の規定による換価のための競売並びに債務者の財産開示手続の総称です(民事執行法1条)。
すなわち,民事執行には,1 強制執行,2 担保権の実行としての競売,3 民法等の規定による換価のための競売,4 財産開示,の4種類があるわけです。

(1)強制執行
 強制執行とは,債務名義という公文書に表示された請求権の実現を図る手続をいいます。

(2)担保権の実行としての競売
 担保権の実行としての競売とは,抵当権などの担保権が有する換価権を行使し,その代金から優先弁済を受ける手続をいいます。

(3)民法等の規定による換価のための競売
 民法等の規定による換価のための競売は,「形式的競売」と呼ばれています。留置権による競売および民法,商法その他の法律の規定による換価のための競売が該当します。

(4)財産開示
 財産開示とは,債務者による財産隠しから債権者の負担を軽くするために,裁判所が債務者に対して財産の開示を命ずる手続をいいます。

2 民事訴訟法との関係
 民事執行法に特別の定めがある場合を除いて,民事執行の手続に関しては民事訴訟法の規定が準用されます(20条)。民事執行の手続は,広い意味では訴訟手続に含まれるからです。

 しかし,民事訴訟は,実体的な権利の有無を確定するものであるから,ある程度慎重な手続が必要とされるのに対し,民事執行は,民事訴訟によって確定された権利を実現する手続にすぎないから,より簡易迅速な手続が要請されます。それゆえ,次のような点については,民事訴訟と民事執行で異なっています。

(1)代理人
 民事訴訟法において,判決手続を行う場合の訴訟代理人は,法令により裁判上の行為をすることができる代理人(会社の訴訟における支配人等)のほかは,原則として弁護士しか訴訟代理人になることができません。

 これに対し,執行裁判所で行う手続のうち,訴えまたは執行抗告に係る手続以外の手続については,支配人等や弁護士以外の者であっても,執行裁判所の許可を受ければ,代理人になることが認められています(13条1項)。

 さらに,執行裁判所ではなく,執行官が行う手続については,執行裁判所の許可を受けずに,だれでも代理人になることができます。

(2)執行記録の閲覧等
 民事訴訟手続の場合,訴訟記録は一般に公開されており,だれでも,裁判所書記官に対し,訴訟記録の閲覧を請求することができます(民事訴訟法91条1項)。
 これに対し,民事執行に関する記録の閲覧謄写請求は,利害関係人に限って認められています(民事執行法17条)。