国家試験改正法講座3 「宅建」 十影 響
宅地建物取引主任者:建築基準法・宅地造成等規制法
(住宅新報社講師) 十影 響
1 建築確認
(施行:平成18年11月30日)
準都市計画区域の指定権者が,市町村から都道府県に変更になったことに伴い(都市計画法5条の2),準都市計画区域内で一般建築物の建築確認を要しない区域※1の指定権者が市町村長から都道府県知事に変わりました。
●一般建築物の建築確認を要しない区域
●都市計画区域内または準都市計画区域内(いずれも都道府県知事が都道府県都市計画審議会の意見を聴いて区域を指定する)
●準景観地区内(市町村長が指定する)
※1 その区域の地域事情などにより,本来ならば一般建築物でも建築確認を必要とする区域内に,建築確認を要しない区域を定めることができる(建築基準法6条1項4号)。
2 構造計算適合性判定関連
(施行:平成19年6月20日)
この改正※2は,平成17年に発覚した構造計算書偽装問題(耐震強度偽装問題)※3の再発防止のために,改正されたものです。
建築基準法の主な改正点としては,以下のものがあります。
①建築確認検査の厳格化
②高度な構造計算を要する一定規模以上の建築物について,都道府県知事による構造計算適合性判定が義務付けられた。
③3階建以上の共同住宅で中間検査が義務付けられた。
④指定確認検査機関に対する指導監督の強化
改正範囲は広範であることから,上記のうち,宅建試験に出題が予想されるものについてまとめます。
※2「建築物の安全性の確保を図るための建築基準法等の改正の一部を改正する法律」(平成18年6月21日公布,法律第92号)
※3 建築確認申請時に提出する構造計算書について,その偽装が発覚した事件。構造計算書が偽装されたマンションでは,避難勧告が出されたり,建替えの問題が生じるなど,社会的な大事件になった。
(1) 確認済証の交付日
100㎡超の特殊建築物,木造大規模建築物,非木造の大規模建築物についての建築確認の申請があった場合に確認済証が交付される日が,受理した日から35日以内(改正前は,21日以内)に変更されました(建築基準法〈以下,この2において「法」という〉6条4項)。
構造計算適合性判定の導入により,建築確認に要する時間が増大したためです。
●受理日から確認済証が交付されるまでの日数
改正前 改正後
一般建築物 7日以内 7日以内
100㎡超の特殊建築物,
木造の大規模建築物,
非木造の大規模建築物 21日以内 35日以内※4
※4 ただし,建築主事は,構造計算適合性を審査する場合その他国土交通省令で定める場合に,この期間内に確認済証を交付することができない合理的な理由があるときは,35日の範囲内において,期間を延長することができる。
(確認済証の交付までは最大で70日間となるが,書類の訂正などの期間は算入されないため,実際はもっとかかることがある)
この場合,建築主事は,その旨およびその延長する期間,期間を延長する理由を記載した通知書を期間内に当該申請者に交付しなければならない
(法6条12項)。
(2) 構造計算適合性判定
改正により,建築主事(指定確認検査機関)は,一定の建築物※5,※6の計画が,構造耐力の基準に適合するかどうかを審査するときは,都道府県知事の構造計算適合性判定を求めなければならない,とされました(建築基準法6条5項,6条の2第3項)。
構造計算書の巧妙な改ざんや偽装を見抜くには,構造計算過程の詳細な分析や高度な再計算が必要となりますが,建築主事や指定確認検査機関では,人員※7や技術力などに限界があり,実際,構造計算書偽装問題では構造計算書の偽装や改ざんを見抜けなかったことから導入されたものです。※8
※5 仮設建築物の建築や工作物の建設については,構造計算適合性判定は必要ではない。
※6 法20条や告示で構造計算が必要なものは詳細に定められているが,木造の大規模建築物(高さ13m超,軒高9m超,階数3以上,または延べ面積500㎡以上),非木造の大規模建築物(階数2以上または延べ面積が200㎡以上)は構造計算が必要である。
※7 一級建築士は27万人いるが,その中で,構造設計のできる人は1万人程度(一級建築士の3.7%)といわれている(平成17年当時)。
※8 欧米では,構造計算を複数の専門家どうしでチェックすることを,ピアチェックと呼ばれている。
〈構造計算適合性判定〉
建築主事(指定確認検査機関)
一定の建築物について構造計算適合性判定を知事に求めなければならない。
都道府県知事 構造計算適合性判定を行う。
都道府県知事は,構造計算適合性判定を求められた日から14日以内※9にその結果を記載した通知書を建築主事(指定確認検査機関)に交付しなければならない(法6条8項,6条の2第5項)。
※9 都道府県知事は,この期間内に適合性判定結果の通知書を交付できない合理的な理由があるときは,35日の範囲内で,その期間を延長することができる(法6条9項)。
なお,構造計算適合性判定については,以下の3点を知っておく必要があります。
●構造計算適合性判定
①都道府県知事は,構造計算適合性判定を行うときに必要があると認めるときは,構造方法に係る構造計算に関して専門的な識見を有する者の意見を聴く(法6条7項,6条の2第4項)。
②都道府県知事は,指定構造計算適合性判定機関に,構造計算適合性判定の全部または一部を行わせることができる。指定構造計算適合性判定機関を指定すると,都道府県知事は,原則として,構造計算適合性判定を行わない(法18条の2第1項・第2項)。※11
③都道府県知事は,その都道府県に置かれた建築主事から構造計算適合性判定を求められた場合は,その建築主事を構造計算適合性判定に関する事務に従事させることはできない(法6条6項)。
※11 指定構造計算適合性判定機関が休止したり,停止を命ぜられたときや,天災その他の事由で構造計算適合性判定の全部または一部を実施するのが困難になったときなどは,都道府県知事が,構造計算適合性判定を行う(法77条の35の15)。
(3) 中間検査
改正前,中間検査は,「特定行政庁が,その地方の建築物の建築の動向または工事に関する状況その他の事情を勘案して,指定する工程」に限られていましたが,「階数が3以上である共同住宅の床およびはりに鉄筋を配置する工事の工程のうち政令で定める工程」が加えられました(法7条の3第1項)。共同住宅の建築の場合,人命にもかかわるので,施工状況についても問題がないか監視できるようにしたのです。
(4) 指定確認検査機関の指定,書類の閲覧,立入検査
改正前は,国土交通省または都道府県知事が指定確認検査機関※12を指定するときに,特定行政庁の意向とは関係なく,欠格条項に該当せず,指定の基準(業務を遂行する能力)に適合していれば,指定されていましたが,改正により,国土交通省または都道府県知事が指定確認検査機関を指定する際には,あらかじめ,指定確認検査機関の業務区域を管轄する特定行政庁(特定行政庁が都道府県知事の場合は除く)の意見を聴かなければならないとされました(法77条の18第3項)。
指定の審査をするに当たって,特定行政庁の意向を反映させるようにしたものです。
構造計算書偽装問題では,指定確認検査機関が耐震偽装を見抜けなかっただけではなく,指定確認検査機関に対する監督が不十分であることも浮き彫りにされました。そのため,今回の改正では指定確認検査機関の責任を明確化し,また特定行政庁による監督を厳格化しています。
たとえば,書類の閲覧(改正前は,所在地や業務区分のみが公示されているだけだった)や立入検査(改正前は,国土交通大臣や都道府県知事には立入検査をする権限があったが,特定行政庁は,指定確認検査機関が建築確認を行って規定に適合しない場合に建築確認の効力を失効させるほか,報告を求め,必要な措置を指示することができるだけだった)の規定が新たに定められました。
□書類の閲覧(法77条の29の2)
指定確認検査機関は,確認検査の業務を行う事務所に一定の書類※13を備え置き,建築確認を受けようとする者(建築主)その他の関係者(購入者など)の求めに応じ,閲覧させなければならない。
□立入検査(法77条の31第2項)
特定行政庁は,建築物の確認検査の適正な実施を確保するため必要があると認めるときは,その職員に,指定確認検査機関の事務所に立ち入り,確認検査の業務の状況,帳簿,書類その他の物件を検査させ,または関係者に質問させることができる。
※12 指定確認検査機関になろうとする者は,業務区域が2以上の都道府県にわたるときは国土交通大臣,一の都道府県内のときは都道府県知事に指定の申請をしなければならない。
※13 ①業務の実績を記載した書類,②確認検査員の氏名および略歴を記載した書類,③確認検査の業務に関し,生じた損害を賠償するために必要な金額を担保するための保険契約の締結その他の措置を講じている場合は,その内容を記載した書類,④その他指定確認検査機関の業務および財務に関する書類で国土交通省令で定めるもの
3 宅地造成等規制法
(施行:平成18年9月30日)
改正により,宅地造成等規制法(以下,この3において「法」という)は,宅地造成に伴う崖崩れまたは土砂の流出による災害の防止のため必要な規制を行うための法律になり,宅地造成工事規制区域と造成宅地防災区域の二本立ての規制になりました。
(1) 宅地造成工事規制区域の指定要件(法3条1項)
都道府県知事(指定都市,中核市,特例市ではそれぞれの長。以下同じ)が,関係市町村長(特別区の長を含む)の意見を聴いて,宅地造成工事規制区域を指定する要件が次のように変更になっています。
〈改正前〉
災害が生ずるおそれが著しい市街地または市街地となろうとする土地の区域に指定することができる。
〈改正後〉~波線部が改正点~
災害が生ずるおそれが大きい市街地または市街地となろうとする土地の区域であって,宅地造成に関する工事について規制を行う必要があるものについて,指定することができる。
(2) 開発許可を受けている場合(法8条1項)
改正前は,宅地造成規制工事区域内で造成工事をする場合に,都市計画法の開発許可を要するときは,開発許可と宅地造成工事の許可の双方が必要でした。
しかし,都市計画の開発許可基準に〈開発区域内の土地の全部または一部が宅地造成工事規制区域内の土地であるときは,当該土地における開発行為に関する工事の計画が,宅地造成等規制法の技術的基準に適合していること〉が加えられたため,宅地造成工事規制区域内で,開発許可を受けて行われ,開発許可の内容に適合した宅地造成工事(建築物・特定工作物の建築・建設目的の場合)については,都道府県知事等の許可の規定は適用が除外され,許可を受ける必要がなくなりました。
・都市計画法での開発行為
主として建築物の建築または特定工作物の建設の用に供する目的で行う土地の区画形質の変更
・宅地造成等規制法での宅地造成
宅地以外の土地を宅地にするため,または宅地において行う土地の形質の変更で政令で定めるもの
(宅地を宅地以外の土地にするために行うものを除く)
(3) 変更の許可(法12条)
改正により,宅地造成工事規制区域内の宅地造成工事の許可を受けた後に,工事の計画の変更をしようとするときは,軽微な変更※14を除いて,知事等の許可を受けることになりました。
・工事の計画の変更 あらかじめ,都道府県知事の許可を受けなければならない。
・軽微な変更 遅滞なく,その旨を都道府県知事に届け出なければならない。
※14 軽微な変更とは,〈造成主・設計者・工事施行者の変更,工事の着手予定年月日・工事の完了予定年月日の変更〉をいう(施行規則26条)。
(4) 技術的基準の変更
宅地造成工事規制区域内の宅地造成工事は,政令で定める技術的基準に従い,擁壁,排水施設その他の政令で定める施設(「擁壁等」※15)の設置その他宅地造成に伴う災害を防止するため必要な措置が講ぜられたものでなければなりません。
技術的基準では,盛土・切土をする場合に,地表水だけでなく,地下水により崖崩れや土砂の流出が生じる恐れがあるときは,その地下水を排除するための排水施設を設置しなければならないものとされました。
※15 擁壁,排水施設,地滑り抑止くい・グラウンドアンカーその他の土留(施行令4条)。
(5) 造成宅地防災区域(平成19年に出題)
平成16年の新潟県中越地震で,造成宅地(宅地造成工事が施行された宅地)が崩壊して,住宅が押し流されるなど多くの地盤災害が生じました。
改正前の宅地造成等規制法は,宅地造成工事規制区域内の規制のみであったため,宅地造成工事規制区域以外でも,地震時の地盤災害の防止や造成宅地等の安全性の確保を図る必要があるとし、造成宅地防災区域制度※16が創設されました。
※16 平成19年12月21日に,新潟県中越沖地震で被害の大きかった新潟県柏崎市の山本団地地区の区域約2.4haに,全国で初めて造成宅地防災区域が指定された。
①造成宅地防災区域の指定要件(法20条1項)
都道府県知事は,宅地造成に伴う災害で相当数の居住者その他の者に危害を生ずるものの発生のおそれが大きい一団の造成宅地(附帯する道路その他の土地を含み,宅地造成工事規制区域内の土地を除く)の区域であって政令で定める基準に該当するものを,造成宅地防災区域として指定※17することができます。
※17 都道府県知事は,造成宅地防災区域の全部または一部について,指定の事由がなくなったと認めるときは,指定を解除する(法20条2項)。
□造成宅地防災区域の指定の基準(施行令19条)
法第20条第1項の政令で定める基準は,次の各号のいずれかに該当する一団の造成宅地の区域であることとする。
(1) 次のいずれかに該当する一団の造成宅地の区域(盛土をした土地の区域に限る。)であって,安定計算によって,地震力及びその盛土の自重による当該盛土の滑り出す力がその滑り面に対する最大摩擦抵抗力その他の抵抗力を上回ることが確かめられたもの
イ 盛土をした土地の面積が3,000㎡以上であり,かつ,盛土をしたことにより,当該盛土をした土地の地下水位が盛土をする前の地盤面の高さを超え,盛土の内部に浸入しているもの
ロ 盛土をする前の地盤面が水平面に対し20度以上の角度をなし,かつ,盛土の高さが5m以上であるもの
(2) 切土又は盛土をした後の地盤の滑動,宅地造成に関する工事により設置された擁壁の沈下,切土又は盛土をした土地の部分に生じた崖の崩落その他これらに類する事象が生じている一団の造成宅地の区域
②勧告,改善命令
造成宅地防災区域内の造成宅地の所有者,管理者,占有者(宅地所有者等)は,災害が生じないよう,その造成宅地について擁壁等の設置,改造その他必要な措置を講ずるように努めなければなりません。都道府県知事は,造成宅地防災区域内の宅地について,勧告(法21条)や改善命令(法22条)をすることができます。※18
※18 防災区域に指定されると,宅地所有者等は,その造成宅地について滑動崩落防止工事に必要な費用の全部または一部を負担する場合があるので,宅建業者は,宅建業法の重要事項(宅地・建物の売買・交換〈その媒介・代理〉,宅地建物の貸借の媒介・代理)として説明しなければならない。
●勧告
都道府県知事は,造成宅地の所有者,管理者,占有者に対し,擁壁等の設置または改造その他災害の防止のため必要な措置をとることを勧告することができる。
●改善命令
都道府県知事は,造成宅地または擁壁等の所有者,管理者,占有者に対して,災害の防止のため必要な擁壁等が設置されておらず,または極めて不完全であるために,放置するときは,災害の発生のおそれが大きいと認められるものがある場合は,災害の防止のため必要であり,かつ,土地の利用状況その他の状況からみて相当であると認められる限度で,相当の猶予期限を付けて,擁壁等の設置・改造,地形・盛土の改良工事を命ずることができる。
予想問題
〔問題〕 次の記述について,正しいものには○,誤っているものには×をつけなさい。
1 建築主事は,100㎡超の特殊建築物について建築確認の申請があった場合は,受理した日から21日以内に,確認済証を交付しなければならない。
2 建築主事は,構造計算を必要としない一般建築物について申請があったときは受理した日から7日以内に確認済証を交付しなければならないが,この期間内に確認済証を交付することができない合理的な理由があるときは,35日の範囲内において,期間を延長することができる。
3 都道府県知事は,建築主事に構造計算適合性判定を求められた日から35日以内にその結果を記載した通知書を建築主事に交付しなければならない。
4 都道府県知事は,建築主事から構造計算適合性判定を求められた場合に,その建築主事を構造計算適合性判定に関する事務に従事させることができる。
5 建築主は,階数が3以上である共同住宅の床及びはりに鉄筋を配置する工事の工程のうち政令で定める工程を含む場合に,当該特定工程に係る工事を終えたときは,その都度,建築主事の検査を申請しなければならず,当該特定工程に係る中間検査合格証の交付を受けた後でなければ,当該特定工程後の工程を施工してはならない。
6 宅地造成工事規制区域内で,都市計画法の開発許可を受けて行われ,開発許可の内容に適合した宅地造成工事については,都道府県知事の許可を受ける必要はない。
7 宅地造成工事規制区域内において,宅地造成工事の許可を受けた後に,工事の計画の変更をしたときは,都道府県知事に,遅滞なく,その旨を届け出なければならない。
〔解答・解説〕
1 100㎡超の特殊建築物,木造大規模建築物,非木造の大規模建築物について建築確認の申請があった場合に確認済証が交付されるのは,受理した日から35日以内である。
(×)
2 確認済証の交付日を延長できるのは,構造計算適合性を審査する場合その他国土交通省令で定める場合であり,受理した日から7日以内で確認済証を交付しなければならないものについて期間延長は認められていない。
(×)
3 構造計算適合性判定を求められた日から14日以内である。なお,判定結果をこの期間内に建築主事・指定確認検査機関に通知できない合理的な理由がある場合には,35日の範囲内で延長することができる。
(×)
4 知事は,建築主事を構造計算適合性判定に関する事務に従事させることはできない。
(×)
5 中間検査の対象として,階数3以上の共同住宅の床およびはりに鉄筋を配置する工事の工程のうち,政令で定める工程が改正により追加された。
(〇)
6 開発許可基準の1つに,開発行為に関する工事の計画が,宅地造成等規制法の技術的基準に適合していること,という規定があるので,本肢の場合,重ねて宅地造成工事の許可を受ける必要はない。
(〇)
7 軽微な変更の場合は,変更後に遅滞なく都道府県知事にその旨を届け出ればよいが,軽微な変更でない変更をしようとする場合は,あらかじめ,都道府県知事の許可を得なければならない。
(×)



