土地区画整理法 「施行者」 高橋あや
新事件屋宅建マン管
法令上の制限
(住宅新報社講師) 高橋あや
はじめに
土地区画整理法についての最終回です。
今回は,施行者についてです。
事 件
春もそこまで来ています。今日は久々に横山さん宅を上原さんが訪れています。お話は……というと,やはり土地区画整理事業のことのようです。
上原 「このところ区画整理の話ばかりでなんだけど,区画整理の費用とかいって,賦課金というお金を請求されることがあるらしいの」
さくら 「あら」
上原 「最近,区画整理についていろいろ調べているんだけど,地価が下がって区画整理の資金が足りなくなったときに,土地区画整理組合の組合員が何百万円も請求されることがあるらしいのよ。私たちのところの区画整理も,土地区画整理組合が行うの。
でも,そもそもうちは,その組合の設立申請のメンバーではないんだけど,それでも,その賦課金を払わなくてはいけないのかしら」…
さくら 「上原さんの土地は,区画整理をする場所にあって,お父さまの所有なのよね」
上原 「そうなの。でも,父が区画整理をしようと言い出したわけではないのだけれど」
さくら 「土地区画整理組合が設立されると,施行地区内の宅地の所有者は,すべて組合の組合員になってしまうの。
だから,組合を設立すると言い出した人でなくても,万一の時には,賦課金は払わなくてはならないと思うわ」
上原 「そうなの? それじゃ資金面で無理がないか,私たちも区画整理についてよく検討しなければいけないわね」
さくら 「そういうことね」
本試験での出題形式
【設問】
土地区画整理法に関する次の記述は,正しいか誤りか。
【選択肢】
1 土地区画整理組合が成立した場合において,施行地区内の宅地について所有権又は借地権を有する者はすべて組合員になるが,施行地区内の借家人は組合員とはならない。
2 土地区画整理組合に対する債権を有する参加組合員以外の組合員は,賦課金の納付について,相殺をもって組合に対抗することができる。
3 土地区画整理組合が行う土地区画整理事業において,換地処分前に,施行地区内の宅地について所有権を有する組合員から当該所有権を譲り受けた者は,当該組合の総会において賦課金徴収の決議があったときは,賦課金の納付の義務を負う。
解 説
1 施行者
土地区画整理事業を行う者を施行者といいます。施行者になることができるのは,①個人,②土地区画整理組合,③区画整理会社,④地方公共団体,⑤国土交通大臣,⑥独立行政法人都市再生機構,⑦地方住宅供給公社です。
施行者は,換地計画を定め,仮換地を指定し,換地処分の通知を行うなど,土地区画整理事業に関してさまざまな業務を行います。
2 土地区画整理組合
土地区画整理組合(以下「組合」)は,施行地区(土地区画整理事業を行う区域)内の宅地の所有者・借地権者等の団体です。
組合を設立するためには,7人以上の宅地の所有者または借地権者が共同して,定款と事業計画を定めたうえで,都道府県知事の認可を受けなければなりません。
この認可を申請しようとする際には,定款や事業計画について,施行地区内の宅地の所有者や借地権者のそれぞれ3分の2以上の同意を得ておく必要があります。
組合が成立すると,施行地区内の宅地の所有者や借地権者は,すべてその組合の組合員になります。ただし,未登記の借地権は,その内容等を申告しておかないと,存在しないものと扱われてしまいます。
また,独立行政法人都市再生機構,地方住宅供給公社等は,定款で定めれば,参加組合員として,組合の組合員となることができます。
参加組合員は,換地計画の定めにより取得することとなる宅地の価額相当額の負担金や組合の事業経費に充てるための分担金を,組合に納付しなければなりません。
都市再生機構
所有者 借地権者
(登記または
申告が必要) 参加組合員
組合員
なお,組合員の死亡,宅地の売却,借地権の譲渡などがあった場合,それによって宅地の所有者や借地権者になった者は組合員になり,前の宅地の所有者・借地権者が有していた組合に対する権利義務を承継します。
3 賦課金
土地区画整理事業には,工事費用など多額の経費がかかります。その経費には,国などからの補助金,保留地を売却して得られた保留地処分金などが充てられます。
また,組合は,土地区画整理事業の経費に充てるため,賦課金として参加組合員以外の組合員に対して金銭を賦課徴収することができます。
バブルの崩壊以降,地価の下落により保留地の処分がうまくいかず,賦課金徴収を決定する組合が多くなっています。
組合員は,賦課金の納付について,相殺をもって組合に対抗することができません。つまり,組合に対して債権をもっていても,それと賦課金の支払義務とをチャラにはできないのです。
(選択肢1について)
施行地区内の宅地の所有者や借地権者はすべて組合の組合員になりますが,借家人は組合員にはなりません。本肢は正しい記述です。
(選択肢2について)
組合員は,賦課金の納付について,相殺をもって組合に対抗することはできません。本肢は誤った記述です。
(選択肢3について)
組合員から宅地の所有権を譲り受けた者は,その組合員が組合に対して有していた権利義務を承継するので,賦課金の納付の義務も負います。本肢は正しい記述です。
事件の結論
さくらさんの言うとおり,組合施行の土地区画整理事業の施行地区内の宅地の所有者は,すべて,組合の組合員となります。
したがって,上原さんのお父さんは,組合の組合員であり,賦課金徴収の決定があった場合には,賦課金を支払う必要があります。


