国家試験改正法 「都市計画法」 十影 響
都市計画法・建築基準法の改正点
宅地建物取引主任者 都市計画法・建築基準法 住宅新報社講師 十影 響
◇はじめに
今回の講座では,平成18年から平成19年に施行された都市計画法の主な改正点およびそれに連動する建築基準法の改正点※1を整理していきます。
この改正は,現在,全国の各地で起きている「都市機能の無秩序な拡散」や「中心市街地の空洞化」の対策として,「集約型都市構造への転換」を図るために行われました。
少子高齢化による人口減少局面(その結果として,経済規模の縮小による税収減)にあるなかで,無秩序な市街化が行政のコスト増をもたらしていることからも必要とされたものです。
今回の改正では,大規模集客施設の立地制限――開発規制,用途規制(用途地域,地区計画)が中心で,それに付随して,準都市計画区域,都市計画の広域調整,都市計画の提案などの変更がありました。
ただし,今回の講座では,改正が広範にわたるため,過去問出題歴などから今後出題が予想されるものに限りました。
※1 都市の秩序ある整備を図るための都市計画法等の一部を改正する法律
(平成18年5月31日公布,最終施行:平成19年11月30日)による改正
1 準都市計画区域
(施行:平成18年11月30日)
準都市計画区域は,都市計画区域外での分散的な宅地化や大規模集客施設の立地による無秩序な開発や環境悪化を防止する手立てを講じるために生まれた制度です。
(ただし,準都市計画区域では,都市施設,市街地開発事業,地区計画に関する都市計画を定めることはできません)
準都市計画区域は,都市計画区域外で,農地を含む土地利用の整序または環境の保全が必要な一定の区域に指定されることに改正されました。
(都市計画法〈以下,法〉5条の2第1項)
このため,準都市計画区域について定められる都市計画では,従来は「土地利用の整序を図る」(用途地域を定めるなど)ことが主眼でしたが,「環境の保全を図るのに必要な事項」も定めることになっています(法13条3項)。
また,最近は,市町村合併により1つの行政区域に複数の都市計画区域を有する市が出現するなど,都市計画区域外の区域についてより広域的な見地から判断する必要があるため,従来は市町村が行っていた準都市計画区域の指定を都道府県がすることになりました。
改正前 改正後
準都市計画区域の指定の目的 土地利用の@整序 土地利用の@整序@環境の保全
準都市計画区域の指定権者 市町村 都道府県※2
準都市計画区域の都市計画の決定権者 市町村 都道府県@市町村
※2 都道府県は,準都市計画区域の区域を指定しようとするときは,あらかじめ,関係市町村および都道府県都市計画審議会の意見を聴かなければならない。
(法5条の2第2項)
準都市計画区域に指定※3されると,その区域内では,地域地区※4を定めることができ,後述の大規模集客施設の立地規制も行われるようになります。
※3 準都市計画区域は,平成16年以降,群馬県,熊本県,静岡県内などで指定されており,このほかにも準都市計画区域の指定を検討している県が複数ある。
※4 準都市計画区域では,用途地域,特別用途地区,特定用途制限地域,高度地区,景観地区,風致地区,伝統的建造物群保存地区,緑地保全地域のうち,必要なものを都市計画で定めることができる(法8条2項)。
2 開発許可
(1) 医療施設,社会福祉施設,学校等の開発行為も開発許可が必要に
改正前,医療施設,社会福祉施設,学校(大学,専修学校および各種学校を除く)などを建築する目的の開発行為の場合,政令で定める公益上必要な建築物の建築の用に供する目的で行う開発行為として,区域・規模を問わず,開発許可は不要でした(過去問でも,頻出)。
しかし,公益上必要な建築物であっても,周辺の土地の利用状況に関係なく,無秩序に立地するのは好ましくないため、改正後はそれらの建築物を建築する目的の開発行為であっても…
都道府県知事(指定都市,中核市,特例市ではそれぞれの長)
〈以下,「3 市街化調整区域の開発許可関係の改正」まで同じ〉
…の開発許可を必要とし,開発許可に当たって,まちづくりの観点から立地の適否を判断できるようにしました。
つまり,これらの施設が高齢者を含めた多くの人にとって,より便利な場所に立地するように誘導したのです。
(公共公益施設の郊外立地による都市機能の無秩序な拡散の防止)
このため,医療施設,社会福祉施設,幼稚園・小学校・中学校・高校の建築のための開発行為は,区域により開発許可が必要とされる開発規模※5であれば,開発許可を受けなければならないことになっています。
(改正による大きな変更点なので,要注意)
※5 市街化区域内では1,000㎡以上,非線引き都市計画区域または準都市計画区域内では3,000㎡以上,都市計画区域および準都市計画区域外の区域内では10,000㎡以上
■開発許可不要な場合の改正前後の比較
改正前
駅舎その他の鉄道の施設,社会福祉施設,医療施設,学校(大学,専修学校および各種学校を除く),公民館,変電所、その他これらに類する政令で定める公益上必要な建築物の建築の用に供する目的で行う開発行為(旧29条1項3号)
改正後
駅舎その他の鉄道の施設,図書館,公民館,変電所その他これらに類する公益上必要な建築物のうち開発区域およびその周辺の地域における適正かつ合理的な土地利用及び環境の保全を図るうえで支障がないものとして政令で定める建築物の建築の用に供する目的で行う開発行為(新29条1項3号)
(2) 国,都道府県等の行う開発行為も,原則として,開発許可が必要に。
(ここも,試験では狙われやすいです)
改正前は,国,都道府県・指定都市・中核市・特例市・事務処理市町村(以下,都道府県等)が行う開発行為は,区域・規模を問わず,開発許可が不要でしたが(旧29条1項4号,過去問でも頻出),
改正後は,区域により開発許可が必要な規模に達している場合は,原則として,開発許可が必要になりました(改正により旧29条1項4号は削除)。開発許可が必要になった理由は(1)と同じです。
ただし,周辺の居住者の利用に供する場合は,開発許可は不要です(施行令21条26号ニ)。
なお,国・都道府県等が行う開発行為については,当該国の機関または都道府県等と都道府県知事との協議が成立することをもって開発許可があったものとみなすことになっています(新34条の2第1項)。
3 市街化調整区域の開発許可関係の改正
(1) 市街化調整区域の開発許可基準の変更
改正前は,市街化調整区域の開発許可基準として,あらかじめ開発審査会の議を経たうえで,都道府県知事が許可できるものとして,
「開発区域の面積が政令で定める面積を下らない開発行為で,市街化区域における市街化の状況からみて当該申請に係る開発区域内において行うことが当該都市計画区域における計画的な市街化を図る上に支障がないと認められるもの」
(旧34条10号イ)
…という規定がありましたが,この規定は廃止され,
この規定で想定していた開発行為については,市街化調整区域内で地区計画の決定または変更が行われた後に,当該地区計画に適合しているかどうかで開発の可否が判断されるようになります(新34条10号)。
この結果,市街化調整区域の開発行為で,あらかじめ開発審査会の議を経たうえで,都道府県知事が許可するものとしては,「開発区域の周辺における市街化を促進するおそれがなく,かつ,市街化区域内において行うことが困難又は著しく不適当と認める開発行為」(旧34条10号ロ)だけになりました(法34条14号)。
(2) 開発許可を受けた土地以外の土地における建築制限
市街化調整区域のうち開発許可を受けた開発区域以外の区域内では,都道府県知事の許可を受けなければ,建築物の新築・改築・用途変更,第一種特定工作物の新設をすることはできませんが,その例外として,都道府県知事の許可がなくても建築または新設できる場合があります。
(法43条1項。過去問でも頻出)
この例外的に都道府県知事の許可を要しないとされていたもののうち,以下のものが,開発許可の改正に連動して,改正後は,都道府県知事の許可が必要になりました。
①病院,社会福祉施設,学校など(法29条1項3号の変更による)
②国,都道府県,指定都市,中核市,特例市,または事務処理市町村などが行う建築物の新築,改築,用途変更,第一種特定工作物の新設(改正により旧43条1項1号は削除)。
ただし,当該国の機関または都道府県等と都道府県知事との協議が成立することをもって,許可があったものとみなされます(新43条3項)。
①②とも,ウッカリすると見落としがちなので,注意してください。
4 大規模集客施設の立地規制(建築基準法の改正点)
(1) 大規模集客施設の立地制限
建築基準法の改正では,「床面積が10,000㎡超の店舗,飲食店,劇場,映画館,演芸場,観覧場,遊技場,展示場,勝馬投票券発売所等
(ただし,劇場,映画館などは客席部分の床面積が10,000㎡を超える場合に限る)」
…を大規模集客施設※6として,それらは,近隣商業地域,商業地域および準工業地域においてのみ立地可能※7になりました。
[ 建築基準法48条,別表第二(わ),(ち),(り),(ぬ)]
〈ポイント〉大規模集客施設
店舗(金融機関の窓口,クリーニング店,ガソリンスタンドも該当),飲食店,劇場,映画館,演芸場,観覧場,遊技場(ぱちんこ屋,カラオケボックス,ゲームセンターなどを含む),展示場,勝馬投票券発売所等で,その床面積が10,000㎡を超えるものは,近隣商業地域,商業地域および準工業地域以外では建築できない。
※6 大規模集客施設には,アミューズメント施設やショッピングモールなどの複合施設も当然含まれる。
※7 小規模の集客施設が複数棟建築され,各棟そのものは10,000㎡以下であっても,各棟が利用形態などからみて用途上不可分の関係にあり(駐車場等を共用することにより一体的な利用がなされるなど),合計床面積が10,000㎡を超える場合は,大規模集客施設の立地制限が適用される。
このため,大規模集客施設は,都市計画区域・準都市計画区域とも,「近隣商業地域,商業地域および準工業地域以外の用途地域」や「用途地域の指定のない区域」では,特定行政庁の許可がなければ,原則として,建築することができなくなりました。
特に,上記の建築物のうちで第二種住居地域,準住居地域,工業地域,用途地域の指定のない区域の各区域内では,改正後は10,000㎡以下のときに限り建築できるように変更になったので,注意しなければなりません。
[ 建築基準法48条6項・7項・11項・13項,別表第二(へ)6号・(と)6号・(る)7号・(わ)]
■参考 各用途地域で建築できる建築物
店舗・飲食店 マージャン屋,ぱちんこ屋, カラオケボックス
勝馬投票券発売所など
-----------------------------------------
第二種住居地域 10,000㎡@以下 10,000㎡@以下 10,000㎡@以下
準住居地域 10,000㎡@以下 10,000㎡@以下 10,000㎡@以下
工 業 地 域 10,000㎡@以下 10,000㎡@以下 10,000㎡@以下
工業専用地域 ☆ × 10,000㎡@以下
用途地域の
指定のない区域 10,000㎡@以下 10,000㎡@以下 10,000㎡@以下
-----------------------------------------
☆物品販売店舗,飲食店は建築禁止。
×特定行政庁の許可がなければ建築できない。
〔注意〕ボーリング場・スケート場・水泳場,ホテル・旅館は,大規模集客施設とはされていないので,建築基準法上の用途規制としては従来どおりで変更はない。
(2) 近隣商業地域の用途規制の変更
改正前,
近隣商業地域で建築できるのは,劇場,映画館,演芸場または観覧場のうち客席部分の床面積の合計が200㎡未満のものでしたが,
改正により,
客席部分の床面積の合計が200㎡以上のものも建築できるようになりました。
(建築基準法別表第二(と)5号)
■映画館などの客席部分の床面積合計による違い
客席部分の
床面積の合計 建築できる用途地域
200 ㎡未満 準住居地域,近隣商業地域,商業地域,準工業地域
200 ㎡以上,@上限なし 近隣商業地域,商業地域,準工業地域
5 地区計画――開発整備促進区による緩和
都市計画法12条の5第4項
次に掲げる条件に該当する土地の区域における地区計画については,劇場,店舗,飲食店その他これらに類する用途に供する大規模な建築物(以下「特定大規模建築物」という。)の整備による商業その他の業務の利便の増進を図るため,一体的かつ総合的な市街地の開発整備を実施すべき区域(以下「開発整備促進区」という。)を都市計画に定めることができる。
一 現に土地の利用状況が著しく変化しつつあり,又は著しく変化することが確実であると見込まれる土地の区域であること。
二 特定大規模建築物の整備による商業その他の業務の利便の増進を図るため,適正な配置及び規模の公共施設を整備する必要がある土地の区域であること。
三 当該区域内において特定大規模建築物の整備による商業その他の業務の利便の増進を図ることが,当該都市の機能の増進に貢献することとなる土地の区域であること。
四 第二種住居地域,準住居地域若しくは工業地域が定められている土地の区域又は用途地域が定められていない土地の区域(市街化調整区域を除く。) であること。
地区計画で,新たに開発整備促進区が創設されました(都市計画法12条の5第4項)。
上記で見たように,第二種住居地域,準住居地域,工業地域,非線引き都市計画区域の用途地域の指定のない区域では,大規模集客施設※8の立地は認められませんが,都市計画区域内でそれらの区域が一定の要件を満たしていれば,地区計画として開発整備促進区を都市計画に定めることができ,その地区整備計画の内容に適合するものについては,その区域内で大規模集客施設を立地できるようにしたものです※9。
〈ポイント〉開発整備促進区
「第二種住居地域」「準住居地域」「工業地域」「非線引き都市計画区域で用途地域の指定のない区域」内に定めることができる。
なお,準都市計画区域内では地区計画を定めることはできないので,準都市計画区域内に開発整備促進区が定められることはない。
※8 都市計画法の用語では,「特定大規模建築物」としている。
※9 開発整備促進区の地区整備計画の内容に適合するもので,特定行政庁が交通上,安全上,防火上および衛生上支障がないと認めるものについては,10,000㎡超の大規模集客施設の立地規制は適用されない(建築基準法68条の3第7項・第8項)。
6 都市計画の決定
(1) 広域調整について(施行:平成18年11月30日)
市町村は,都市計画区域や準都市計画区域※10について都市計画を定めるときは,あらかじめ,都道府県知事に協議し,その同意を得なければなりません(法19条3項)。
都道府県知事は,「一の市町村の区域を超える広域の見地からの調整を図る観点」または「都道府県が定め,若しくは定めようとする都市計画との適合を図る観点」から,協議を行いますが(法19条4項),都道府県知事は,市町村との協議を行うに当たり,必要があると認めるときは,関係市町村に対し,資料の提出,意見の開陳,説明その他必要な協力を求めることができるようになりました(法19条5項)。
※10 改正前は,「市町村が準都市計画区域について都市計画を定めるときは都道府県知事の意見を聴かなければならない」(旧19条5項,改正により削除)とされていた。
(2) 都市計画提案制度の提案者の拡大(施行:平成18年8月30日)
都市計画区域または準都市計画区域内の一団の土地(原則として0.5ha以上)について,その土地の所有者,建物の所有を目的とする対抗要件を備えた地上権者・賃借権者(一時使用のため設定されたことが明らかなものを除く)のほかに,都市計画の決定・変更の提案をすることができる団体として,今回の改正で,新たに,「独立行政法人都市再生機構」「地方住宅供給公社」「まちづくりの推進に関し経験と知識を有するものとして国土交通省令で定める団体」が加えられました(法21条の2第2項)。
(平成19年に関連出題)
都市計画の決定・変更を提案できる団体
●まちづくりの推進を図る活動を行うことを目的として設立された特定非営利活動法人
●民法34条の法人その他の営利を目的としない法人
●独立行政法人都市再生機構
●地方住宅供給公社
●まちづくりの推進に関し経験と知識を有するものとして国土交通省令で定める団体
●これらに準ずるものとして地方公共団体の条例で定める団体
◇予想問題
〔問題〕 次の記述について,正しいものには○,誤っているものには×をつけなさい。
1 準都市計画区域では,土地利用の整序を図ることが目的であるから,農地を含む区域に,準都市計画区域が指定されることはない。
2 市街化区域内で医療施設の建築の用に供する目的で行う開発行為は,その規模によっては,あらかじめ開発許可を受けなければならないことがある。
3 市街化調整区域内で公民館の建築の用に供する目的で行う開発行為については,あらかじめ開発許可を受ける必要はない。
4 国・都道府県等が行う開発行為については,一切開発許可を受ける必要はない。
5 市街化調整区域のうち開発許可を受けた開発区域以外の区域内で社会福祉施設の改築をしようとする場合は,都道府県知事の許可を受ける必要はない。
6 床面積が10,000㎡を超えるアミューズメント施設は,準工業地域内では,原則として建築することができない。
7 開発整備促進区についての都市計画は,非線引き都市計画区域で用途地域の指定のない区域に定めることはできない。
8 市街化調整区域内に,地区計画として,開発整備促進区についての都市計画を定めることはできない。
〔解説〕
1 準都市計画区域は,土地利用の整序だけでなく,環境の保全が必要な区域についても都道府県によって指定される。したがって,農地を含む区域にも指定することができる。×
2 医療施設,社会福祉施設,学校についても,区域・規模によって,開発許可が必要になった。市街化区域では,開発規模が原則として1,000㎡を超えていれば,開発許可が必要である。〇
3 公民館,図書館,博物館などの建築目的の開発行為は,区域・規模を問わず,開発許可は不要である。〇
4 国・都道府県等が行う開発行為については,国の機関や都道府県等と都道府県知事との協議が成立することをもって開発許可があったものとみなすが,開発許可が不要であるということではない。×
5 市街化調整区域のうち開発許可を受けた開発区域以外の区域内で,医療施設,社会福祉施設,学校の新築・改築をする場合も,あらかじめ都道府県知事の許可が必要になった。×
6 近隣商業地域,商業地域,準工業地域では,床面積が10,000㎡を超える大規模集客施設を建築することができる。×
7 開発整備促進区は,都市計画区域内の第二種住居地域,準住居地域および工業地域と「非線引き都市計画区域で用途地域の指定のない区域」に定めることができる。×
8 市街化調整区域内に,開発整備促進区についての都市計画を定めることはできない。〇
■■■本掲載記事の無断転載を禁じます■■■


