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国家試験展望 「マンション管理士」 小川多聞

平成20年度 国家試験を展望する(下)

マンション管理士
管理業務主任者
(住宅新報社講師) 小川多聞

1)19年度試験の分析

 19年11月25日,マンション管理士試験が行われた。
 形式は,4肢択一50問2時間の試験時間である。

(1) 出題分野
 内容面も例年どおりの出題範囲であった。

 具体的に,おおよその出題範囲を分類してみると,次のようになる。
 
出題分野 出題問 合計
1 区分所有法 第1問~第12問 12問
2 民法 第13問~第17問 5
3 不動産登記法 第18問 1
4 マンション建替え円滑化法 第19問 1
5 建築基準法 第20問~第21問 2
6 都市計画法 第22問 1
7 警備業法 第23問 1
8 消防法 第24問 1
9 マンション標準管理規約 第25問~第33問 9
10 会計 第34問~第35問 2
11 維持・管理 第36問~第40問 5
12 建築設備等 第41問~第45問 5
13 マンション管理適正化法 第46問~第50問 5


(2) 難易度
 では,主要科目を中心に,その難易度を分析してみよう。

 区分所有法
 この分野は,「……区分所有法及び民法の規定によれば,正しいものはどれか」といった問い方により,区分所有法と他の法律の混合問題が多い。条文の知識により解ける問題もあるが,細かな条文が問われるので(問9等),それほどやさしくない。

 傾向としては,具体的な事例問題を問うことが多いので(問3等),単なる条文の丸暗記では対応できない。また,判例をもとに出題されることも多く(問6等),より掘り下げた学習が必要である。
 要するに,難易度としては,かなりの難問ということができよう。出題数が12問と最も多いので,腰をすえた学習が必要となる。


 民法
 民法の出題数は5問であるが,他の分野に分類した問題にも,民法との混合問題が多いので,実質的には10問程度の出題があると考えたほうがよいであろう。

 民法に分類した問13から問17の問題を見ると,やさしい問題は1つもない。「よくこれほど難しい問題を考えた」といえるほど難しい問題である。


 問13は,管理費の滞納の問題であるが,民法の「不在者の財産の管理および失踪の宣告」の分野から出題されている。定評あるマンション管理士試験用教科書を調べてみても,どの教科書にも1行も出てこない。


 問14も問13と同じような問題であり,条文や判例の知識を総動員して解かなければならない。いわば,法律的センスが問われているといってもいいであろう。


 問15は,判例の知識と「失火ノ責任ニ関スル法律」を問うものである。「失火ノ責任ニ関スル法律」は,損害賠償額が膨大になるのを防止するため,「重過失」がない場合は責任を負わなくてよいとしているが,その知識がない人にはまったく解答しようがない。

 このような問題は,失火ノ責任ニ関スル法律の唯一の条文,すなわち「民法709条(不法行為)の規定は失火の場合にはこれを適用せず。但し失火者に重大なる過失ありたるときはこの限りにあらず」との文言を問題文の下に掲載すべきであろう。


 問16は,不法行為であるが,裁判上の立証要件を聞いており,正答は神頼みである。


 問17は,滞納管理費の相続に関する問題であるが,やはり判例の知識を要する。
 民法の問題について,やや細かい分析をしてみたが,これは,民法の問題が単に「難しい」だけではなく,対策の立てようがあることをいいたかったのである。対策の立てようがない問題は,問16のみである。

 たとえば,問17の滞納管理費の相続なども,「相続財産中の可分債務(金銭債務など)は,各相続人がその相続分に応じて,分割されたものを相続する」という判例を知っていれば,それほど難しくはないであろう。

 問15なども,先ほどの「失火ノ責任ニ関スル法律」が,不法行為の成立要件として「重過失」を必要としていること,および債務不履行の要件としての「故意または過失」は,軽過失でよいことを知っていれば,解ける問題である。

 そして,これらの判例や条文については,ちょうどマンション管理士として知るべき知識の中にあるのである。もちろん「知るべき知識の中」といっても一番外側であることには違いはないが……。

 たしかに,民法は,難しくて得点しにくい科目に違いないが,実質上10問出題されることを考えれば,しっかりと学習しないわけにはいかない。


マンション標準管理規約
 最もやさしい分野である。マンション標準管理規約から9問の出題は,今までで一番多い出題である。昨年までは「マンション標準管理委託契約書」からの出題があったのが,今年はマンション標準管理委託契約書からの出題は1問もなくなった。

 マンション標準管理規約からの出題は,マンション標準管理規約および同コメントを余すことなく学習すればすべて得点できる。それほど難しいことではないので,この分野は満点を取る必要がある。


マンションの維持・管理
 実務的な問題が多く,やや難しかった。出題は5問であるが,出題分野が固定されているわけではないので,対策はとりにくい。このような問題については,過去問を中心に学習することが重要である。あまり手を広げすぎないことである。


建築設備等
 例年並の難易度である。この分野も,どこから出題されるかが分からない分野である。「維持・管理」と同じく過去問中心の学習が重要である。過去問中心の学習で,問43,問44,問45は十分対応できる。


マンション管理適正化法
 すべて条文の問題であり,やさしい問題である。やはり満点が要求されよう。


その他の問題
 難易度としては,例年どおりといえよう。

 いろいろな科目があるが,各科目とも1問もしくは2問の出題ということで,対策には苦労するところである。このような分野に手をかける余裕はないであろうから,過去問中心の学習ということである。


 以上,全体の傾向としては,ほぼ例年どおりであり,この傾向は今後も続くものと見られる。


220年度の展望と対策

(1) 20年度の展望
 13年度に始まったマンション管理士試験は,平成19年度で7回目である。
 当初より,少しずつ難易度を増しているように見受けられるが,ほぼ出題傾向は固まったと考えられる。今後も多少のブレはあるであろうが,大きな変化はないものとみてよい。ということは,20年度もかなり手ごわい問題が出題されると考えるべきである。

 なお,出題分野に関しても,従来の傾向を踏襲すると考える。たとえば,マンション標準管理委託契約書は19年度の出題はなかったが,20年度は出題される可能性が高い。


(2) 今後の学習法
「メリハリを利かせた学習」これが一番よい学習法である。これは,学習すれば点の取れる分野を集中的に学習し,学習しても点が取れるかどうか分からない分野は軽めの学習で済ますということである。具体的に考えよう。


区分所有法・民法
 かなり難易度の高い問題が出るので,各自のテキストでは足りない。過去問集の解説等で,テキストを補充しておこう。
 なぜなら,テキストは,よく出るところは丁寧に記述するが,あまり出そうもないところの記述は省いてしまう。これは,テキストの性格上どうしてもそうなるので,テキストが悪いわけではない。その省かれた部分を,過去問集の解説等で補わなければならない。
 これくらいの努力をしなければ太刀打ちできない。


マンション標準管理規約
 テキストでしっかり学習すれば大丈夫。

 なお,マンション標準管理規約およびコメントの掲載されている六法(法律の条文集)の購入も,お勧めする。
 マンション管理士試験に関しては,今まではマンション管理士試験六法等の使用は勧めなかったが,これほど難しくなると六法があったほうがよい。
 たとえば,『マンション管理士(管理業務主任者)受験六法』(東京法令)などは手頃な六法である。


マンション管理適正化法
 この科目は,それほど難しくはないので,テキストで十分対応できよう。ただし,テキストを十分咀嚼して読んでおくことが必要条件である。
 出題されている分野は,限られているので,その部分に関しては,しつこく学習するということである。


その他の科目
 以上は,得意科目にするべき分野である。出題数も多いし,学習すればするほど点数が上がる分野である。

 その他の分野に関しては,対策が立てにくい。
 たとえば,建築基準法は,2問出題される。
 しかし,法律自体の分量は膨大であり,とても2問のために学習している余裕はない。
 したがって,過去問を中心に学習するしかないと考える。

 他の分野も同じことがいえる。したがって,「その他の科目」に関しては,過去問をしっかりと学習し,あまり手を広げないことこそ肝要と考える。

 ここで,推奨するテキストおよび問題集を掲げておく。

 ●テキスト
 『楽学マンション管理士』
 『マンション管理の知識』(以上,住宅新報社),

 『新マンション管理士テキスト』(東京法令),
 『ひとりで学べるマンション管理士・管理業務主任者合格テキスト』(小川多聞・実務教育出版)。

 ●問題集
 『マンション管理士再現問題集』
 『マンション管理士予想問題集』
 『マンション管理士直前模試』(以上,住宅新報社),

 『新マンション管理士択一パーフェクトチェック』(東京法令),
 『ひとりで学べるマンション管理士・管理業務主任者過去問テーマ別問題集』(小川多聞・実務教育出版社)。


 管理業務主任者119年度試験の分析
 19年12月2日,管理業務主任者試験が行われた。
 形式は,4肢択一50問2時間の試験時間である。

1) 出題分野
 管理業務主任者試験の出題分野に関しては,さまざまな分類が可能なので,ここでは,国土交通省総合政策局不動産業課発表の「想定される管理業務主任者試験の内容」による出題数をみてみよう。

(1)
 ・出題分野
  管理事務の委託契約に関すること

 ・その内容
  民法(「契約」および契約の特別な類型としての「委託契約」を締結する観点から必要なもの),

 ・出題数…マンション標準管理委託契約書等 9問

(2)
 ・出題分野
  管理組合の会計の収入および支出の調定並びに出納に関すること

 ・その内容…簿記,財務諸表論等
 ・出題数…7問

(3)
 ・出題分野
  建物および附属設備の維持または修繕に関する企画または実施の調整に関すること

 ・その内容
  建築物の構造および概要,建築物に使用されている主な材料の概要,建築物の部位の名称等,建築設備の概要,建築物の維持保全に関する知識およびその関係法令(建築基準法,水道法等),建築物の劣化,修繕工事の内容およびその実施の手続に関する事項等

 ・出題数…12問

(4)
 ・出題分野
  マンションの管理の適正化の推進に関する法律に関すること

 ・その内容
  マンションの管理の適正化の推進に関する法律,マンション管理適正化指針等

 ・出題数…5問

(5)
 ・出題分野
  1から4に掲げるもののほか,管理事務の実施に関すること

 ・その内容
  建物の区分所有等に関する法律(管理規約,集会に関すること等管理事務の実施を行うにつき必要なもの)等

 ・出題数…17問


 主な科目の難易度を分析してみよう。

2) 難易度

 民法
 民法の実質的な出題数は,10問程度になる。
 上記一覧表の分類は,問1から問6までを民法として計算しているが,実質上は,問10,問11,問42等も民法に分類することができるからである。

 民法をこのように分類した場合,1つの法律としては,民法の出題数が一番多いことになる。
 民法は,マンション管理士試験でもそうであるが,管理業務主任者試験でも重要科目ということである。

 しかし,難易度ではマンション管理士試験とは若干異なる。
 マンション管理士試験では民法は最も難解な科目の1つ(筆頭)であった。

 しかし,管理業務主任者試験の民法の難易度は,それほどでもない。ほとんど基礎知識と条文の理解で足りる。

 しかし,「基礎知識」に関しては少し注意が必要である。
 たとえば,19年度の問1,問2である。

 いずれも契約に関する基礎知識の問題なのであるが,契約に関する正確な知識を要求している。通常の受験用テキストは,どうしても受験技術と結論の暗記のための記述が多い。
 個々の結論だけを覚えるだけの学習では,本年度の問1や問2は,難しい問題と感じてしまうであろう。

 これに対応するためには,普段の学習の中で「何でだろう?」「どうしてだろう?」と考えながら学習する必要がある。
 それによって,法律の横断的理解が可能になり,応用力が身につくからである。


 マンション標準管理規約
 マンション標準管理規約からの出題は6問程度である。

 大方マンション標準管理規約およびコメントからの出題であり,やさしい問題であった。


 マンション管理適正化法
 マンション管理適正化法(マンション管理適正化指針1問を含む)からの出題は毎年5問と決まっている。
 19年度の問題は,従来の問題よりも難しかった。
 従来は,マンション管理適正化法およびマンション管理適正化指針からの出題で,テキストの読み込みで十分対応できた。

 しかし,問50は,「国土交通省の通達」からの出題であり,その場で考えるしかない。
 また,問48も,国土交通省令等からの出題があり,難問であった。


 区分所有法
 区分所有法からの出題も5問である。ただし,民法と同じく他の科目との混合問題を含めると8問程度になる。

 難易度的には従来と同じく普通の問題が多かった。
 ただし,判例の理解が必要になる問題(たとえば問39)が増えていることには注意が必要であろう。

 出題者としては,試験後に文句のつけられそうな出題は避けたいのが本音である。
 その点,判例は文言が確定しており,文句のつけようがない。
 特に最高裁判所の判例などは,今後の出題が十分予想されるところである。


 建築基準法
 建築基準法からの出題は,8問である。上記一覧表に「建築設備」と分類されているもののなかに,実は建築基準法,建築基準法施行令,建築基準法施行規則等からの出題があるので,実質的には8問くらいとみていいであろう。

 19年度の難易度は例年どおり,かなりの難問である。
 特に実務的な問題である問21,問22などは,とても太刀打ちできなかった受験者が多かったであろう。

 このような実務的な問題は毎年出題されるのであり,このような問題に一喜一憂する必要はない。
 試験問題は50問あるが,誰にでもできる問題や誰にも分からない問題は点差がつかないからである。

 合格のための鉄則は,誰にでもできる基本問題でミスをしないこと,合格と不合格の分水嶺の問題を人よりも1問多く取ることである。


 マンション標準管理委託契約書
 3問の出題である。難易度も従来どおりである。
 ただし,このところ「別表第一」からの出題が増加しているので,本文に劣らず別表は要注意である。


 その他の問題
 その他の問題の難易度は,従来どおりである。

 複数の出題としては,仕訳(2問)がある。

 仕訳の問題は毎年2問出題されており,それほど難しいわけではないので,一応の理解はしておこう。

 また,ほぼ毎年出題される
 ・「住宅の品質確保の促進等に関する法律」
 ・「マンションの建替えの円滑化等に関する法律」
 ・「宅地建物取引業法」
 ・「アフターサービス」
 …に関しても,過去問を中心とした理解が必要である。


220年度の展望と対策
(1) 20年度の展望
 19年度の問題は,出題分野・難易度ともにほぼ例年どおりであるが,ほんの気持ちだけ難しくなった感じがする。
 このような傾向は,大きく変わることはないであろう。今後も少しずつ難化しながら,緩やかに変化していくであろう。


(2) 今後の学習法
 民法
 テキストを精読し,過去問をしっかり解いておくことで十分である。

 今後もマンション管理士ほどの難問は出題されないと思われる。
 ただし,マンション管理士における民法の過去問を解くことは,実力アップのためにはよいことである。

 なお,マンション管理士試験と管理業務主任者試験は共通するところが多いので,管理業務主任者試験の受験者は,ぜひマンション管理士試験の問題を解いておくべきであろう。
 もちろん,逆のこともいえるので,マンション管理士試験の受験者にも,管理業務主任者試験の問題を解くことを勧める。


 マンション標準管理規約
 民法と同じくテキストの精読と過去問でよいであろう。出題数も多いので,完璧な学習が必要である。

 この際に,マンション標準管理規約の本文とコメントを関連付けて読んでおくことを勧める。
 各自のテキストに掲載されていれば,それを読んでおけばよいが,テキストにない場合は,マンション管理士試験と同じように,六法(条文集)を購入して読んでおくことを勧める。


 マンション管理適正化法・区分所有法
 テキストおよび過去問集で十分である。

 マンション管理適正化法に関しては政令や通達といった細かい部分が問われているが,あまり神経質になる必要はない。
 20年度のテキストには改訂が行われるであろうし,そうでなければ,問題集の解説部分をテキストに補充しておけばよい。


 建築基準法
 建築基準法に関しては,「建築基準法施行令」「建築基準法施行規則」「通達」から出題される可能性が高い。

 一般的には,このような細かい部分についてはテキストに記載されていないことが多い。
 (なお,後掲の『管理業務主任者の知識』は細かい部分の記載が充実している)

 ただし,テキストを改訂する場合に不足分を補充することが常なので,テキストはなるべく新しいものを選ぶ必要がある。
 その新テキストに記載されていない場合は,例によって,過去問集の解説からテキストに転記して補充することである。


 マンション標準管理委託契約書・その他の問題
「マンション標準管理委託契約書」に関しては,毎年3問出題されているので,マンション標準管理委託契約書およびコメントをしっかり読んでおけばよいであろう。

 その他の問題がかなり厄介である。毎年出題される分野については,テキストと過去問集で理解しておくべきであろう。
 2~3年に一度といった問題(「借地借家法」等)に関しては,過去問を主体に学習しておけば十分である。

 最後にテキストと問題集を掲げる。

 ●テキスト
 ・ 『楽学管理業務主任者』
 ・『管理業務主任者の知識』(以上,住宅新報社),

 ・『新管理業務主任者テキスト』(東京法令),
 ・『ひとりで学べるマンション管理士・管理業務主任者合格テキスト』(小川多聞・実務教育出版社)


 ●問題集
 ・ 『管理業務主任者再現問題集』
 ・『管理業務主任者予想問題集』
 ・『管理業務主任者直前模試』(以上,住宅新報社),

 ・『新管理業務主任者択一パーフェクトチェック』(東京法令),
 ・『ひとりで学べるマンション管理士・管理業務主任者過去問テーマ別問題集』(小川多聞・実務教育出版社)